労使協定の種類と届出の要否一覧(36協定以外を含む14種類)
法人成りで従業員を雇う会社が結ぶ可能性のある労使協定を、根拠条文・届出が必要かどうか・様式の有無で整理します。
労働基準法の制度労使協定は、使用者と労働者の過半数で組織する労働組合(無ければ労働者の過半数を代表する者)が結ぶ書面の協定です。労働基準法には、この協定を条件に例外を認める規定が14か所あります。労働基準監督署への届出が条文で求められているのは、貯蓄金管理・変形労働時間制・36協定など一部だけで、賃金控除・一斉休憩の例外・計画年休などは届出がありません。
14種類の労使協定を一覧にしました。36協定そのものの手順は、関連記事の法人成りで36協定・就業規則はどうなるで説明しています。就業規則の書き方は、就業規則の必要記載事項と作成・届出の手順を参照してください。
労使協定14種類の一覧(届出の要否つき)
下の表は、労働基準法第106条第1項が「周知すべき協定」として列挙している条文を、条の順に並べたものです。届出の欄は、各条文に届出の定めがあるか、厚生労働省の主要様式一覧に協定届の様式があるかで判断しました。
| 協定の内容 | 条文 | 労基署への届出 |
|---|---|---|
| 労働者の貯蓄金を会社が管理する(社内預金) | 第18条第2項 | 必要(貯蓄金管理協定届) |
| 賃金から法令に定めのないものを控除する | 第24条第1項ただし書 | 条文に定めなし |
| 1か月単位の変形労働時間制(就業規則で定める方法もある) | 第32条の2 | 必要(協定による場合) |
| フレックスタイム制 | 第32条の3 | 清算期間が1か月を超えるときだけ必要 |
| 1年単位の変形労働時間制 | 第32条の4 | 必要 |
| 1週間単位の非定型的変形労働時間制 | 第32条の5 | 必要 |
| 休憩を一斉に与えない | 第34条第2項ただし書 | 条文に定めなし |
| 時間外労働・休日労働(36協定) | 第36条 | 必要(効力の要件) |
| 月60時間超の割増賃金に代えて代替休暇を与える | 第37条第3項 | 条文に定めなし |
| 事業場外労働のみなし時間 | 第38条の2第2項 | みなし時間が法定労働時間を超えるときだけ必要 |
| 専門業務型裁量労働制 | 第38条の3 | 必要 |
| 年次有給休暇を時間単位で取る | 第39条第4項 | 条文に定めなし |
| 年次有給休暇の計画的付与 | 第39条第6項 | 条文に定めなし |
| 年次有給休暇の賃金を健康保険の標準報酬日額で払う | 第39条第9項ただし書 | 条文に定めなし |
第106条第1項は、このほかに企画業務型裁量労働制の決議(第38条の4)も周知の対象として挙げています。こちらは労使委員会の決議で、労使協定とは別の仕組みなので、14種類には含めていません。
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届出が必要な8つと、様式の番号
厚生労働省の主要様式の一覧には、次の協定届が載っています(令和5年3月末時点の一覧に、各様式の更新日が付記されています)。
- 貯蓄金管理協定届(第18条)
- 1か月単位の変形労働時間制に関する協定届(第32条の2第2項)。施行規則では様式第3号の2
- 清算期間が1箇月を超えるフレックスタイム制に関する協定届(第32条の3第4項)
- 1年単位の変形労働時間制に関する協定届(第32条の4)
- 1週間単位の非定型的変形労働時間制に関する協定届(第32条の5第3項)
- 時間外労働・休日労働に関する協定届(第36条第1項。一般条項は様式第9号、特別条項は様式第9号の2)
- 事業場外労働に関する協定届(第38条の2第3項。施行規則では様式第12号)
- 専門業務型裁量労働制に関する協定届(第38条の3第2項)
事業場外労働の協定は、定めるみなし時間が法定労働時間(第32条)以下なら、届け出なくてよいと施行規則第24条の2第3項が定めています。また、同じ項で、36協定の届出に事業場外労働の協定内容を付記して出せば、別に届け出たことになるとされています。
フレックスタイム制は、条文の準用規定のただし書で、清算期間が1か月以内なら届出から外れます。つまり、清算期間を1か月以内にした協定は結ぶだけで足ります。
届出が不要な協定でも必要なこと
