会社を休眠させる方法|解散・清算との違いとみなし解散のリスク
事業を一時停止したいときの「休眠会社」の考え方と、登記を放置すると強制的に解散させられる「みなし解散」制度の仕組みを整理します。
会社法472条・473条法人成りした会社の事業を一時的に止めたいとき、解散・清算までしなくても、登記や会社自体はそのままに事業活動だけを止める「休眠」という選択肢があります。
ただし、休眠したまま登記を放置すると、法務局から一方的に「解散したもの」とみなされる制度(みなし解散)があります。会社を休眠させる方法と、みなし解散のリスクを整理します。
休眠会社とは
休眠会社に法律上の統一した定義はありませんが、一般に、法人格・登記はそのまま残しつつ、事業活動を実質的に停止している会社を指します。解散・清算のように会社をたたむ手続きを取らず、税務署への異動届出書や都道府県・市区町村への届出のみで、いつでも事業を再開できる状態を保てます。
休眠中も、法人住民税の均等割など一部の税負担は原則として発生します。届出の正式名称・税務・社会保険の扱いは次の「休業の届出・税務・社会保険の扱い」で解説します。
休業の届出・税務・社会保険の扱い
休業する際に税務署へ提出する届出の正式名称は「異動届出書」です。国税庁に「休業届」という専用の様式は存在しません。異動届出書の記載欄に休業する旨を書き添えるのが実務上の運用です(出典:国税庁)。
届出先ごとの書類・期限・注意点を表にまとめます。
| 届出先 | 書類・扱い | 期限・注意点 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 税務署(法人税) | 異動届出書に休業する旨を書き添える(「休業届」という専用の様式は無い) | 休業中も、事業年度終了の日の翌日から2か月以内の確定申告書の提出義務は原則として続く | 国税庁 |
| 市区町村(法人住民税の均等割) | 黒字・赤字を問わず課税される「会費」の性格で、休業中も原則課税。休業の届出があった場合の扱いは市区町村ごとに異なる | 全国一律の減免制度は無い。鈴鹿市は事前の届出があれば申告不要、あま市は休業の届出があり再開の予定が無い場合に限り申告不要。所在地の市区町村に確認が必要 | 総務省、鈴鹿市、あま市 |
| 年金事務所・事務センター(社会保険) | 事業を廃止・休止して適用事業所に該当しなくなった場合は「健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届」を提出(全喪届の事由と書き方は別のガイドで解説) | 事実発生から5日以内 | 日本年金機構 |
みなし解散の基準と手続き
休眠のまま登記を放置すると、最後の登記から12年を経過した株式会社は、法務大臣が官報で公告した届出をしない限り、解散したものとみなされます(会社法第472条、いわゆる「休眠会社のみなし解散」)。一般社団法人・一般財団法人は基準が異なり、最後の登記から5年経過が対象です(出典:法務省)。
手続きの流れは次の3段階です(出典:法務省)。
- 官報公告:法務大臣が官報で公告します(毎年1回、法務省の例年の実施時期は10月頃)。
- 通知書の送付:登記所から対象会社へ通知書が送られます。
- 届出・登記:公告から2か月以内に「まだ事業を廃止していない」旨の届出、または役員変更等の登記をしない場合、その期間満了時にみなし解散の登記がされます。
令和7年度は10月10日に官報公告を行い、届出・登記の期限を12月10日、期限までに対応がなければ12月11日付で解散したものとみなす扱いでした。
みなし解散の対象になる年度の数え方(最後の登記日から割り出す手順)
対象かどうかは、その年度の法務大臣の官報公告の日の時点で、最後の登記から12年を経過しているかで決まります。令和7年度は、令和7年10月10日の時点で12年を経過している株式会社が対象でした(出典:法務省)。自社が何年度の整理作業で対象になるかは、次の順で割り出せます。
- 登記事項証明書で、会社に関する登記の年月日のうち最も新しいもの(最後の登記の日)を確かめます。役員の重任・変更、本店移転など、種類を問わず登記があった日が基準です。登記事項証明書や印鑑証明書の交付を請求しただけでは「登記」に当たらず、12年の数え方は変わりません(出典:法務省)。
