消費税の簡易課税と本則課税|要件と計算差を比較
2つの計算方法、簡易課税の届出・みなし仕入率、仕入税額による差を整理します。
国税庁の制度簡易課税は、基準期間の売上要件と届出等を満たす課税期間に使える計算制度です。本則課税との税額差は、事業区分だけでなく実際の課税仕入れ、設備投資、複数税率等で変わります。
2つの計算方法
- 本則課税(一般課税):売上にかかった消費税から、実際に仕入れ・経費で支払った消費税を差し引いて納税額を計算します。仕入れの集計や、インボイス(適格請求書)の保存が必要です。
- 簡易課税:売上にかかった消費税に、業種ごとの「みなし仕入率」をかけた分を控除とみなして計算します。実際の仕入れを集計しなくてよく、事務が簡単です。
| 比較項目 | 本則課税(一般課税) | 簡易課税 |
|---|---|---|
| 控除額の計算方法 | 実際に仕入れ・経費で支払った消費税額 | 売上にかかる消費税額×業種ごとのみなし仕入率 |
| 事務負担 | 仕入れの集計、インボイス(適格請求書)の保存が必要 | 実際の仕入れを集計しなくてよい |
| 事前の届出 | 不要(原則) | 必要(適用を受ける課税期間の初日の前日まで) |
| 選択後の縛り | 特になし | 選択の効力が生じた課税期間初日から2年を経過する日の属する課税期間初日以後でなければ、原則として選択不適用届出書を提出できない |
簡易課税の要件
簡易課税を使うには、次の条件があります。
- 基準期間(前々年)の課税売上高が5,000万円以下であること。
- 事前に届出:「消費税簡易課税制度選択届出書」を、適用を受ける課税期間の初日の前日までに提出(開業した年はその課税期間中)。
- 選択不適用の制限:選択届出の効力が生じた課税期間初日から2年を経過する日の属する課税期間初日以後でなければ、原則として選択不適用届出書を提出できません。調整対象固定資産等による別の制限もあります。
みなし仕入率(6区分)
| 事業区分 | 業種 | みなし仕入率 |
|---|---|---|
| 第一種 | 卸売業 | 90% |
| 第二種 | 小売業 | 80% |
| 第三種 | 製造業など | 70% |
| 第四種 | その他(飲食店業など) | 60% |
| 第五種 | サービス業など | 50% |
| 第六種 | 不動産業 | 40% |
みなし仕入率が高い業種ほど、控除が大きく、納税額は少なくなります。たとえば第五種(サービス業、みなし仕入率50%)で売上にかかる消費税が100万円なら、控除額は50万円(100万円×50%)で、納税額は50万円になります。
計算差の確認方法
登録時の納税額・取引条件チェックで、2割特例・簡易課税の単純概算を並べて確認できます。適用可否は別途確認が必要です。2割特例終了後の3割特例と簡易課税の計算率比較は、それぞれのガイドで確認してください。
本則課税を含めて比較したい場合は消費税4方式比較ツールで、課税仕入率を入力して本則課税・簡易課税・2割特例・3割特例の概算額を並べて確認できます。
数値例(第五種・サービス業):売上にかかる消費税額100万円で、実際の課税仕入に係る消費税額が30万円だった場合、本則課税の納付額は100万円-30万円=70万円、簡易課税の納付額は100万円×(1-50%)=50万円で、この条件では簡易課税が20万円少なくなります。同じ売上でも実際の課税仕入に係る消費税額が60万円だった場合、本則課税の納付額は100万円-60万円=40万円となり、簡易課税の50万円より少なくなります。実際の課税仕入の水準によって、どちらが有利かは逆転します。
免税事業者からの仕入が多い場合、本則課税は経過措置の縮小で年々不利になっていきます。本則課税で免税事業者(インボイス未登録)から仕入れると、経過措置の控除割合(80%→70%→50%→30%)分しか仕入税額を控除できません。この割合は令和8年9月・令和10年9月・令和12年9月を境に段階的に縮小します。
免税事業者からの仕入が多い本則課税の事業者は、同じ取引でも年を追うごとに控除額が減っていきます。簡易課税は仕入先の登録状況にかかわらずみなし仕入率で計算するため、この縮小の影響を受けません。
まとめ
- 消費税の計算は、本則課税(実際の仕入控除)と簡易課税(みなし仕入率)から選べる。
- 簡易課税は、基準期間の課税売上5,000万円以下、届出、選択不適用等の制限を確認する。
- みなし仕入率は業種別(卸90%〜不動産40%)。高いほど納税は少ない。
- 本則の控除対象仕入税額と簡易のみなし仕入率を同じ課税期間で比較する。
消費税の課税事業者になるタイミングは消費税はいつから?・特定期間の判定を、登録の判断はインボイスは登録すべき?を参照してください。
納める消費税額が大きくなると、確定申告とは別に中間納付が必要になることもあります。