法人成りで雇用保険の事業所番号は変わる?引き継ぎと手続き
個人事業のときに使っていた雇用保険の適用事業所番号が、法人化したらどうなるかを解説します。原則と、番号を引き継げる「同一の事業主」認定の仕組みを、ハローワークの公式情報にもとづき整理します。
ハローワークの制度個人事業のときに従業員を雇っていた場合、雇用保険の適用事業所番号(11桁)が付与されています。法人成りをすると、原則は事業主が個人から法人という別の人格に変わるため、新しい事業所番号が付与されます。ただし、ハローワークが「同一の事業主」と認めた場合は、新規の番号を取得せず、既存の番号を引き継いだまま名称変更の届出だけで済む扱いがあります。
この記事では、原則の扱いと、番号を引き継げる条件・必要書類を、東京・愛知の各ハローワークが公表している資料にもとづき整理します。関連する論点は次の記事で扱っています。
- 労災保険・雇用保険の新規手続き全体: 「法人成りの労働保険の引継ぎ」
- 外国人従業員がいる場合の入管・ハローワークへの届出: 「法人成りで外国人従業員の届出はどうなる」
- 法人成り後に代表者・役員が失業給付・育児休業給付金を受けられなくなる点: 「法人成りと雇用保険の失業給付・育休給付」
- 労災保険料率を増減させる「メリット制」にも、雇用保険の「同一の事業主」認定のような引継ぎ制度があるか: 「法人成りで労災保険のメリット制は引き継げるか」
個人事業を廃業せずマイクロ法人と並行する「二刀流」で両方に従業員がいる場合は、この記事とは別の論点として個人事業と法人を並行する場合の労働保険で整理しています。
法人化にともなう他の労務関連の届出は、次の記事で整理しています。
- 36協定・就業規則: 「法人成りと36協定・就業規則」
- 社会保険の全喪届・新規適用届: 「法人成りの社会保険 全喪届・新規適用届」
- 従業員を雇うときの健康診断: 「従業員の健康診断の実施義務」
- 就業規則に書く項目: 「就業規則の必要記載事項と作成・届出の手順」
原則は新しい番号(事業主が変わるため)
雇用保険の適用事業所番号は、事業主(雇い主)ごとに割り振られます。被保険者が別の事業主のもとへ移る場合、原則は資格喪失・資格取得の手続きが必要で、これは新しい事業所番号が付与されることを意味します。
個人事業主が法人を設立して事業を移す法人成りも、事業主が個人から法人という別の人格に変わる点は、既存記事で整理した労災保険・雇用保険の新規手続きの原則(法人成りの労働保険の引継ぎ)と同じです。原則どおりに進める場合は、個人事業側で雇用保険適用事業所廃止届、法人側で雇用保険適用事業所設置届を提出し、法人には新しい事業所番号が付与されます。
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「同一の事業主」と認められれば番号を引き継げる
一方で、東京・愛知の各ハローワークが公表している「同一の事業主と認められる事例」の一覧には、「個人事業主の法人設立」が代表的な事例の一つとして明記されています。要件を満たし、管轄のハローワークから「同一の事業主」と認定を受ければ、事業所を廃止・新設する扱いにはならず、既存の雇用保険適用事業所番号をそのまま使い、「雇用保険事業主事業所各種変更届」(名称変更)を提出するだけで済みます。
ただし、この扱いには限定があります。愛知ハローワークの資料には「個人事業主の法人設立」について「原則として(元の個人事業主と)法人の代表者が同一の場合」という注記があります。個人事業主自身がそのまま法人の代表者(代表取締役等)に就任する、典型的な法人成りのケースは対象になりやすい一方、代表者が変わる場合は対象外となる可能性があるため、個別の事情は管轄のハローワークに事前確認することをおすすめします。
法人成りと同時に事業主が交代する場合
ここまでの「同一の事業主」認定は、個人事業主自身がそのまま法人の代表者に就任する場合を前提としています。親の個人事業を子が法人化して代表者になるなど、法人成りと同時に事業主(代表者)が交代する場合は、履歴事項全部証明書だけでは足りず、追加の書類が必要になります。
大阪労働局(ハローワーク池田)の資料では、事業譲渡契約書・代表者交替のあいさつ状等(代表者交代が分かる書類)に加えて、「被保険者承継理由書」(雇用契約が継続していることを確認するため)と「承継被保険者名簿」、新事業主の住民票(写。法人成りと同時の場合は当該法人の履歴事項全部証明書)を提出すれば、番号を引き継ぐ変更手続きとして扱われます。
