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法人成りでネットショップの「特定商取引法に基づく表記」はどう変わる?

個人事業のネットショップを法人へ移すときに、販売業者名・責任者名・住所・電話番号をどこまで書き換えるか、変更時期と表示漏れの扱いまで消費者庁の公式情報で整理します。

特定商取引法
編集:個人事業主のお金ラボ編集部(合同会社フューチャープロンプト) / 運営方針・出典

個人事業主と新設法人は別の事業者です。ネットショップの販売主体を法人へ切り替えるなら、「特定商取引法に基づく表記」も法人の登記簿上の名称と、法人の連絡先・責任者が分かる内容へ更新します。

特定商取引法が「法人成り後○日以内」と定めているわけではありません。義務の起点は、法人を販売業者とする通信販売広告を出す時点です。原則は必要事項の直接表示ですが、同法11条ただし書の条件を満たす場合には一部を省略できます。

直接表示する場合に変わる4項目

消費者庁の特定商取引法ガイドは、通信販売の広告に事業者の氏名(名称)・住所・電話番号を表示するよう案内しています。インターネット広告を行う法人は、これらに加えて代表者または通信販売業務の責任者の氏名も必要です。

項目個人事業法人成り後
販売業者名戸籍上の氏名、または商業登記簿に記載された商号登記簿上の法人名
責任者名法人向けの追加表示義務はない代表者、または通信販売業務の責任者の氏名
住所現に活動している住所法人が現に活動している住所。通常は登記簿上の住所と同じ
電話番号確実に連絡を取れる番号法人の窓口として確実に連絡を取れる番号

ただし、特定商取引法11条ただし書により、広告に「請求があれば必要事項を遅滞なく提供する」旨を表示し、実際に提供できる措置を講じている場合は、販売業者名・住所・電話番号・代表者または通信販売責任者名などの直接表示を省略できます。消費者庁は「遅滞なく」を、購入申込みの判断に必要な時間を確保して申込み前に提供することと説明しています。単に情報を隠したり、請求窓口を用意しなかったりする方法は、この例外に当たりません。

未登記の屋号・ショップ名・サイト名だけでは、販売業者名の表示になりません。個人事業のときにショップ名だけを載せていた場合は、法人成りを待たずに現在の表示も点検対象です。

注意:法人名だけで終わらない:法人がウェブサイト等で通信販売の広告を行う場合は、代表者名または通信販売業務の責任者名も表示します。責任者は担当役員・担当部長など実務上の責任者でよく、代表権を持つ人に限られません。

法人を販売業者とする広告の公開前に更新

特定商取引法には、法人成りに伴う表示変更を「変更後○日以内」に行うという専用の期限規定は確認できません。これは「更新しなくてよい」という意味ではなく、広告を出す時点で販売業者の正しい情報を表示する義務が続くということです。

そのため、法人を販売業者として示す広告を公開する前に、直接表示する情報、または11条ただし書の省略条件を満たす表示と提供体制を準備します。法人名義で注文を受け始める前に切り替えを終えることは、注文時の表示と契約当事者の食い違いを防ぐための安全な実務上の目安です。

対処:登記事項証明書で法人名と本店所在地を確認し、問い合わせ窓口が実際に機能する状態を作ったうえで、法人を販売業者とする広告の公開前に表示を更新します。

ネットショップ内の更新チェックリスト

独自ドメインのショップだけでなく、モール・決済サービス側にも販売業者情報が保存されていることがあります。「特定商取引法に基づく表記」ページだけを直して終わりにせず、購入者が注文前後に目にする事業者情報を横断確認します。

  • 商品ページやフッターから「特定商取引法に基づく表記」へ容易に到達できるか
  • 販売業者名を登記簿上の法人名へ変更したか
  • 代表者名または通信販売業務の責任者名を追加したか
  • 法人の活動拠点となる住所を番地まで正確に表示したか
  • 確実に連絡を取れる電話番号を表示したか
  • 直接表示を省略する場合は、請求に応じて遅滞なく提供する旨の表示と、申込み前に実際に提供できる体制があるか
  • 注文確認メール・領収書・請求書・返品先の名義や住所と食い違っていないか
  • モール、カート、決済代行、配送サービスの事業者情報も変更したか

