法人成りのメリットのひとつが、個人事業主より経費にできる範囲が広がることです。代表的なのが役員社宅・役員退職金・出張日当です。いずれも要件を満たすことが前提で、形だけでは認められません。仕組みと注意点を整理します。
役員社宅
会社が住居を借り上げて役員に貸し、役員から「賃貸料相当額」を受け取る形にすると、家賃の大部分を会社の経費にしつつ、役員側は給与として課税されません。賃貸料相当額は、小規模な住宅の場合、建物・土地の固定資産税の課税標準額や床面積をもとに計算します(国税庁が計算方法を定めています)。実際の家賃よりかなり低く設定できることが多く、差額が節税につながります。
役員退職金
会社から役員に支払う退職金は、適正な額であれば会社の経費(損金)になります。受け取る個人側も、退職所得は退職所得控除を引いたうえで原則2分の1だけが課税対象になるため、給与で受け取るより税負担が軽くなります。法人に利益を残しておき、引退時に退職金として受け取るのは、出口戦略として有力です。
ただし、役員としての勤続年数が5年以下の「特定役員退職手当等」は、2分の1課税の対象外となるなどの制限があります。
出張日当(旅費規程)
あらかじめ旅費規程を整備し、社会通念上妥当な金額を出張日当として支給すると、会社は経費にでき、受け取る役員・従業員側は非課税になります。個人事業主にはない、法人ならではの仕組みです。金額が過大だったり、規程がなかったりすると、給与として課税される点に注意します。
その他(共済・保険など)
このほか、経営セーフティ共済(倒産防止共済)の掛金や、一定の生命保険料なども、要件のもとで経費にできる場合があります。制度ごとに損金算入の範囲や出口の課税が異なるため、導入前に確認が必要です。
注意点
いずれも「要件を満たし、実態を伴うこと」が前提です。形だけの社宅、過大な日当、不相応な退職金は、税務調査で否認されるリスクがあります。節税は制度の範囲内で行い、判断に迷う場合は税理士に相談しましょう。これらの経費が使えることも、法人成りで手取りが増える理由のひとつです。