会社の解散・個人事業の廃業と補助金|処分制限財産の承認・返還・加算金
補助金で買った機械やウェブサイトを持ったまま会社を解散・清算したり、事業を廃業したりするときの注意点を整理します。補助事業の途中で止める場合と、補助金を受け取ったあとの財産処分の場合に分け、補助金適正化法の条文と小規模事業者持続化補助金の公募要領で確認します。
補助金の手続き国の補助金は、お金を受け取って終わりではありません。補助金で取得した機械や、作ったウェブサイトは、補助事業が終わって補助金が支払われたあとも、一定の期間は自由に処分できないのが原則です。会社を解散して機械を売る、廃業して設備を廃棄する、といった動きはその「処分」にあたります。
この記事では、国の補助金に共通する補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(補助金適正化法)の条文と、例として小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>第20回公募の公募要領(第8版・2026年7月21日)を使って、解散・廃業の前に何を確認するかを整理します。補助金の種類や公募回によって定めは異なるため、受け取った補助金の交付規程と事務局の案内が最終的な基準です。
補助事業の途中で止めるとき
補助金の交付が決まってから補助事業が終わるまでの間に事業をやめる場合は、先に事務局の承認が要ります。補助金適正化法7条1項4号は、補助事業等を中止し、または廃止する場合は各省各庁の長の承認を受けるべきことを、交付の条件として付けるものとしています。
小規模事業者持続化補助金の公募要領も、交付決定後に補助事業を中止(一時中断)、廃止(実施取りやめ)や他に承継させようとするときは、事前に補助金事務局の承認を得なければならないとしています。解散や廃業を決めたら、決める前後を問わず、まず事務局へ連絡して手順を確認してください。
受け取ったあとは処分制限財産に注意
補助金適正化法22条は、補助事業者が補助事業で取得した政令で定める財産を、各省各庁の長の承認を受けずに、補助金の交付の目的に反して使用したり、譲渡・交換・貸付け・担保提供をしたりしてはならないと定めています。
政令で定める財産は、不動産、船舶・航空機などのほか、機械及び重要な器具で各省各庁の長が定めるものです(同法施行令13条)。どの機械や器具が対象かは、所管の省庁や事務局が補助金ごとに決めます。
小規模事業者持続化補助金の公募要領では、単価50万円(税抜き)以上の機械装置等と、50万円(税抜き)以上で作成・更新したウェブサイトやシステムが「処分制限財産」にあたります。補助金の支払を受けたあとも、補助事業目的外での使用、譲渡、担保提供、廃棄等が制限されます。ウェブサイトやシステムの制限期間は、通常は取得日から5年間とされています。
制限期間内に処分するときは、事務局に承認を申請し、承認を受けたあとでなければ処分できません。事務局は、承認した補助事業者に対し、残存簿価等から算出される金額の返還のため、交付した補助金の全部または一部に相当する金額を納付させることがあります。
承認なしで処分したときの返還と加算金
承認を受けないまま処分すると、補助金の返還を求められることがあります。補助金適正化法17条1項は、補助事業者が補助金の他の用途への使用その他、法令や交付の条件に違反したときは、各省各庁の長が交付決定の全部または一部を取り消せると定めています。取消しは、補助金の額が確定したあとでも行えます(同条3項)。
取消しをした場合で、すでに補助金が交付されているときは、期限を定めて返還が命じられます(同法18条1項)。返還を命じられると、補助金の受領の日から納付の日までの日数に応じ、年10.95パーセントの加算金も国に納める必要があります(同法19条1項)。納期日までに納めなかったときは、未納額に年10.95パーセントの延滞金もかかります(同条2項)。
持続化補助金の公募要領も、承認を得ずに処分を行うと、交付規程違反により交付取消・返還命令(加算金付き)の対象になるとしています。承認を受けて処分する場合は納付額が残存簿価等から算出されるのに対し、承認なしの処分は交付決定の取消しという別の扱いになるため、処分の前に承認を得てください。
解散・清算と廃業で気をつけること
株式会社は、解散しても清算が結了するまでは、清算の目的の範囲内でなお存続するものとみなされます(会社法476条)。補助金を受けた会社が清算中のあいだも、補助事業者としての地位は続くと考えて、財産の処分は事務局の承認を受けてから進めるのが安全です。
