会社をたたむときの社長の個人保証の整理
会社が破産などで廃業しても、経営者保証ガイドラインを使えば、保証人は個人破産を避けられる場合があります。使える条件と、手元に残せる資産を公的な資料で整理します。
経営者保証ガイドラインの整理会社が廃業して借入の返済ができなくなっても、「経営者保証に関するガイドライン」に沿って保証債務を整理すると、保証人である経営者は個人破産を回避し、一定の資産を手元に残せる可能性があります。ただし、会社が破産・民事再生などの手続を申し立てていることと、対象の債権者全員の同意が必要です。
経営者保証ガイドラインは、保証人の債務の整理の進め方を定めたものです。日本商工会議所と全国銀行協会が事務局を務める研究会が廃業時の基本的な考え方をまとめ、金融庁と中小企業庁が経営者向けのパンフレットで周知しています。会社側の清算の流れは法人の解散・清算の手続にまとめています。
ガイドラインで何ができるか
経営者が個人保証をしている場合、会社(主たる債務者)が破産すると経営者も破産するしかないのか、という不安があります。パンフレットはこれに対し、ガイドラインを活用して保証債務を整理すれば、個人破産を回避して再出発できる可能性があると説明しています。
ガイドラインは経営者以外の第三者の保証人にも使えます。令和5年11月には、研究会が廃業時の基本的な考え方を改定し、廃業の手続に早く着手することが保証人の残存資産(手元に残る資産)の増加につながる可能性があることを明確にしました。
使うための要件
ガイドラインに基づく保証債務の整理を申し出るには、パンフレットが示す次の要件を満たす必要があります。
- 会社が手続を申し立てていること。破産・民事再生などの法的整理、またはこれに準じる私的整理(中小企業活性化協議会の再生支援など、中立な第三者が関わる手続)の開始を申し立て済みであること
- 対象の債権者にとって経済合理性が期待できること。
- 会社と保証人が誠実であること。債権者の請求に応じて、財産の状況を適時適切に開示していること
手続が終わった後でも使える場合があります。全国銀行協会の基本的考え方は、会社の手続がすでに係属中、または終結している場合も想定しています。
個人破産との違い
金融庁・中小企業庁のパンフレットは、ガイドラインによる保証債務の整理と個人破産を次のように比べています。
| 比べる点 | ガイドラインによる整理 | 個人破産 |
|---|---|---|
| 債権者の同意 | 対象の債権者全員の同意が必要 | 債権者の同意は不要 |
| 信用情報 | 信用情報登録機関に報告・登録されない | 報告・登録される |
| 手元に残せる資産 | 自由財産+インセンティブ資産 | 自由財産のみ |
| 対象となる債権者 | 保証債権を持つ金融機関、信用保証協会、債権回収会社、リース債権者、会社固有の債務の債権者など | 全債権者 |
自由財産とは、破産しても手元に残せる財産のことです。インセンティブ資産は、ガイドラインを使うときに限って、経済合理性の範囲内で追加して認められる可能性のある資産です。
手元に残せる資産
パンフレットが示す、ガイドラインで保証人の手元に残せる資産は次のとおりです。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 自由財産 | 債務整理を申し出た後に新しく取得した財産 |
| 差押えが禁止されている財産(生活に欠かせない家財道具など) | |
| 99万円以下の現金 | |
| 裁判所の実務で、通常は拡張が認められると考えられる財産(拡張自由財産) | |
| インセンティブ資産 | 一定期間の生計費に相当する資産(一定期間×月額33万円。雇用保険の給付期間を参考に個別の事情を考えて検討) |
| 華美でない自宅(華美かどうかは、事案ごとにさまざまな要素から判断) | |
| その他の資産(個別の事情を考慮して判断) |
インセンティブ資産には、一定の要件があります。残したい場合は、会社の破産などの手続が終わるまでに、ガイドラインを利用する意思を示しておく必要があります。
早く相談するほど残せる資産が増える仕組み
インセンティブ資産の上限は、「いま清算した場合の回収見込み額」が「将来(最大3年程度を想定)に清算した場合の回収見込み額」より増える金額です。事業が傷む前に整理すれば、売掛金を多く回収でき、不動産も早期売却価格ではなく市場価格で売れる可能性があります。その結果、債権者の回収額が増え、保証人の手元に残せる資産も増える可能性があります。
このため、パンフレットと基本的考え方は、廃業を考え始めた段階で、早めに相談することを勧めています。
相談先
- 取引している金融機関
- 中小企業活性化協議会、地域経済活性化支援機構(REVIC)
- 弁護士・税理士などの支援専門家
- 日本弁護士連合会のひまわりほっとダイヤル(電話で弁護士との面談予約ができるサービス)
会社を設立した直後の借入で、保証を付けない・外す条件を知りたいときは法人成り後に経営者保証を外す・付けない条件を参照してください。
まとめ
- 会社が廃業しても、ガイドラインによる保証債務の整理なら、保証人は個人破産を避けられる可能性がある。
- 会社が法的整理や、中立な第三者が関わる私的整理を申し立てていることなどが要件。
- 対象の債権者全員の同意が必要。信用情報登録機関には報告・登録されない。
- 手元に残せる資産は、自由財産に加えて、生計費・華美でない自宅などのインセンティブ資産。意思表示は会社の手続が終わるまでに行う。
- 早く着手するほど、残せる資産が増える可能性がある。
公式一次情報
- 金融庁・中小企業庁「経営者保証に関するガイドラインを活用してみませんか~早期廃業と再チャレンジ~」(要件・個人破産との比較・残存資産。2026-11-01確認)
- 中小企業庁「廃業時における『経営者保証に関するガイドライン』の基本的考え方の改定について」(令和5年11月22日。2026-11-01確認)
- 経営者保証に関するガイドライン研究会「廃業時における『経営者保証に関するガイドライン』の基本的考え方」(全国銀行協会掲載。対象となる場合・早期着手の考え方。2026-11-01確認)
よくある質問
- 会社が破産したら、社長も個人破産になりますか?
- 必ずしもそうではありません。経営者保証ガイドラインに基づいて保証債務を整理すれば、個人破産を回避できる可能性があります。ただし、対象の債権者全員の同意が必要です(出典:金融庁・中小企業庁のパンフレット)。
- ガイドラインで整理すると、信用情報に載りますか?
- パンフレットは、ガイドラインに基づく整理では信用情報登録機関に報告・登録されないとしています。個人破産では報告・登録されます。
- 整理しても、手元に残せるお金や家はありますか?
- 自由財産(99万円以下の現金など)に加えて、一定期間の生計費や華美でない自宅などのインセンティブ資産を残せる可能性があります。生計費は一定期間×月額33万円を目安に検討されます(出典:金融庁・中小企業庁のパンフレット)。
- インセンティブ資産を残すために、先にしておくことはありますか?
- 会社の破産などの手続が終わるまでに、ガイドラインを利用する意思表示をしておく必要があります(出典:金融庁・中小企業庁のパンフレット)。

