法人が従業員のマイナンバーを取得・保管・廃棄するルール|利用目的・本人確認・扶養控除等申告書は7年・100人以下の特例
法人成りして従業員を雇うと、源泉徴収票や社会保険の届出のためにマイナンバーを預かります。個人情報保護委員会のガイドライン(事業者編)で、いつ取得できるか、本人確認は何を見るか、いつまで保管して廃棄するか、従業員100人以下の事業者の特例は何かを整理します。
マイナンバー個人事業主のときは自分と家族のマイナンバーだけを扱っていても、法人成りして従業員を雇うと、他人のマイナンバーを会社が預かる立場になります。番号法では、取得・利用・保管・廃棄のどれも、法令で決められた場合に限られています。
会社が従業員のマイナンバーを使えるのは、源泉徴収票や社会保険の届出書などの作成事務に限られ、本人が同意しても社員番号として使うことはできません。事務が終わり、法令で決められた保存期間も過ぎたら、できるだけ速やかに廃棄します。
会社がマイナンバーを使える場面
個人情報保護委員会の資料は、取得・利用・提供は「法令で決められた場合だけ」、保管は「必要がある場合だけ」、廃棄は「必要がなくなったら」という考え方で整理しています。事業者が使うのは、主に、従業員等の番号を源泉徴収票や、健康保険・厚生年金保険の被保険者資格取得届などに記載して提出する場面です。
| 場面 | 会社ができること |
|---|---|
| 源泉徴収票・支払調書・社会保険の届出書の作成 | 従業員等に番号の提供を求め、書類に記載して提出する |
| 社員番号や営業成績の管理など、上の事務以外 | できない。本人の同意があっても利用してはならない |
| 給与の源泉徴収事務のための保管 | できる |
| 事務が終わり、保存期間も過ぎた後 | できるだけ速やかに廃棄または削除する |
取得:いつ、どう本人確認するか
提供を求める時期は、書類の作成事務が発生した時点が原則です。ただし、事務の発生が予想できる時点で求めることはできるとされ、源泉徴収票の場合は、雇用契約を結んだ時点で求めることも可能と解されています。
地代や家賃の支払調書の場合も、賃料の金額から支払調書が不要だと明らかな場合を除き、契約を結んだ時点で求められます。
本人確認は、番号の確認と身元の確認の2つが必要です。個人番号カードがあれば1枚で足り、ない場合は、番号確認書類(住民票の写し等)と身元確認書類(運転免許証等)を組み合わせます。代理人から受け取るときは、代理権の確認書類、代理人の身元確認書類、本人の番号確認書類が要ります。
| 提供する人 | 確認する書類 |
|---|---|
| 本人(個人番号カードあり) | 個人番号カード |
| 本人(カードなし) | 番号確認書類+身元確認書類 |
| 代理人 | 代理権確認書類+代理人の身元確認書類+本人の番号確認書類 |
なお、番号を利用するときは、番号法が限定した事務の範囲から、具体的な利用目的を特定するのが原則です。配偶者や子など、扶養親族の番号を預かる場面は法人成りと被扶養者の手続きに関わります。
保管:いつまで持てるか
雇用契約が続いている間は、翌年度以降も、源泉徴収や社会保険の届出のために番号を保管できると解されています。従業員が休職していて復職が未定でも、雇用契約が続いていれば保管できます。
- 保管できるのは、書類の作成事務を行う必要がある間だけ
- 営業成績の管理など、別の目的で番号を保管することはできない
- 番号を社員番号として使ってはならない
廃棄:扶養控除等申告書の7年と記録
事務が不要になり、所管法令の保存期間も過ぎたら、番号をできるだけ速やかに廃棄または削除しなければなりません。ガイドラインは、例として扶養控除等申告書を挙げています。
扶養控除等申告書は、所得税法施行規則第76条の3により、提出期限の属する年の翌年1月10日の翌日から7年を経過する日まで保存します。その期間を過ぎたら、申告書に書かれた番号は原則として速やかに廃棄します。
廃棄を行うまでの期間は、毎年度末に廃棄する等、事業者が判断してよいとされています。資料は、廃棄を前提とした保管体制を取ることが望ましいとしています。
番号やファイルを削除したり、電子媒体等を廃棄したりしたときは、その記録を保存します。廃棄を委託するときは、委託先が確実に廃棄したことを証明書等で確認します。
