個人事業主の減価償却|定額法・耐用年数と金額帯の扱い
10万円以上の資産を経費にする減価償却の仕組みと、金額帯ごとの扱いを整理します。
国税庁の制度パソコンや車、設備など、高額なものを買ったとき、その全額をその年の経費にできるとは限りません。10万円以上のものは、「減価償却」で何年かに分けて経費にしていきます。金額帯によって扱いが変わるので、仕組みを整理します。
減価償却とは
減価償却は、長く使う高額な資産(パソコン・車・機械など)の購入費を、買った年に一度に経費にするのではなく、法律で定められた使用期間(耐用年数)にわたって分割して経費にする方法です。資産は使ううちに価値が下がっていくため、その目減り分を毎年の経費にしていく、という考え方です。取得価額には、本体価格だけでなく、運賃や据付費など、使えるようにするための費用も含めます。
金額帯ごとの扱い
| 取得価額 | 扱い |
|---|---|
| 10万円未満(または使用可能期間1年未満) | 買った年に全額を経費(消耗品費など) |
| 10万円以上20万円未満 | 一括償却資産として3年で均等に償却(毎年1/3ずつ)も選べる |
| 10万円以上(原則) | 耐用年数にわたって減価償却 |
| 青色申告の特例 | 30万円未満(令和8年4月以後の取得は40万円未満)は一括で経費にできる(少額減価償却資産の特例・年間合計300万円まで) |
少額のものほど、早く経費にできる選択肢があります。青色申告なら、30万円(令和8年4月以後は40万円)未満を一括で経費にできる特例が使えるので、利益が出た年の節税に役立ちます。なお、減価償却の対象になる機械・器具・備品などは、所得税とは別に償却資産税(地方税)の対象にもなり得ます。
国や自治体の補助金を固定資産の取得に充てた場合は、確定申告書に明細書を添付することを条件に、その分を収入に算入しない扱いがあります。この場合、減価償却の基礎になる取得費は、実際に支払った額から補助金の額を差し引いた残りになります(国税庁タックスアンサーNo.2202)。仕組みと計算例は個人事業主の補助金・助成金の税金で整理しています。
金額の大きい設備を買うときは、ここで説明した減価償却とは別の制度として、中小企業経営強化税制(特別償却または税額控除の選択適用。青色申告書を提出する中小企業者等が対象)が使える場合もあります(認定を受けてから取得する設備が対象)。認定の前提になる手続きは経営力向上計画と法人成りで整理しています。
定額法と耐用年数
個人事業主の減価償却は、原則として「定額法」です(毎年同じ額を償却する方法)。届出をすれば、一部の資産で定率法を選べる場合もあります。
耐用年数は、資産の種類ごとに法律で定められています。たとえば、パソコンは4年、普通自動車は6年などです。中古で買った資産は、残りの使用期間を見積もって、より短い耐用年数を使える場合があります。
計算例
定額法の償却費は、取得価額×定額法の償却率で毎年同じ額を計算します。償却率は耐用年数ごとに国税庁が定めており、耐用年数4年なら0.250、6年なら0.167です。
| 資産 | 取得価額 | 耐用年数・償却率 | 毎年の償却費 |
|---|---|---|---|
| パソコン | 24万円 | 4年(償却率0.250) | 24万円×0.250=6万円 |
| 普通自動車 | 180万円 | 6年(償却率0.167) | 180万円×0.167=30万600円 |
年の途中で取得して使い始めた資産は、上の金額を12で割り、その年に業務に使った月数を掛けた額が初年度の償却費になります(国税庁タックスアンサーNo.2106)。たとえば上の普通自動車を10月から使い始めた場合、10〜12月の3か月分で30万600円÷12×3か月=7万5,150円です。翌年からは12か月分の30万600円が基本です(最終年は残額に合わせて調整します)。
