マイクロ法人がよく使われる最大の理由が「社会保険料の最適化」です。個人事業主のときに重かった社会保険の負担を、法人化と低めの役員報酬で抑えられる場合があります。この記事では、その仕組みと、いくら下がるのか、最適な役員報酬の決め方、注意点を整理します。
マイクロ法人とは
マイクロ法人とは、主に社会保険の最適化や事業の分散を目的に、ひとりまたは少人数で小規模に設立する法人の通称です。法律上の正式な区分ではなく、株式会社や合同会社を小さく使うイメージです。個人事業主が事業の一部を法人化したり、会社員が副業を法人化したりするケースもこれに含まれます。
なぜ社会保険料が下がるのか
ポイントは、加入する社会保険の種類と、保険料の決まり方の違いです。
個人事業主:国民健康保険+国民年金(所得に連動)
個人事業主は国民健康保険と国民年金に加入します。国民健康保険は前年の所得に応じて保険料が上がるのが特徴で、東京特別区の令和8年度は所得割の合計が約10〜13%(40〜64歳は介護分込み)、年間の上限は113万円です。国民年金は令和8年度で月17,920円(年間約21.5万円)の定額です。つまり所得が高いほど、社会保険の負担も重くなります。
マイクロ法人:健康保険+厚生年金(報酬に連動)
法人を作って役員報酬を受け取ると、健康保険と厚生年金に加入します。これらの保険料は役員報酬(標準報酬月額)にもとづいて決まるため、役員報酬を低めに設定すれば保険料を抑えられます。協会けんぽ東京の令和8年度の料率は、健康保険9.85%+介護保険1.62%(40〜64歳)+子ども・子育て支援金0.23%、厚生年金は18.3%で、いずれも会社と本人で折半します。
実際にどのくらい安くなるか
東京・単身・40歳未満で、事業所得(青色申告特別控除65万円を引いた後)が約435万円のケースを例にします。
- 個人事業主の場合:国民健康保険が約48万円+国民年金が約21.5万円=約70万円(年間)
- マイクロ法人で役員報酬を月8.8万円(年105.6万円)に抑えた場合:社会保険料は本人・会社合計で約30万円(年間)
社会保険料だけを比べると、この例では年間で約40万円の差になります。ただし、これは社会保険料だけを取り出した比較です。実際の手取りは、所得税・住民税・法人税まで含めて総合的に変わるため、最終的な損益はシミュレーターで自分の数字を入れて確認するのが確実です。
最適な役員報酬の決め方
役員報酬を上げると、個人の所得税・社会保険料は増えますが、給与所得控除(最低74万円)が使えます。逆に下げると、社会保険料は減るものの、法人に残る利益が増えて法人税がかかります。この綱引きの中に、総手取り(本人の手取り+法人の税引後利益)が最大になる最適点があります。
なお、本業など他に社会保険の加入先がある会社員の場合は、役員報酬をゼロにして社会保険に入らず、法人に利益を内部留保する選択もできます。一方、本業がなく法人の社会保険だけが頼りの人は、健康保険を確保するために最低限の役員報酬が必要です。役員報酬は原則として期首から3か月以内に決め、期の途中では変更できない(定期同額給与)点にも注意してください。
デメリット・注意点
- 赤字でも法人住民税の均等割(東京23区で最低7万円)が毎年かかる
- 役員報酬を出すと社会保険の会社負担(折半分)が発生する
- 法人の決算・申告は個人より複雑で、税理士費用がかかるのが一般的
- 役員報酬ゼロが選べるのは、本業など他に社会保険の加入先がある場合に限られる
- 実態の伴わない極端な報酬設定や事業分散は、税務上問題となる可能性がある
まとめ
マイクロ法人で社会保険料が下がるのは、所得に連動する国民健康保険から、報酬に連動する健康保険・厚生年金へ切り替わり、役員報酬を抑えてコントロールできるようになるからです。ただし下げた利益には法人税がかかるため、社会保険料だけでなく税金まで含めた総手取りで判断することが大切です。自分の条件での損益は、下のシミュレーターで確認できます。