被保険者承継理由書により雇用契約の継続が確認できない場合は資格喪失届が必要で、新事業主は新たに雇用保険適用事業所設置届等の手続きが必要になります。提出期限は変更があった日の翌日から起算して10日以内です。
必要書類・提出先
「同一の事業主」の認定に必要な書類は、確認できた範囲でもハローワークによって案内に幅があります。
| 案内元 | 必要書類として案内されているもの |
|---|---|
| 東京ハローワーク | 新旧事業実態証明書/登記簿謄本(法人)/雇用保険被保険者名簿/従業員承継の覚書 |
| 愛知ハローワーク | 履歴事項全部証明書 |
| 大阪ハローワーク(ハローワーク池田) | 個人事業主がそのまま法人化する場合は履歴事項全部証明書(写)。法人成りと同時に事業主が交代する場合は、代表者交代の書類・被保険者承継理由書・承継被保険者名簿・当該法人の履歴事項全部証明書 |
提出先は、法人の事業所を管轄するハローワークです。求められる書類は管轄によって異なる可能性があるため、法人成りの前に、管轄ハローワークの雇用保険適用課へ電話等で確認し、必要書類をそろえてから相談に行くと手戻りを防げます。
届出の順番(労働保険番号の左から3桁目)
番号を引き継ぐ変更手続きでは、ハローワークだけでなく労働基準監督署にも届出が要る場合があります。ハローワーク池田の案内では、事業所が持つ労働保険番号(14桁)の左から3桁目で、届出先と順番が分かれます。
| 左から3桁目 | 届出の順番 |
|---|---|
| 「1」 | 先に労働基準監督署へ「労働保険 名称、所在地変更届」を出し、そのあとハローワークへ「雇用保険事業主事業所各種変更届」を出す |
| 「3」 | ハローワークへ「労働保険 名称、所在地変更届」と「雇用保険事業主事業所各種変更届」をあわせて出す |
期限は、変更があった日の翌日から起算して10日以内です。なお同じ案内には、法人のまま事業主(代表者)だけが交代し、法人名に変更がない場合は手続き不要とあります。個人事業が法人になる法人成りは、この「手続き不要」には当たりません。
原則どおりに設置届を出す場合は、設置届に記入した法人番号でハローワークが登記事項を確認できれば、登記事項証明書の添付を省略できます。ただし、通常より手続きに時間がかかる場合があります(大阪労働局の設置手続き案内)。
認定後の届出/原則どおりの届出
「同一の事業主」の認定を受けた後は、「雇用保険事業主事業所各種変更届」(事業主の氏名・名称の変更)を提出します。新規の設置届・廃止届は不要です。
一方、認定を受けない場合や要件を満たさない場合は、原則どおりの手続きになります。個人事業側は雇用保険適用事業所廃止届、法人側は雇用保険適用事業所設置届と雇用保険被保険者資格取得届を提出し、法人には新しい事業所番号が付与されます。原則どおりの手続きの詳しい期限(設置届は事業所設置日の翌日から10日以内など)は法人成りの労働保険の引継ぎを参照してください。
まとめ
- 雇用保険の適用事業所番号は、原則として事業主ごとに割り振られるため、法人成りでは新しい番号になるのが基本。
- ただし、東京・愛知の各ハローワークが示す「同一の事業主と認められる事例」に「個人事業主の法人設立」が明記されており、認定を受ければ既存の番号を引き継いだまま名称変更の届出で済む。
- この扱いは、原則として元の個人事業主と法人の代表者が同一である場合が前提(愛知ハローワークの資料の注記)。
- 必要書類はハローワークにより案内が異なるため、法人成りの前に管轄ハローワークへ確認するのが確実。
従業員を雇うときに備える名簿・台帳は労働者名簿・賃金台帳・出勤簿の記載事項と保存期間で整理しています。
引き継ぐ従業員のうち、誰が雇用保険の対象かは雇用保険の加入条件で確認できます。
番号を引き継ぐ場合と新しい番号になる場合の比較
どちらの扱いになるかで、出す届出と相手先が変わります。この記事で確認した公式資料の範囲で並べると次のとおりです。
| 項目 | 同一の事業主と認定された場合 | 原則どおりの場合 |
|---|---|---|
| 事業所番号 | 既存の番号をそのまま使う | 法人に新しい番号が付与される |
| 個人事業側の届出 | 廃止届は不要 | 雇用保険適用事業所廃止届 |
| 法人側の届出 | 雇用保険事業主事業所各種変更届(名称変更) | 雇用保険適用事業所設置届・雇用保険被保険者資格取得届 |