税理士や社労士に任せるとき
給与計算や社会保険の手続きを外部に委託すると、番号の取扱いも委託になります。委託する会社は、委託先に対して、必要かつ適切な監督をしなければなりません。
- 委託先を適切に選ぶ
- 安全管理措置を守らせるための契約を結ぶ
- 委託先での取扱状況を把握する
契約には、秘密保持義務、目的外利用の禁止、再委託の条件、漏えい等が起きたときの責任、契約終了後の返却または廃棄などを盛り込むことが求められます。委託先が再委託する場合は、最初の委託者の許諾が要ります。
従業員100人以下の事業者の特例
安全管理措置のうち、中小規模事業者には特例的な対応方法が示されています。中小規模事業者とは、従業員が100人以下の事業者です。ただし、個人番号利用事務実施者、委託を受けて個人番号関係事務を業務として行う事業者、金融分野の事業者、過去6か月以内のいずれかの日に取り扱う個人情報の数が5,000を超える事業者は除かれます。
ここでいう「従業員」は、中小企業基本法における従業員で、労働基準法第20条の適用を受ける労働者に相当する者です。従業員数が100人以下でも、除外される事業者にあたらないかは、ガイドラインで確認してください。
特例は、取り扱う番号の数が少なく、取り扱う人も限られることを理由に、手法の例示とは別に示されているものです。項目ごとの具体的な内容は、ガイドライン(別添)の「中小規模事業者における対応方法」の欄で確認してください。
法人成りの時点で決めておくこと
- 番号を扱う事務(源泉徴収票、社会保険の届出など)と、扱う人を決める
- 入社時に、個人番号カードまたは番号確認書類と身元確認書類を確認する流れを作る
- 番号を社員番号や人事評価に使わないよう、社内で決める
- 扶養控除等申告書など番号が書かれた書類を、保存期間が過ぎたら廃棄する年度末の手順にする
- 税理士・社労士に給与や社会保険を任せる場合は、番号の取扱いを契約に盛り込む
- 廃棄したときの記録の残し方を決める
まとめ
- 会社が従業員の番号を使えるのは、源泉徴収票や社会保険の届出書などの作成事務に限る
- 本人確認は、個人番号カード、またはカード以外の番号確認書類と身元確認書類の組み合わせ
- 雇用が続く間は保管でき、扶養控除等申告書は保存期間(翌年1月10日の翌日から7年)を過ぎたら速やかに廃棄
- 外部委託では、契約と監督が必要。再委託には最初の委託者の許諾が要る
- 従業員100人以下の事業者には、安全管理措置の特例的な対応方法がある
公式一次情報
- 個人情報保護委員会「はじめてのマイナンバーガイドライン(事業者編)」令和7年4月版(取得・保管・廃棄・委託・安全管理措置の概要、提供を求める時期の事例を掲載。2026-10-09確認)
- 個人情報保護委員会「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)」令和6年5月一部改正(本人確認の概要、保管・廃棄の事例、扶養控除等申告書の保存期間、中小規模事業者の定義を掲載。2026-10-09確認)
よくある質問
- 従業員のマイナンバーは、いつ集められますか。
- 書類の作成事務が発生した時点が原則ですが、源泉徴収票の場合は、雇用契約を結んだ時点で提供を求めることも可能と解されています(個人情報保護委員会)。
- 本人確認には何が必要ですか。
- 個人番号カードの提示を受ける場合は、それで足ります。それ以外は、番号確認書類(住民票の写し等)と身元確認書類(運転免許証等)の2つです。
- マイナンバーを社員番号として使えますか。
- 使えません。事業者は、社員の管理のために個人番号を社員番号として利用してはならないと、ガイドラインに書かれています。本人の同意があっても、例外を除いて利用できません。
- 退職した従業員の番号は、いつまで持てますか。
- 事務が不要になり、所管法令の保存期間も過ぎたら、できるだけ速やかに廃棄します。扶養控除等申告書は、提出期限の属する年の翌年1月10日の翌日から7年を経過する日までの保存です。廃棄の時期は、毎年度末にまとめる等、事業者が判断できます。
- 税理士に給与計算を頼むときは何が必要ですか。
- 委託先の選定、安全管理措置を守らせる契約、取扱状況の把握による必要かつ適切な監督が必要です。