法人成りで法人に利益を残す(内部留保する)と、その分の法人税は抑えられます。ただし、そのお金は会社のもの。個人で使うには「出口」で受け取る必要があり、受け取り方によって課税がまったく違います。最も有利な役員退職金を軸に、出口の選択肢を比較します。
なぜ「出口」で差がつくのか
内部留保は「税引後の手元価値」に見えますが、個人で使うには取り出すときに改めて課税されます。受け取り方は主に、役員退職金・配当・役員報酬(給与)です。同じ金額でも、適用される控除や税率(分離課税か総合課税か)が違うため、手取りが大きく変わります。
最も有利:役員退職金
役員退職金は、出口のなかで最も税効率が良い受け取り方です。理由は2つの優遇です。
- 退職所得控除:勤続20年以下は40万円×勤続年数(最低80万円)、20年超は800万円+70万円×(勤続年数−20)を、退職金から差し引けます。
- 2分の1課税:控除後の残額の2分の1だけが課税対象になり、分離課税(他の所得と合算しない)で計算されます。
具体的な手取りは、シミュレーターの出口試算に内部留保の総額と勤続年数を入れると、退職金と配当を並べて概算できます。
共済・iDeCoの一時金も退職所得
役員退職金と同じ「退職所得」として受け取れるのが、小規模企業共済の共済金(一括受取)とiDeCoの一時金です。いずれも退職所得控除の対象になり、退職金と同様に有利な受け取り方です。掛金を払う段階で所得控除(節税)になり、受け取る段階でも退職所得控除が使える二段構えが特長です(積立で節税する3制度を参照)。
配当・給与は重くなりやすい
退職金以外の出口は、一般に重くなります。
- 配当:自分の会社(非上場株式)の配当は申告分離課税を選べず総合課税になります。配当控除はありますが、利益が大きいほど累進で税負担が増えます。
- 役員報酬(給与)でまとめて取り崩す:給与所得として累進課税され、社会保険料もかかるため、一度に大きく取り崩すと税・社保が重くなります。
受取時期の注意(控除の重複)
退職金・小規模企業共済・iDeCoの一時金を近い時期にまとめて受け取ると、退職所得控除が重複して調整され、思ったほど控除を使えないことがあります。受け取る順序や時期をずらす設計で、控除を最大限活かせる場合があります。金額が大きいほど影響も大きいため、出口の設計は税理士と一緒に行うのがおすすめです。
まとめ
内部留保の出口は、役員退職金(退職所得控除+2分の1課税)が最も有利で、小規模企業共済・iDeCoの一時金も同じ退職所得として使えます。配当(総合課税)や給与での一括取り崩しは重くなりやすいのが基本です。複数の退職所得を受け取るときは控除の重複に注意し、受取時期を設計しましょう。まずは出口後の手取りをシミュレーターで確認してみてください。