| 期限の目安 | 変更があった日の翌日から10日以内 | 設置届は事業所設置日の翌日から10日以内など(詳細は労働保険の引継ぎ) |
様式や添付書類は管轄のハローワークによって案内が異なるため、提出前に管轄ハローワークで最新の様式を確認してください。
公式一次情報
- 東京ハローワーク「適用事業所に関するQ&A」(Q8:被保険者が別法人に移る場合は原則的には資格喪失・資格取得の手続きが必要だが、元の事業主と譲渡先の事業主に同一性が認められれば転勤の手続きで済むこと、同一性の有無はハローワークが確認すること。2026-09-04確認)
- 東京ハローワーク「同一の事業主と認められる事例」(④個人事業主の法人設立を事例として明記。提出書類は新旧事業実態証明書・登記簿謄本(法人)・雇用保険被保険者名簿・従業員承継の覚書、同一事業主の認定後に「雇用保険事業主事業所各種変更届」(名称変更)を提出することを案内。2026-09-04確認)
- 愛知ハローワーク「同一事業主の取扱いに関する提出書類一覧」(個人事業主の法人設立について、必要書類は「履歴事項全部証明書」、取扱いは事業所名称・事業主氏名の変更として「雇用保険事業主事業所各種変更届」を法人の事業所を管轄するハローワークへ提出すること、「原則としてaと法人Aの代表者が同一の場合」という限定を明記。2026-09-04確認)
- ハローワーク池田「雇用保険適用事業所及び事業主の変更手続きについて」(法人成りと同時に事業主が交代する場合の必要書類として、代表者交代が分かる書類・被保険者承継理由書・承継被保険者名簿・新事業主の住民票を案内。被保険者承継理由書で雇用契約の継続が確認できない場合の資格喪失届・新規設置届の扱い、提出期限「変更があった日の翌日から起算して10日以内」を明記。個人事業が法人成りする場合の確認書類(履歴事項全部証明書)と、労働保険番号の左から3桁目による届出先・順番の違いも同資料で2026-10-21確認。設置届の登記事項証明書の省略(法人番号)は大阪労働局「雇用保険適用事業所を設置する場合の手続きについて」(PDF、2026-10-21確認)。ローカル労働局のPDFのため将来的にURLが変わる可能性がある。2026-09-15確認)
よくある質問
- 法人成りすると、雇用保険の事業所番号は必ず変わりますか?
- 必ずではありません。原則は事業主が個人から法人という別の人格に変わるため新しい番号になりますが、要件を満たし管轄ハローワークから「同一の事業主」と認定を受ければ、既存の番号を引き継いだまま名称変更の届出で済む場合があります。
- 「同一の事業主」の認定を受けるには何をすればいいですか?
- 東京・愛知の各ハローワークの資料では「個人事業主の法人設立」が同一事業主と認められる事例として明記されています。必要書類は管轄により案内が異なるため、法人成りの前に管轄ハローワークへ確認し、指示された書類(登記簿謄本や新旧事業実態証明書など)をそろえて相談してください。
- 誰が代表者になっても番号を引き継げますか?
- 愛知ハローワークの資料には「原則として元の個人事業主と法人の代表者が同一の場合」という限定があります。個人事業主自身がそのまま法人の代表者に就任する典型的な法人成りは対象になりやすい一方、代表者が変わる場合は対象外となる可能性があるため、個別に確認が必要です。
- 認定を受けられなかった場合はどうなりますか?
- 原則どおりの手続きになります。個人事業側は雇用保険適用事業所廃止届、法人側は雇用保険適用事業所設置届と雇用保険被保険者資格取得届を提出し、法人には新しい事業所番号が付与されます。
- 親の個人事業を子が法人化して代表者になる場合も番号を引き継げますか?
- 個人事業主自身がそのまま代表者になるケースとは扱いが異なります。大阪労働局の資料では、法人成りと同時に事業主(代表者)が交代する場合、代表者交代が分かる書類に加えて被保険者承継理由書・承継被保険者名簿・新事業主の住民票(または法人の履歴事項全部証明書)が必要とされ、雇用契約の継続が確認できないと資格喪失届と新規の設置届が必要になります。提出期限は変更があった日の翌日から起算して10日以内です。
税・社会保険の負担を確かめたら、個人と法人の手取りを比べる(利益額の目安から):300万円・600万円・1,000万円(入力済みの状態で計算機が開きます。業種・年齢などの未確認項目は計算機で選びます)