一人社長の企業型DC(企業型確定拠出年金)の導入条件・掛金上限・手続き
法人化した後に企業型DCを導入するときの条件、掛金の上限額、規約の承認申請の流れを説明します。
厚生労働省・確定拠出年金法企業型DC(企業型確定拠出年金)は、会社が毎月の掛金を出し、従業員が自分で運用商品を選んで老後の資金をためる制度です。厚生年金保険に加入する法人であれば導入できるため、法人成りした一人社長の会社でも検討対象になります。
この記事では、導入に必要な手続き、掛金の上限額、iDeCoとの関係を整理します。社長本人が加入者になれるかどうかなど、厚生労働省の資料で確認できなかった点は、そのように明記します。
企業型DCとiDeCoの違い
厚生労働省の概要ページでは、確定拠出年金は、掛金を事業主が出す企業型DCと、加入者自身が出すiDeCoの2種類です。どちらも、拠出した掛金とその運用益の合計が将来の給付額になります。
| 項目 | 企業型DC | iDeCo |
|---|---|---|
| 実施主体 | 企業型年金規約の承認を受けた事業主 | 国民年金基金連合会 |
| 掛金を出す人 | 事業主(規約で定めればマッチング拠出で加入者も出せる) | 加入者本人 |
| 運用商品の選び方 | 運営管理機関が3以上35以下を提示、加入者が選ぶ | 運営管理機関が提示、加入者が選ぶ |
一人社長の会社では、事業主と加入者が同じ人になります。それでも、制度の上では会社が規約の承認を受けて掛金を拠出する形になります。
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導入の条件と規約の承認申請
確定拠出年金法第3条は、厚生年金保険の適用事業所の事業主が企業型年金を実施するときは、規約を作り、厚生労働大臣の承認を受けると定めています。承認を受けるまでの流れは次のとおりです。
- 規約を作る。労働組合がある場合は、対象となる厚生年金被保険者の過半数で組織する労働組合の同意を得る。労働組合がなければ、その過半数を代表する者の同意を得る。
- 運営管理業務を委託する運営管理機関と、資産管理機関を決める。
- 規約、同意を得たことを証する書類などを添えて、厚生労働大臣へ承認を申請する。
規約に必ず書く事項には、実施する事業所の名称と所在地、運営管理機関と資産管理機関、事業主掛金の額の算定方法、運用の方法の提示と指図、給付の額と支給の方法、事務費の負担があります。
承認の基準として、法第4条は、事業主掛金を定額、または給与に一定の率を掛ける方法などで決めることと、加入者が少なくとも3か月に1回は運用を指図できることを挙げています。
法第9条は、実施事業所に使用される第1号等厚生年金被保険者を企業型年金加入者とし、規約で一定の資格を定めた場合は、その資格のない人を加入者にしないと定めています。法人の役員が加入者に含まれるかどうかは、概要ページに記載がないため、この記事では断定しません。
掛金の上限額と2026年12月の引き上げ予定
厚生労働省の概要ページでは、企業型DCの拠出限度額は、月額55,000円から確定給付企業年金(DB)など他制度の掛金相当額を引いた額です。DBなどがない会社では、他制度分は引かれません。
同省の2025年改正のページでは、iDeCo・企業型DC・国民年金基金の拠出限度額の引き上げが2026年12月1日に施行される予定とされています。第2号加入者の共通拠出限度額は月額6.2万円に引き上げられます。企業年金がある人は、企業年金と合計して6.2万円が上限です。
導入する時期によって上限が変わるため、規約の承認申請の時点で、運営管理機関に適用される上限額を確認してください。
iDeCoと併用するときの条件
企業型DCに入ると、iDeCoの掛金上限も変わります。厚生労働省の概要ページでは、企業年金等に加入している第2号被保険者がiDeCoに入れるのは、次の3つの条件をすべて満たす場合に限るとされています。
- iDeCoの掛金額が、企業型DCの事業主掛金額と他制度の掛金相当額を合わせた額と合算して、各月の拠出限度額を超えない。
- 企業型DCとiDeCoの掛金が、いずれも各月拠出である。
- 企業型DCの加入者掛金(マッチング拠出)を拠出していない。
企業年金等に加入している第2号被保険者のiDeCoの上限は月額20,000円です。ただし、企業型DCの事業主掛金額と他制度の掛金相当額の合計が55,000円の範囲内であることが前提です。企業年金等に加入していない第2号被保険者の上限は月額23,000円です。
iDeCoの区分変更については、法人成り後にiDeCoの掛金上限はどう変わるかの記事で届出書の種類を整理しています。
2026年4月に変わった点
厚生労働省の2025年改正のページによると、次の改正が2026年4月1日に施行されています。
- 中小企業向けの簡易企業型年金(簡易型DC)で簡素化されていた手続きの一部が、通常の企業型DCにも適用され、簡易型DCは通常の企業型DCに統合された。
- マッチング拠出で、加入者掛金の額が事業主掛金の額を超えてはならないという制限が撤廃された。
- 自動移換(資産が自動的に国民年金基金連合会に移されること)に関する事業主の説明時期が見直された。
手続きの具体的な内容は、同ページに掲載された省令・通知で確認できます。
受け取りと退職時の扱い
老齢給付金は、5年以上20年以下の有期、または終身の年金で受け取ります。規約に定めがあれば、一時金も選べます。
確定拠出年金法第33条では、60歳から受け取るには通算加入者等期間が10年以上必要で、61歳以上62歳未満は8年、62歳以上63歳未満は6年、63歳以上64歳未満は4年と、年齢が上がるほど必要な期間が短くなります。
退職して加入資格を失ったとき、実施事業所に使用された期間が3年未満であれば、規約に定めがある場合に限り、事業主掛金に相当する部分の一部または全部を事業主へ返還する扱いにできます(法第3条第3項第10号)。
公式一次情報
- 厚生労働省「確定拠出年金制度の概要」(2026-10-16確認)
- 厚生労働省「2025年の制度改正」(2026-10-16確認)
- e-Gov法令検索「確定拠出年金法」第3条・第4条・第9条・第33条(2026-10-16確認)
まとめ
企業型DCは、厚生年金保険の適用事業所の事業主が、規約を作って厚生労働大臣の承認を受けると導入できます。掛金の上限は月額55,000円から他制度分を引いた額で、2026年12月1日に共通の上限が月額6.2万円へ引き上げられる予定です。iDeCoとの併用には3つの条件があります。
一人社長の会社の同意の取り方や、役員が加入者になれるかは確認できなかったため、運営管理機関への確認が必要です。
退職後の備えを比べるなら、小規模企業共済の記事もあわせて確認してください。
よくある質問
- 企業型DCは、従業員がいない一人社長の会社でも導入できますか?
- 確定拠出年金法は、厚生年金保険の適用事業所の事業主が規約の承認を受けて実施できると定めています。一人社長の会社での同意の取り方は、厚生労働省の資料で確認できませんでした。運営管理機関や年金事務所に確認してください。
- 企業型DCの掛金の上限はいくらですか?
- 月額55,000円から、確定給付企業年金など他制度の掛金相当額を引いた額です。2026年12月1日に、共通の上限が月額6.2万円へ引き上げられる予定です。
- 企業型DCに入るとiDeCoには入れませんか?
- 次の条件をすべて満たせば入れます。合算額が上限以内であること、掛金が各月拠出であること、企業型DCのマッチング拠出をしていないことです。上限は月額20,000円です。
- 簡易型DCは今も使えますか?
- 2026年4月1日に、簡易型DCは通常の企業型DCに統合されました。簡素化されていた手続きの一部が、通常の企業型DCにも適用されています。

