特定役員退職手当等の課税の仕組み|役員等勤続5年以下は1/2課税なし(計算例3つ)
法人成りして社長になった人が早めに退任すると、役員等としての勤続年数が5年以下の退職金は「特定役員退職手当等」になり、退職所得の1/2課税が使えません。該当の判定、通常の退職金との違い、使用人から役員になった人の計算を、3つの例で説明します。
国税庁の取扱い退職金の税金は、通常は「(収入金額−退職所得控除額)×1/2」で計算します。ところが役員等として働いた期間が5年以下の人が、その期間に対応して受ける退職金には、この1/2をかける措置がありません。この記事では、どんな人が該当するのか、通常の計算と何が違うのかを、国税庁のタックスアンサーの例で確認します。
関連するガイドは次のとおりです。会社が退職金を払うときの損金算入や源泉徴収は役員退職金を支払うときの手続き、手取りの試算は役員退職金の手取り計算、共済やiDeCoの一時金は共済・iDeCoの受け取りと出口の税金にまとめています。
特定役員退職手当等にあたる人と退職金
特定役員退職手当等とは、役員等勤続年数が5年以下の人が、退職手当等の支払者から、その役員勤続年数に対応する退職手当等として受ける退職金のことです。該当すると、退職所得控除額を引いた残りを2分の1にする措置がなく、残り全額が退職所得になります(国税庁 No.2737)。
ここでいう「役員等」は、国税庁の説明では次の人です。
- 法人の取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事、清算人、法人の経営に従事している一定の人
- 国会議員、地方公共団体の議会の議員
- 国家公務員、地方公務員
法人成りした社長は、取締役として法人の役員等にあたります。ただし、個人事業の期間は役員等としての勤続期間には入りません。
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役員等勤続年数の数え方(4年11か月と5年1か月)
役員等勤続年数は、役員等として勤務した期間の年数で、1年未満の端数があるときは1年に切り上げます。
| 役員等としての勤続期間 | 役員等勤続年数 | 特定役員退職手当等 |
|---|---|---|
| 4年11か月 | 5年 | 該当する |
| 5年1か月 | 6年 | 該当しない |
退職所得の計算式
通常の退職金(一般退職手当等)の退職所得は「(収入金額−退職所得控除額)×1/2」です。特定役員退職手当等では、1/2をかけません。国税庁は次の2つの場合に分けて示しています。
| その年に支払われる退職金 | 退職所得の金額 |
|---|---|
| 特定役員退職手当等だけ | 収入金額−退職所得控除額 |
| 特定役員退職手当等と一般退職手当等の両方 | (特定役員退職手当等の収入金額−特定役員退職所得控除額)+{一般退職手当等の収入金額−(退職所得控除額−特定役員退職所得控除額)}×1/2 |
特定役員退職所得控除額は、特定役員等勤続期間と一般勤続期間が重なる年数(重複勤続年数)があるかで変わります。1年未満の端数は1年として数えます。
- 重複勤続年数がない:40万円×特定役員等勤続年数
- 重複勤続年数がある:40万円×(特定役員等勤続年数−重複勤続年数)+20万円×重複勤続年数
計算例3つ(役員のみ・使用人から役員・兼務役員)
次の3例は、国税庁 No.2737に示されている例です。
例1:役員としての勤続4年9か月、役員退職金500万円
- 勤続年数は5年で、特定役員退職手当等に該当
- 退職所得の金額:500万円−(40万円×5年)=300万円
1/2をかけないため、同じ500万円でも、通常の退職金なら(500万円−200万円)×1/2=150万円で済むところが、2倍の300万円になります(通常の計算は編集部による比較です)。
例2:使用人として10年勤務後、役員として3年勤務して退職
- 使用人の退職金800万円、役員の退職金500万円
- 退職所得控除額:40万円×13年=520万円。特定役員退職所得控除額:40万円×3年=120万円
- 退職所得の金額:(500万円−120万円)+{800万円−(520万円−120万円)}×1/2=580万円
例3:使用人10年、使用人兼務役員3年、役員専任2年で退職
- 使用人の退職金800万円(兼務役員期間の使用人部分を含む)、役員の退職金500万円(兼務役員期間の役員部分を含む)
- 役員等勤続年数は兼務役員3年と専任2年の合計5年で、特定役員退職手当等に該当。退職所得控除額は40万円×15年=600万円
- 使用人兼務役員の3年が重複勤続年数にあたるので、特定役員退職所得控除額は40万円×(5年−3年)+20万円×3年=140万円
- 退職所得の金額:(500万円−140万円)+{800万円−(600万円−140万円)}×1/2=530万円
同じ年に短期退職手当等(勤続5年以下の使用人の退職金)も受ける場合は、国税庁が別のページ(コード2741)で計算を示しています。複数の種類が重なる年は、支払う会社と税理士に確認してください。
退職所得の計算を、特定役員退職手当等の3つの計算例とあわせて確認できるページとして、特定役員退職手当等の税の扱い(退職金相場ラボ)もあります。
出典
- 国税庁 タックスアンサー No.2737 役員等の勤続年数が5年以下の者に対する退職手当等(特定役員退職手当等)(定義、役員等の範囲、勤続年数の切り上げ、計算式、計算例3つ。2026-10-14確認)
まとめ
- 役員等勤続年数が5年以下の人が受ける役員期間分の退職金は、1/2課税がなく、控除額を引いた残り全額が退職所得になる。
- 勤続の端数は1年に切り上げるので、4年11か月は該当し、5年1か月は該当しない。
- 使用人から役員になった人や兼務役員は、重複する期間の有無で特定役員退職所得控除額が変わる。
よくある質問
- 特定役員退職手当等とは何ですか?
- 役員等勤続年数が5年以下の人が、その役員としての勤続に対応して受ける退職手当等です。退職所得控除額を引いた残りを2分の1にする措置がありません。
- 役員になって4年11か月で退任すると該当しますか?
- 該当します。1年未満の端数は1年に切り上げるので、役員等勤続年数は5年になります。5年1か月なら6年になり、該当しません。
- 役員退職金500万円、役員の勤続4年9か月の退職所得はいくらですか?
- 国税庁の例では、500万円−(40万円×5年)=300万円です。
- 使用人から役員になった人は、控除額をどう計算しますか?
- 特定役員退職所得控除額は、重複勤続年数がなければ40万円×特定役員等勤続年数、あれば40万円×(特定役員等勤続年数−重複勤続年数)+20万円×重複勤続年数です。