届出が要らないのは、協定を結ばなくてよいという意味ではありません。たとえば、賃金から社宅費のような、法令に定めのない金額を差し引くときは、第24条第1項ただし書の協定がなければ、全額払いの原則に反します。
また、第106条第1項は、14種類のすべての協定について、常時各作業場の見やすい場所への掲示・備付け、書面の交付、電子データでの常時確認のいずれかによる周知を使用者に求めています。周知の方法は、労働基準法施行規則第52条の2に定められています。
届出が必要な協定は、届け出るだけでなく、周知も必要です。届出と周知の両方を満たして初めて、規定どおりの運用になります。
過半数代表者の選び方
事業場に労働者の過半数で組織する労働組合が無いときは、労働者の過半数を代表する者と協定を結びます。この代表者の要件は、労働基準法施行規則第6条の2第1項に2つあります。
- 監督または管理の地位にある者(第41条第2号)ではないこと
- 協定等をする者を選ぶことを明らかにして実施される投票、挙手等の方法で選ばれ、使用者の意向に基づいて選ばれたものではないこと
使用者は、労働者が過半数代表者になろうとしたことなどを理由に、不利益な取扱いをしてはなりません(同条第3項)。また、代表者が協定等の事務を円滑に行えるよう、必要な配慮をする義務もあります(同条第4項)。
「この人にお願いします」と社長が指名するだけでは、第2号の要件を満たしません。協定届には、代表者が適格に選ばれているかを確認するチェックボックスが設けられています(令和3年4月以降の様式)。
法人成りの直後に最初に検討する協定
個人事業のときに結んでいた協定は、使用者が個人事業主でした。法人成りで使用者が法人に変わるため、協定は法人として結び直し、届出が必要なものは法人名義で届け出る、というのが実務上の基本的な考え方です。この点を法人成りに限って名指しする公式ページは確認できていないので、実際の扱いは所轄の労働基準監督署に確認してください。
従業員が数人の会社が、最初に検討しやすいのは次の3つです。
- 36協定:残業や休日出勤をさせる可能性があるなら、従業員の人数に関係なく必要です。
- 賃金控除の協定:社会保険料や所得税以外に、給与から差し引く項目がある場合に必要です。
- 計画年休・時間単位年休の協定:年次有給休暇の取り方に会社の決まりを設けたいときだけ結びます。
変形労働時間制や裁量労働制は、業務の実態に合うかを確認してから導入を検討します。導入する場合は、届出が必要な協定になります。
公式一次情報
- e-Gov法令検索「労働基準法」(第18条第2項・第24条第1項・第32条の2〜第32条の5・第34条第2項・第36条第1項・第37条第3項・第38条の2第2項・第38条の3第1項・第39条第4項・第6項・第9項の協定の定め、第106条第1項の周知義務。2026-10-14確認)
- e-Gov法令検索「労働基準法施行規則」(第6条の2:過半数代表者の要件、第24条の2第3項:事業場外労働の協定の届出と例外、第52条の2:周知の方法。2026-10-14確認)
- 厚生労働省「労働基準法等関係主要様式ダウンロードコーナー」(貯蓄金管理協定届、変形労働時間制・フレックスタイム制・36協定・事業場外労働・専門業務型裁量労働制の協定届の様式と根拠条文。2026-10-14確認)
よくある質問
- 労使協定を結んだら、必ず労働基準監督署に届け出ますか?
- 必ずではありません。条文に届出の定めがあるのは、貯蓄金管理、各種の変形労働時間制、36協定、事業場外労働、専門業務型裁量労働制などです。賃金控除、一斉休憩の例外、計画年休などの協定には、届出の定めがありません。
- 従業員が1人でも労使協定は結べますか?
- 労働者の過半数を代表する者と結ぶ仕組みなので、従業員が少なくても結べます。ただし、代表者は管理監督者ではない労働者から、投票や挙手などの方法で選ぶ必要があります(施行規則第6条の2)。
- 協定を結んだあと、労働者に知らせる義務はありますか?
- あります。届出の要否にかかわらず、第106条第1項で、掲示・備付け、書面の交付、電子データでの常時確認のいずれかによる周知が求められています(周知の方法は施行規則第52条の2)。
- 個人事業のときの労使協定は、法人になってもそのまま使えますか?
- 使用者が個人事業主から法人に変わるため、法人として結び直すのが実務上の基本的な考え方です。法人成りに限って案内する公式ページは確認できていないので、届出が必要な協定は所轄の労働基準監督署に確認してください。