清算では、会社の財産を換価して債務を払い、残った財産を株主へ分配します。補助金で取得した機械や備品を売る、廃棄する、株主へ現物で渡す、といった動きは、制限期間内であれば承認の対象になり得ます。手順の全体は法人の解散と清算の流れで確認できます。
個人事業を廃業する場合も同じ考え方です。廃業届は税務署への届出で、補助金の事務局への承認とは別の手続きです。廃業届の出し方は個人事業の廃業の手続きで整理しています。
個人事業を法人にするときは、機械の所有者が個人から法人に変わるため、これも処分の確認が要ります。その場合は法人成りと持続化補助金(処分制限財産と営業譲渡契約書)で扱っています。
架空条件の当てはめ
次の表は説明用の架空条件です。上の仕組みにあてはめた場合の見方を示します。実際の可否や返還額は、補助金ごとの交付規程と事務局の判断によります。
| 架空の状況 | 確認すること | 見方 |
|---|---|---|
| 補助事業の実施中に、資金繰りの悪化で事業をやめたい | 事務局への事前の承認 | 中止・廃止は事前承認が必要(補助金適正化法7条1項4号、公募要領) |
| 補助金の支払後、80万円(税抜き)の機械が制限期間内のまま会社を解散する | 機械を売る・廃棄する前の承認申請 | 単価50万円(税抜き)以上の機械装置等は処分制限財産。承認なしの処分は取消し・返還・加算金の対象 |
| 取得から5年が過ぎたウェブサイトを、廃業に合わせて閉じる | 制限期間が過ぎているか | 通常は取得日から5年間とされる。期間は事務局の案内で確認する |
返還額の計算や、承認の可否の見通しは、補助金の種類や財産ごとに異なります。迷うときは、解散や廃業の日程を決める前に事務局へ照会してください。
次に知りたいこと
法人の解散と清算の流れ(登記から清算結了までの全体像)
個人事業の廃業の手続き
法人成りと持続化補助金(処分制限財産と営業譲渡契約書)
まとめ
- 補助事業の途中で中止・廃止するときは、事前に事務局の承認が要る(補助金適正化法7条1項4号、公募要領)。
- 補助金で取得した財産のうち処分制限財産は、支払後も期間内の譲渡・廃棄などに承認が要る(同法22条)。持続化補助金では単価50万円(税抜き)以上が対象。
- 承認なしに処分すると、交付決定の取消しと返還命令、年10.95パーセントの加算金の対象になり得る(同法17〜19条)。
- 解散後も清算結了まで会社は存続するとみなされるため(会社法476条)、清算中の財産の処分も承認が先。
公式一次情報
- e-Gov法令検索 補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(7条の交付の条件・17条の決定の取消・18条の返還・19条の加算金及び延滞金・22条の財産の処分の制限。2026-11-05確認)
- e-Gov法令検索 補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律施行令(13条の処分を制限する財産・14条の制限を適用しない場合。2026-11-05確認)
- e-Gov法令検索 会社法(476条の清算株式会社の能力。2026-11-05確認)
- 小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>第20回公募 公募要領(第8版・2026年7月21日)(処分制限財産・補助事業の中止・廃止の承認の項。2026-11-05確認)
よくある質問
- 補助金をもらったあとで会社を解散すると、補助金は返還ですか?
- 解散したことそのものではなく、財産の扱いで決まります。補助金で取得した処分制限財産を期間内に承認なしで売却・廃棄すると、交付決定の取消しと返還命令の対象になり得ます。先に事務局へ承認を申請してください(出典:補助金適正化法17・22条)。
- 処分制限財産とはどんな財産ですか?
- 補助金適正化法22条の対象で、不動産や、各省各庁の長が定める機械及び重要な器具などです。小規模事業者持続化補助金では、単価50万円(税抜き)以上の機械装置等と、50万円(税抜き)以上で作成・更新したウェブサイトやシステムが該当します(出典:施行令13条、公募要領)。
- 処分の制限はいつまで続きますか?
- 補助金の目的と財産の耐用年数を勘案して各省各庁の長などが定める期間が過ぎれば、制限は適用されません。持続化補助金のウェブサイトやシステムは、通常は取得日から5年間とされています(出典:施行令14条、公募要領)。
- 承認なしに処分すると、加算金はいくらかかりますか?
- 返還を命じられたとき、補助金の受領の日から納付の日までの日数に応じて、年10.95パーセントの割合で計算した加算金を納める必要があります(出典:補助金適正化法19条1項)。