消費者庁は、広告画面から「特定商取引法に基づく表記」などと明示したリンクで容易に到達できる方法を例示しています。一方、表示可能なモール内に書かず、モール外の自社サイトへリンクするだけの方法は、通常は容易に到達できる表示とは扱われません。

サーバー・ドメイン自体の契約者変更は、この表示更新とは別の手続きです。契約先への申請は法人成り時のドメイン・レンタルサーバーの契約者名義変更で確認してください。

表示漏れは行政指導・行政処分の対象になり得る

販売業者の名称・住所・電話番号などの広告表示義務は、特定商取引法11条にもとづきます。表示義務違反は、行政指導のほか、同法14条の指示、15条の業務停止命令、15条の2の業務禁止命令の対象になり得ます。

消費者庁が公表した通信販売分野の執行状況でも、広告表示義務違反(11条)に対する行政指導が計上されています。表示漏れ自体に一律の刑罰が直ちに科されるという整理ではありませんが、14条の指示に違反した場合は71条、15条の業務停止命令に違反した場合は70条の罰則対象です。

注意:個別判断は専門窓口へ:取り扱う商品・サービスによっては、特定商取引法以外の許認可や表示規制も関係します。本記事は一般的な表示項目の整理であり、個別の法的判断は消費生活センター、所管の経済産業局、弁護士等へ確認してください。

まとめ

  • 個人事業から法人へ販売主体を移すなら、販売業者名を登記簿上の法人名へ更新する。
  • 直接表示する場合、法人のウェブ通販では代表者または通信販売業務の責任者の氏名も必要になる。
  • 住所は現に活動している場所、電話番号は確実に連絡を取れる番号を用いる。
  • 請求に応じて遅滞なく提供する旨を表示し、実際の提供体制を整えれば、一部の直接表示を省略できる。
  • 法人成り専用の「変更後○日以内」という期限はないが、法人を販売業者とする広告の公開前に更新する。
  • 表示義務違反は行政指導・指示・業務停止命令等の対象になり得る。

ショップ名やロゴを商標登録している場合、その商標権自体を個人から法人へ移す手続きは、特定商取引法の表記更新とは別に必要です。移転登録に必要な書類と登録免許税は、「法人成りで商標権・特許権はどうなる」で解説しています。

公式一次情報

よくある質問

個人事業の屋号をそのまま販売業者名にできますか?
未登記の屋号やショップ名だけでは足りません。個人事業者は戸籍上の氏名または商業登記簿に記載された商号、法人は登記簿上の法人名を表示します(出典:消費者庁)。
法人成り後、いつまでに表記を変更しますか?
法人成り専用の「変更後○日以内」という期限規定は確認できません。法人を販売業者とする広告を公開する時点までに、直接表示または11条ただし書の条件を満たす表示・提供体制へ更新します。注文受付前に済ませることは安全な実務上の目安です。
氏名・住所・電話番号は必ず広告画面に直接載せますか?
原則は直接表示ですが、広告に「請求があれば遅滞なく提供する」旨を表示し、申込み前に実際に提供できる措置を講じている場合は、特定商取引法11条ただし書により一部を省略できます。請求窓口と提供体制がなければ省略できません。
住所や電話番号が個人事業のときと同じなら変更不要ですか?
同じ場所・番号を引き続き法人の活動拠点・連絡窓口として使う場合でも、法人名と責任者名を含めて全項目を確認します。住所は現に活動している場所、電話番号は確実に連絡を取れる番号であることが必要です。
表示を直さないと、すぐ罰金になりますか?
表示漏れ自体に一律の刑罰が直ちに科されるという整理ではありませんが、行政指導や、特定商取引法14条の指示・15条の業務停止命令等の対象になり得ます。指示や命令への違反には同法70条・71条の罰則があります。
本記事について。弁護士等の専門家監修前の概説です。2026年9月18日時点の消費者庁・e-Gov法令検索の情報にもとづく一般的な整理であり、個別の取引への適用や法的助言ではありません。