個人事業主の純損失の繰越控除|赤字を3年繰り越す(青色申告)
事業が赤字のときに、青色申告なら使える純損失の繰越控除・繰戻し還付を整理します。
国税庁の制度事業を始めた年や、調子の悪い年は、赤字になることもあります。そんなとき、青色申告なら救済の仕組みがあります。
赤字(純損失)を翌年以後に繰り越して、黒字になった年の税を減らせる「繰越控除」。前年の税を取り戻せる「繰戻し還付」もあります。仕組みを整理します。
純損失の繰越控除(3年)
この繰越控除を受けるには、赤字が生じた年分の確定申告書を提出し、かつ、その後連続して確定申告書を提出することが必要です(この申告を「確定損失申告」といいます)。途中の年で申告をしないと、それ以降の年へは繰り越せなくなるため注意しましょう。なお、特定非常災害の指定を受けた災害で事業用資産に一定以上の損害を受けた場合は、繰越期間が3年から5年に延長される特例があります。
純損失の繰戻し還付
前年も青色申告をしている場合は、繰越に代えて、今年の純損失を前年の所得に繰り戻して、前年に納めた所得税の還付を受けることもできます(純損失の繰戻し還付)。前年に黒字で税金を納めていれば、その一部が戻ってきます。
この還付請求は、確定申告期限(3月15日)内に「純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求書」を確定申告書とあわせて提出して行います。繰戻し還付を受けた分は、繰越控除には使えません。
還付額は、前年分の所得税額から、純損失を前年の所得から差し引いた後に計算し直した所得税額を差し引いて求めます。この差額が前年分の所得税額(源泉徴収前)を上回ることはなく、また復興特別所得税は還付の対象になりません。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 前年の課税総所得金額等 | 400万円 |
| ①前年の所得税額(400万円×20%−42万7,500円) | 37万2,500円 |
| 前年へ繰り戻す純損失の金額 | 150万円 |
| 繰戻し後の課税所得金額(400万円−150万円) | 250万円 |
| ②繰戻し後の所得税額(250万円×10%−9万7,500円) | 15万2,500円 |
| 還付される所得税額(①−②) | 22万円 |
税率・控除額は所得税の速算表によります(195万円超330万円以下は税率10%・控除9万7,500円、330万円超695万円以下は税率20%・控除42万7,500円)。前年の所得控除の内容や繰り戻す純損失額によって、実際の還付額は変わります。
青色申告が条件
これらの赤字の救済は、青色申告の大きなメリットです。白色申告では、原則として純損失の繰越しはできません(変動所得の損失や、被災事業用資産の損失など一部を除きます)。
赤字になる可能性がある事業なら、青色申告にしておく価値が高いといえます。青色と白色の違いもあわせて確認しましょう。
法人成り後の赤字にも、前期の法人税を取り戻せる似た仕組みがあります。欠損金の繰戻しによる還付で解説しています。
まとめ
- 青色申告なら、事業の赤字(純損失)を翌年以後3年間繰り越して、黒字年の所得から控除できる。
- 前年も青色なら、赤字を前年に繰り戻して所得税の還付を受けられる(繰戻し還付)。
- 白色申告は、原則として純損失の繰越しができない。
- 赤字の可能性がある事業ほど、青色申告のメリットが大きい。
青色申告の特典は青色と白色の違い、所得区分は事業所得と雑所得の違いを参照してください。黒字年の税額の目安は確定申告の税額試算で確認できます。黒字年の所得控除では地震保険料控除も確認できます。
公式一次情報
- 国税庁「No.2070 青色申告制度」(純損失の繰越控除は翌年以後3年間、前年も青色なら繰戻し還付も可能。令和5年4月1日以後に特定非常災害の指定を受けた災害による純損失は繰越控除期間が3年間から5年間へ延長)
- 国税庁「純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求手続」(還付請求書の名称、確定申告期限内の提出が必要なこと)
- 国税庁「純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求書」(様式)(還付請求金額の計算書の様式。前年分の税額から繰戻し後の税額を差し引いて還付額を計算し、上限は前年分の所得税額であること。復興特別所得税は還付の対象外であること)
- 国税庁「No.2260 所得税の税率」(速算表の税率・控除額。195万円超330万円以下は10%・控除9万7,500円、330万円超695万円以下は20%・控除42万7,500円)
- 国税庁「令和7年分 所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引き(損失申告用)」(青色申告をしていない年分に繰り越せるのは、変動所得の損失額・被災事業用資産の損失額・雑損失の金額に限られること。繰越控除を受けるには損失が生じた年分の確定申告書を提出し、かつその後連続して確定申告書を提出することが必要であること=確定損失申告)
よくある質問
- 事業が赤字のときはどうなりますか?
- 青色申告をしていれば、その年の純損失(赤字)を翌年以後3年間にわたって繰り越し、各年の黒字の所得から差し引けます(純損失の繰越控除)。これにより、黒字になった年の税負担を軽くできます(出典:国税庁)。
- 純損失の繰戻し還付とは?
- 前年も青色申告をしている場合、今年の純損失を前年の所得に繰り戻して、前年に納めた所得税の還付を受けられます(繰越に代えて選べます)。確定申告期限内に還付請求書を提出します(出典:国税庁)。
- 白色申告でも赤字を繰り越せますか?
- 白色申告では、原則として純損失の繰越しはできません(変動所得の損失や被災事業用資産の損失など一部を除く)。赤字の繰越・繰戻しは、青色申告の大きなメリットです(出典:国税庁)。