法人の内部留保の出口|役員退職金・配当・共済の税務
法人税等を払った後の会社資産を個人で受け取る方法と、受取時・法人側の税務を整理します。
2026年時点の制度内部留保は法人税等を払った後に会社へ残る利益であり、内部留保するだけで当期の法人税が減るわけではありません。そのお金は個人ではなく会社の資産です。
個人で使うには役員退職金・配当・役員報酬などの方法で受け取る必要があり、本人と法人の課税が異なります。受取時の個人税だけでなく、支給要件と法人側の処理まで比較します。
なぜ「出口」で差がつくのか
内部留保は「税引後の手元価値」に見えますが、個人で使うには取り出すときに改めて課税されます。受け取り方は主に、役員退職金・配当・役員報酬(給与)です。同じ金額でも、適用される控除や税率(分離課税か総合課税か)が違うため、手取りが大きく変わります。
役員退職金を使える条件
適正な役員退職金は、個人側の退職所得課税と法人側の損金算入を検討できる出口候補です。ただし、実際の退職、適正額、決議・支給時期を満たす必要があり、常に最も有利とは限りません。
- 個人側:退職所得控除は勤続20年以下が40万円×勤続年数(最低80万円)、20年超は800万円+70万円×(勤続年数−20)。一般の退職手当等は控除後の残額の2分の1を、他の所得と分離して課税します。
- 法人側:適正な額の役員退職金は、原則として株主総会の決議等で額が具体的に確定した事業年度に損金算入します。将来額の内定だけで先に未払計上しても損金にはできません。
当サイトの役員退職金ツールは個人側の税額だけを概算します。次の4点は判定しません。実際に退職したかどうか、退職金の適正額、法人側の損金算入、複数の退職所得の調整です。
解約返戻金を原資に充てる法人契約の生命保険については法人契約の生命保険の経理処理で整理しています。
代表を退いても非常勤役員として会社に残る場合の退職金(分掌変更による退職給与)は、実質的な退職と認められるかどうかで扱いが変わります。判定基準は分掌変更による役員退職給与で解説しています。
共済・iDeCoは受取方法で変わる
iDeCoの老齢給付金を一時金で受け取る場合は退職所得です。小規模企業共済は、共済金・準共済金の一括受取は退職所得、分割受取は公的年金等の雑所得ですが、死亡時や任意解約の年齢などにより相続税・一時所得となる場合もあります。
掛金時に所得控除があっても、受取時の区分と他の退職所得との控除調整まで確認して手取りを判断します。役員退職金用の計算式をそのまま共済・iDeCoへ当てはめることはできません(積立で節税する3制度も参照)。法人成りした場合の小規模企業共済の扱いは法人成りで小規模企業共済はどうなるかにまとめています。
配当・給与は重くなりやすい
配当と給与は課税範囲が異なるため、同じ受取額で本人税・社会保険・法人側処理をそろえて比較します。
- 配当:自分の会社(非上場株式)の配当は申告分離課税を選べず総合課税になります。配当控除はありますが、利益が大きいほど累進で税負担が増えます。
- 役員報酬(給与)で取り崩す:給与所得として課税され、加入要件を満たせば社会保険料の対象にもなります。法人側で損金にできる役員給与の要件と支給時期も別途確認します。
会社をたたんで残った財産を受け取る場合も、配当と同じ扱いになる部分があります。清算時の残余財産の分配とみなし配当は法人の解散・清算で整理しています。
清算まではせず、事業だけを止めて会社を残す「休眠」という選択肢もあります。登記を放置するとみなし解散になる点は会社を休眠させる方法で確認できます。
受取時期の注意(控除の重複)
複数の退職所得は、勤続期間等の重複部分について退職所得控除が調整されます。調整の対象になる前の退職手当等は、前年以前4年内に受けたものが基本です。ただし、2026年1月1日以後にiDeCo等の老齢一時金を先に受け、その後9年内に退職手当等を受ける場合も調整対象です。
反対に、退職手当等を先に受け、その後にiDeCo等の老齢一時金を受ける場合は、前年以前19年内に受けた退職手当等を確認します。単に受取時期をずらせば控除を最大化できるとは限らないため、支給予定日・加入期間・役員勤続期間を並べて税理士へ確認します。共済・iDeCo単体の退職所得控除の基本計算と計算例は共済・iDeCoの受け取りと出口の税金を参照してください。
まとめ
内部留保は法人税等を払った後の会社資産です。役員退職金・配当・役員報酬は、個人側の税だけでなく、実際の退職、適正額、法人側の損金算入、社会保険までそろえて比較します。
共済・iDeCoは受取方法と順序で課税区分・控除調整が変わります。役員退職金ツールは個人税の一次概算に限って使い、最終的な支給額と時期は専門家へ確認してください。
よくある質問
- 法人の内部留保はどの受け取り方が有利ですか?
- 一律には決まりません。適正な役員退職金は退職所得控除と分離課税を検討できますが、実際の退職・適正額・決議時期が必要です。配当・役員報酬と、本人税・社会保険・法人側の損金算入を同じ範囲で比較します。
- 配当や給与で受け取るのは不利ですか?
- 自分の会社の非上場株式の配当は総合課税で、申告分離課税を選べません。役員報酬は給与所得として課税され、加入要件を満たせば社会保険料の対象ですが、法人側の損金要件も含めた総額比較が必要です。
- 内部留保の出口設計で、複数の受け取りをまとめる場合の注意点は?
- 近い時期にまとめて受け取ると、退職所得控除が重複して調整され、思ったほど控除を使えないことがあります。受け取る順序や時期をずらすことで控除を活かせる場合があるため、出口の設計は税理士と行うのがおすすめです。
公式一次情報
- 国税庁「退職金を受け取ったとき(退職所得)」
- 国税庁「退職手当等に対する源泉徴収」
- 国税庁「役員の退職金の損金算入時期」
- 国税庁「配当所得の課税方法」
- 中小機構「共済金等請求・解約」
- e-Gov法令検索「所得税法施行令」第70条(退職所得控除額の計算の特例)(前年以前4年内の重複が基本、令和8年1月1日以後に老齢一時金を先に受けた場合は前年以前9年内、老齢一時金を後に受ける場合は前年以前19年内の退職手当等が調整対象)
役員退職金の個人手取りを試算する
役員退職金の額と役員等勤続年数を入れて、退職所得の税額を概算できます。共済・iDeCoや法人側の損金算入は対象外です。