- 最後の登記の日に12年を足し、12年を経過する時期を出します(会社法第472条)。
- その時期と、各年度の公告日(例年10月頃。年度ごとの日付は法務省の発表で確認)を比べます。公告日の時点で12年を経過していればその年度、まだ経過していなければ翌年度以降の整理作業が対象になります。
例えば、最後の登記が2014年6月の役員重任登記なら、12年を経過するのは2026年6月で、公告が例年どおり10月頃なら令和8年度の整理作業で対象になります。最後の登記が2014年12月なら、12年の経過は2026年12月のため、10月頃の公告の時点ではまだ12年に届かず、対象になるのは令和9年度以降です。
なお、対象は株式会社(会社法第472条の休眠会社)で、特例有限会社は含まれません。一般社団法人・一般財団法人は最後の登記から5年が基準です(出典:法務省)。
事業を続けている場合の届出
実際には事業を継続している会社でも、12年以上役員変更等の登記をしていなければ、通知の有無にかかわらず公告から2か月以内に届出をしないとみなし解散の対象になります。株式会社の取締役等の任期は最長10年のため、通常は10年に1回程度、役員変更登記が必要になり、これを怠ると対象になりやすくなります(出典:法務省)。役員の任期切れ・重任登記を怠った場合の過料などの帰結は役員の任期切れと重任登記で解説しています。
届出は、本店所在地を管轄する登記所へ「まだ事業を廃止していない」旨を申し出る方法のほか、役員変更等の登記を行うことでも解散を回避できます。
「まだ事業を廃止していない」旨の届出だけで済ませた場合、必要な登記の申請をしない限り、翌年度も整理作業の対象になります。また、届出や登記をしても、それ以前の登記を怠っていた分について裁判所から過料に処せられる可能性があります(会社法第915条第1項・第976条第1号、出典:法務省)。
みなし解散後に会社を継続する方法
みなし解散の登記がされた後も、解散したものとみなされてから3年以内であれば、株主総会の特別決議によって会社を継続できます(会社法第473条)。3年を過ぎると継続できず、清算手続きに進むことになります(出典:法務省・会社法)。会社を継続したときは、その決議から2週間以内に継続の登記を申請する必要があります(出典:法務省)。
みなし解散の後の登記記録の閉鎖(商業登記規則第81条)
みなし解散の登記は、登記官が職権で行う「解散の登記」です(出典:法務省)。解散の登記をした後10年を経過すると、登記官はその会社の登記記録を閉鎖することができます(商業登記規則第81条第1項第1号)。
- 10年を経過する2か月前から閉鎖されるまでの間に、本店所在地を管轄する登記所へ「清算を結了していない」旨の申出をすると、登記官は登記記録を閉鎖できません(同条第2項)。この申出をした場合も、申出から5年を経過すると閉鎖の対象になります(同条第1項第2号)。
- 閉鎖された後でも、「清算を結了していない」旨の申出をすると、登記官は登記記録を復活させなければなりません(同条第3項)。
登記記録の閉鎖は解散から10年後の扱いで、会社を継続できる期間(みなし解散から3年以内)はその前に終わっています。つまり、閉鎖の段階で申出によって登記記録を復活させられるのは清算を進めるためで、会社を継続して事業を再開できるわけではありません。財産や債務が残っている場合は、解散・清算手続きで清算を結了させる必要があります。
解散・清算との違い
休眠・みなし解散と、通常の解散・清算は別の手続きです。解散・清算は自らの意思で会社をたたむ手続きで、清算結了により法人格が消滅します。
| 比較 | 休眠 | みなし解散 | 解散・清算 |
|---|---|---|---|
| 会社の状態 | 会社をたたまずに事業だけを止める | 登記放置に対する法務局側の職権による扱い | 自らの意思で会社をたたむ |
| 法人格 | そのまま残る | 解散したものとみなされる(3年以内なら株主総会の特別決議で継続可) | 清算結了により消滅する |
事業を再開する予定がなく会社をたたむ場合は、みなし解散を待つのではなく、通常の解散・清算手続きを検討してください。
よくある質問
- 会社を休眠させると自動的に解散しますか?
