法人契約の生命保険(逓増定期保険等)の経理処理と退職金準備
法人が契約者となる定期保険は、最高解約返戻率によって保険料の資産計上ルールが変わります。令和元年7月8日以後契約分の取扱いを整理します。
令和元年7月8日以後契約分の取扱い法人が契約者となり役員・従業員を被保険者とする定期保険(逓増定期保険等)や第三分野保険(医療保険・がん保険等)は、支払った保険料をそのまま全額損金にできるとは限りません。
令和元年7月8日以後の契約は、最高解約返戻率の区分に応じて保険料の一部を資産計上する必要があります。基本ルールと退職金準備との関係を整理します。
契約形態で決まる基本ルール
法人が契約者となり、役員・使用人(またはその親族)を被保険者とする定期保険・第三分野保険の保険料は、保険金・給付金の受取人が法人か、被保険者本人・遺族かで扱いが変わります。
法人が受取人の場合、支払った保険料は原則として期間の経過に応じて損金の額に算入します。被保険者や遺族が受取人の場合も損金算入が原則ですが、役員または特定の使用人のみを被保険者としているときは、その保険料は当該者に対する給与として扱われます(出典:国税庁)。
資産計上が必要になる契約
令和元年7月8日以後に契約した、保険期間3年以上・最高解約返戻率50%超の定期保険・第三分野保険は、保険料の一部を資産に計上したうえで残りを損金算入します(出典:国税庁)。
逓増定期保険は、保険金額が保険期間中に増えていく定期保険の一種です。解約返戻率が高くなりやすい設計のため、多くの契約でこの資産計上ルールの対象になります。
最高解約返戻率ごとの資産計上・取崩し
資産計上する割合と期間は、契約時点の最高解約返戻率の区分によって決まります(令和元年7月8日以後契約分)。
| 最高解約返戻率 | 資産計上期間 | 資産計上額 | 取崩期間 |
|---|---|---|---|
| 50%以下 | 資産計上なし | ― | 支払時に全額損金算入 |
| 50%超70%以下 | 保険期間開始〜40%相当期間 | 支払保険料の40% | 75%相当期間経過後〜保険期間終了 |
| 70%超85%以下 | 保険期間開始〜40%相当期間 | 支払保険料の60% | 75%相当期間経過後〜保険期間終了 |
| 85%超 | 最高解約返戻率となる期間の終了まで(下限は原則5年、保険期間10年未満なら保険期間の50%相当期間) | 支払保険料×最高解約返戻率×90%(最初10年)、その後は×70% | 解約返戻金が最高となる期間経過後〜保険期間終了 |
85%超の区分は資産計上額の計算に最高解約返戻率そのものを掛ける点が他の区分と異なります。取崩期間に入ると、資産計上した累積額を期間の経過に応じて均等に取り崩し、その事業年度分を損金の額に算入します(出典:国税庁)。
少額特例(年換算保険料30万円以下)
最高解約返戻率70%以下、かつ年換算保険料相当額が被保険者1人につき合計30万円以下の契約は、上記の資産計上ルールの対象外となり、支払った保険料を全額その事業年度の損金に算入できます(出典:国税庁)。
同じ被保険者に複数の保険をかけている場合は合算して判定するため、1本ずつは少額に見えても合計で基準を超えれば資産計上が必要になります。
退職金準備としての使われ方
解約返戻金は、役員の退職に合わせて解約し、役員退職金の支払原資に充てる使われ方が一般的です。解約のタイミングが解約返戻率のピークとずれると、想定より受取額が少なくなることがあります。
解約時には、それまで資産に計上していた保険料の額と、実際に受け取る解約返戻金との差額が法人の利益に影響します。具体的な解約時期・金額・経理処理は、退職金の適正額とあわせて税理士に確認してください。
当サイトの役員退職金シミュレーターは、退職金を受け取る個人側の税額のみを概算します。保険料の資産計上・解約返戻金の益金算入・法人側の損金算入は対象外です。
よくある質問
- 逓増定期保険の保険料は全額損金にできますか?
契約内容によります。最高解約返戻率が50%以下、または70%以下かつ年換算保険料が被保険者1人につき30万円以下なら全額損金にできますが、それを超える契約は保険料の一部を資産計上する必要があります(出典:国税庁)。
- この資産計上ルールはいつからの契約に適用されますか?
令和元年7月8日以後に契約した定期保険・第三分野保険が対象です。それより前の契約は改正前の取扱いが続きます(出典:国税庁)。
- 保険料が役員個人の給与になるのはどんな場合ですか?
保険金・給付金の受取人が被保険者本人やその遺族で、かつ役員や特定の使用人だけを被保険者としている場合、その保険料は給与として扱われます(出典:国税庁)。
- 解約返戻金はそのまま退職金に使えますか?
解約返戻金を退職金の支払原資に充てること自体はできますが、解約時期によって受け取れる金額が変わり、資産計上額との差額は法人の利益に影響します。金額・時期は税理士に確認してください。
まとめ
- 法人契約の定期保険は、受取人と被保険者の関係で保険料が損金か給与かが決まる。
- 令和元年7月8日以後契約・保険期間3年以上・最高解約返戻率50%超は、保険料の一部を資産計上する。
- 資産計上の割合は最高解約返戻率の区分(50〜70%・70〜85%・85%超)で異なる。
- 最高解約返戻率70%以下かつ年換算保険料30万円以下(被保険者合計)は資産計上不要。
解約返戻金を退職金の原資に充てる場合は、解約時期・資産計上額との差額・退職金の適正額をあわせて税理士に確認してください。
公式一次情報
- 国税庁「No.5364 定期保険及び第三分野保険の保険料(保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれない場合)の取扱い(令和元年7月8日以後契約分)」(契約者・受取人の関係による損金・給与の区分)
- 国税庁「No.5364-2 定期保険及び第三分野保険の保険料(保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれる場合)の取扱い(令和元年7月8日以後契約分)」(最高解約返戻率区分ごとの資産計上・取崩し、少額特例)
役員退職金の個人手取りを試算する
役員退職金の額と役員等勤続年数を入れて、退職所得の税額を概算できます。保険料の資産計上・解約返戻金の経理処理は対象外です。