事業と私生活の両方に使う資産は、償却費の全額ではなく、業務に使った割合の分だけが必要経費になります。たとえば上の普通自動車を走行記録から事業用6割・私用4割と区分できるなら、30万600円×60%=18万360円が事業の経費です(残りの4割は経費にできません)。
この割合は「なんとなく」では決められません。国税庁は、事業と家事の両方に関わる費用(家事関連費)が必要経費になるのは、取引の記録などにもとづいて業務に直接必要だったことが明らかに区分できる金額に限ると説明しています。
所得税基本通達45-2では、業務に必要な部分が全体の50%を超え、かつ明らかに区分できる場合が原則で、50%以下でも明確に区分できる部分は必要経費に算入できるとされています。按分の基準は家事按分のやり方、車の場合は車を経費にする方法で整理しています。
耐用年数の最終年だけは全額を償却せず、帳簿価額を1円だけ残す(備忘価額1円)よう調整します。上のパソコンの例では、1〜3年目は各6万円ずつ償却し、4年目(最終年)は帳簿価額6万円から1円を引いた5万9,999円を償却します(平成19年4月1日以後取得分は、償却可能限度額・残存価額の制度が廃止され1円まで償却します)。
よくある質問
- 減価償却とは何ですか?
- 10万円以上の高額な資産(パソコン・車・設備など)を、買った年に全額経費にするのではなく、法律で定められた耐用年数にわたって分割して経費にする方法です。個人事業主は原則として定額法で計算します(出典:国税庁)。
- いくらから減価償却が必要ですか?
- 取得価額が10万円未満(または使用可能期間が1年未満)なら、買った年に全額を経費にできます。10万円以上20万円未満は一括償却資産として3年で均等に償却できます。10万円以上は原則として減価償却します(青色申告は30万円未満、令和8年4月以後は40万円未満の少額減価償却資産の特例もあります)(出典:国税庁)。
- 耐用年数は何年ですか?
- 資産の種類ごとに法律で定められています。たとえばパソコンは4年、普通自動車は6年などです。中古資産は、見積もりによる短い耐用年数を使える場合があります(出典:国税庁)。
まとめ
- 10万円以上の資産は、耐用年数にわたって分割して経費にする(減価償却)。
- 10万円未満は一括経費、10〜20万円は一括償却資産(3年)も選べる。
- 青色申告は30万円(令和8年4月以後は40万円)未満を一括で経費にできる特例あり。
- 個人事業主は原則定額法。耐用年数はパソコン4年・普通車6年など。
少額の備品の特例は少額減価償却資産の特例、車を経費にする方法は車を経費にするを参照してください。車検・整備費用が経費と減価償却(資本的支出)のどちらになるかは車検費用と減価償却の関係で解説しています。利益から税額の目安は確定申告の税額試算で確認できます。
自宅を事務所にしている場合の家賃・光熱費の按分は自宅を経費にする家事按分で解説しています。
法人の場合、車両や器具備品は届け出なければ定率法で償却します。法人成りで定額法を続けたい場合の期限は減価償却資産の償却方法の届出書で整理しています。
公式一次情報
- 国税庁「No.2100 減価償却のあらまし」(10万円未満は全額経費、10万円以上20万円未満は一括償却資産として3年、原則は定額法)
- 国税庁「No.2106 定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)」(償却費=取得価額×償却率、耐用年数4年は0.250・6年は0.167、備忘価額1円まで償却)
- 国税庁「No.2210 必要経費の知識」(家事関連費は、取引の記録などに基づき業務遂行上直接必要だったことが明らかに区分できる金額に限り必要経費になる)
- 国税庁「所得税基本通達45-1・45-2(家事関連費)」(業務に必要な部分が50%を超え、かつ明らかに区分できる場合が原則。50%以下でも明確に区分できる部分は必要経費に算入)
- 財務省「令和8年度税制改正の大綱」(中小企業経営強化税制は、青色申告書を提出する中小企業者等が対象で、特別償却又は税額控除との選択適用)