休眠させただけでは解散しません。ただし、最後の登記から12年が経過した株式会社は、法務大臣の官報公告後2か月以内に届出等をしないと、みなし解散の対象になります(出典:法務省)。
- みなし解散の通知が来たらどうすればいいですか?
事業を継続している場合は、公告から2か月以内に本店所在地の登記所へ「まだ事業を廃止していない」旨を届け出るか、役員変更等の登記を行います。期限内に対応すれば解散したものとはみなされません(出典:法務省)。
- みなし解散されてしまったら、もう会社は使えませんか?
解散したものとみなされてから3年以内であれば、株主総会の特別決議で会社を継続できます。3年を過ぎると継続できず、清算手続きに進みます(会社法第473条、出典:法務省・会社法)。
- 「休眠届」はどこに出せばいいですか?
「休眠届」という名前の届出はありません。税務署へは異動届出書に休業する旨を書き添えて提出し、都道府県・市区町村への届出の扱いは自治体ごとに異なります(詳しくは「休業の届出・税務・社会保険の扱い」を参照)。登記所への「まだ事業を廃止していない」旨の届出は、みなし解散を避けるための別の届出です(出典:国税庁・法務省)。
- 休眠中も税金はかかりますか?
事業活動を停止していても、法人住民税の均等割など一部の税負担は原則として発生し、法人税の確定申告義務も原則として続きます。均等割の減免の有無は市区町村により異なるため、所在地の市区町村への確認が必要です(詳しくは「休業の届出・税務・社会保険の扱い」を参照)。
まとめ
- 休眠は会社をたたまずに事業活動だけを止める状態。解散・清算とは別の手続き。
- 最後の登記から12年経過した株式会社は、みなし解散(会社法472条)の対象になり得る。
- 官報公告から2か月以内に届出または登記をしないと、その期間満了時にみなし解散となる。
- みなし解散後3年以内なら、株主総会の特別決議で会社を継続できる(会社法473条)。
事業をたたむ通常の手続きは法人の解散・清算手続きを、事業承継を検討する場合は個人事業の許認可の引き継ぎも参考にしてください。
公式一次情報
- 法務省「休眠会社・休眠一般法人の整理作業について」(対象基準〈株式会社12年・一般社団法人等5年〉、官報公告から2か月の届出期限、みなし解散後3年以内の会社継続、令和7年度の基準日・期限、届出だけでは翌年も対象になる旨、継続の登記は決議から2週間以内)
- e-Gov法令検索「会社法」(第472条 休眠会社のみなし解散、第473条 株式会社の継続)
- e-Gov法令検索「商業登記規則」(第81条 解散の登記から10年経過後の登記記録の閉鎖、清算を結了していない旨の申出と登記記録の復活)
- 国税庁「C1-8 異動事項に関する届出」(休業に関する届出は異動届出書によること、専用の休業届様式は無いこと)
- 国税庁「C1-1 法人税、地方法人税及び防衛特別法人税の申告」(事業年度終了の日の翌日から2か月以内の確定申告義務)
- 総務省「法人住民税」(均等割は黒字・赤字を問わず発生する会費的性格)
- 鈴鹿市「よくある質問(休業中の均等割)」(休業中の均等割の取扱い例。「取扱いは市町村によって異なる」と明記)
- あま市「よくある質問(休業の届出と均等割)」(休業の届出と均等割の取扱い例。「取扱いは市町村によって異なる」と明記)
- 日本年金機構「適用事業所が廃止、休止等により適用事業所に該当しなくなったとき」(休業時の健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届、提出期限5日以内)