実質的支配者の判定で議決権をどう数えるか(議決権制限株式・自己株式・種類株式・黄金株)
実質的支配者リスト制度で「議決権の25%超」を判定するとき、議決権制限株式、自己株式、種類株式、黄金株をどう扱うかを、法務省の「実質的支配者リスト制度Q&A」で整理します。
法務局の手続き株主名簿の持株数をそのまま発行済株式の総数で割ると、判定を誤ることがあります。議決権の割合は、議決権のない株式や議決権を行使できない株式を除いて数えます。法務省のQ&Aは、自己株式、議決権制限株式、種類株式、黄金株について次のように答えています。
実質的支配者の全体像、申出の流れ、添付書面は実質的支配者とは?誰が該当するか・リスト制度の申出方法と添付書面で扱っています。この記事は、議決権の数え方の4つの疑問に絞ります。
自己株式は議決権の総数にも保有数にも入れない
会社が自社の株式を持っている自己株式には、議決権がありません。法務省のQ&Aは、実質的支配者を判断するための議決権の算定では、自己株式は議決権の総数からも保有数からも除くとしています(Q&A 1-7)。
たとえば発行済株式が100株で、会社が自己株式を20株持っているときは、議決権の総数を80として割合を計算します。株主Aが持つ株式が24株なら、100株で割れば24%ですが、80で割れば30%になり、25%を超えます。
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議決権制限株式と相互保有株式
議決権制限株式についてのQ&A(1-3)は、次の2つに分けて答えています。
- 相互保有株式(会社法308条1項で議決権がなくなる株式):実質的支配者を判断する上での議決権に含めます。
- 役員等の選任と定款変更の議案の全部で議決権を行使できない株式:その議決権は、判断する上での議決権から除きます。取締役、会計参与、監査役、執行役の選任と、定款変更に関する議案(これに相当するものを含む)が対象です。
会社法上は議決権がなくても、この制度の判定では数える株式があるのが相互保有株式の特徴です。自己株式と同じ扱いだと思い込まないでください。
種類株式は議案によって数え方が分かれる
種類株式についてのQ&A(1-15)は、次のとおり答えています。
- 完全無議決権株式は、議決権の算定から除きます。
- 役員等(会計監査人を除く)の選任と定款変更に関する議案の全部について株主総会で議決権を行使できない株式の議決権も、算定から除きます。
一部の議案だけ議決権がない株式は、除く対象にならないと読めます。役員の選任や定款変更のうち1つでも議決権を行使できる議案がある株式は、議決権の算定に入れて数えます。判断に迷う種類株式があるときは、定款の定めと登記事項証明書の内容を見て、どの議案で議決権を行使できるかを確かめます。
黄金株を持っていても、議決権が25%以下なら制度の対象外
黄金株(特定の議案に拒否権をもつ種類株式)を持つ株主の議決権が25%以下のときは、リスト制度の対象となる実質的支配者には該当しません(Q&A 1-14)。この制度は、犯収法施行規則11条2項1号の実質的支配者だけを対象にしており、同号は議決権の25%超が基準だからです。
ただし、Q&Aは続けて、リスト制度の対象にならなくても、黄金株を持つ人が犯収法施行規則11条2項2号の実質的支配者に該当する可能性はあるとしています。金融機関の取引時確認などでは、この号の考え方で実質的支配者を確認される場面があります。リストに載らないことと、実質的支配者に当たらないことは同じではありません。
4つの扱いの早見表
| 株式の種類 | 議決権の算定 | Q&A |
|---|---|---|
| 自己株式 | 総数からも保有数からも除く | 1-7 |
| 相互保有株式 | 含める | 1-3 |
| 役員等の選任と定款変更の全議案で議決権がない株式 | 除く | 1-3、1-15 |
| 完全無議決権株式 | 除く | 1-15 |
| 黄金株(議決権25%以下) | リスト制度の対象外。2号の実質的支配者の可能性はある | 1-14 |
まとめ
- 自己株式は、議決権の総数からも保有数からも除いて割合を出す。
- 相互保有株式は含め、役員等の選任と定款変更の全議案で議決権を行使できない株式は除く。
- 完全無議決権株式は除く。一部の議案だけ議決権がない株式は、除く対象と書かれていない。
- 黄金株を持っていても議決権が25%以下ならリスト制度の対象外だが、2号の実質的支配者になる可能性は残る。
次に知りたいこと:申出に必要な添付書面と流れは実質的支配者リスト制度の申出方法に、リストの写しを再度もらうときは再交付と申出し直しにまとめています。
よくある質問
- 自己株式は、実質的支配者の議決権割合の計算でどう扱いますか?
- 自己株式には議決権がないので、議決権の総数と保有数のどちらからも除きます(出典:法務省「実質的支配者リスト制度Q&A」1-7)。
- 相互保有株式は議決権に含めますか?
- 含めます。会社法308条1項で議決権を行使できない相互保有株式も、実質的支配者を判断する上での議決権には含むとされています(出典:同Q&A 1-3)。
- 議決権制限株式は、どんな場合に議決権の算定から除きますか?
- 取締役、会計参与、監査役、執行役の選任と定款変更に関する議案の全部で株主総会の議決権を行使できない株式の議決権を除きます(出典:同Q&A 1-3・1-15)。
- 黄金株を持っていると、議決権が25%以下でも実質的支配者として申出に載りますか?
- リスト制度の対象となる実質的支配者には該当しません。ただし、犯収法施行規則11条2項2号の実質的支配者に該当する可能性はあります(出典:同Q&A 1-14)。
公式情報
- 法務省「実質的支配者リスト制度Q&A」(1-3 議決権制限株式等、1-7 自己株式、1-14 黄金株、1-15 種類株式)

