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役員退職金を支払うときの手続き|損金算入の時期・源泉徴収・退職所得の受給に関する申告書

役員退職金は、決議で金額が確定した事業年度に損金算入するのが原則で、内定した額の未払計上では損金になりません。支払うときは、退職所得の受給に関する申告書の有無で源泉徴収の額が変わり、納付は原則として翌月10日までです。国税庁の公式ページにもとづき、会社側の手続きの順番を整理します。

国税庁の取扱い
編集:個人事業主のお金ラボ編集部(合同会社フューチャープロンプト) / 運営方針・出典

法人の役員が退任するときに会社が支払う退職金は、適正な額であれば損金に算入できます。一方で、いつの事業年度の損金にするか、不相当に高額な部分がないか、支払うときに源泉徴収をどう行うかなど、会社側で押さえる手続きがいくつかあります。この記事では、決議から支払い・源泉徴収までを時系列で整理します。

受け取る側の手取りは役員退職金の手取り計算、代表を退いて退職金を出せるかは分掌変更による役員退職給与、制度の全体像は法人成り後に経費にできるものを参照してください。従業員の退職金を中退共で準備する場合は中退共の加入条件と掛金で扱っています。

損金算入の時期は「金額が確定した事業年度」

役員退職金の損金算入時期は、原則として、株主総会の決議等によって退職金の額が具体的に確定した日の属する事業年度です。ただし、実際に支払った事業年度に損金経理をした場合は、その支払年度の損金にすることも認められます(国税庁 No.5208、法人税基本通達9-2-28)。

注意:退職金の額が確定する事業年度より前に、取締役会で内定した金額を損金経理して未払金に計上しても、その時点の損金には算入できません。
  • 決議の記録:金額を確定させる株主総会の決議は、議事録に残します。作り方は一人株主の議事録を参照してください。
  • 退職年金のとき:退職年金を支給する場合は、その年金を支給すべき事業年度が損金算入時期です。退職時に年金の総額を計算して未払金に計上しても損金になりません(法人税基本通達9-2-29)。

不相当に高額な部分は損金にならない

法人税法34条2項は、役員給与のうち不相当に高額な部分として政令で定める金額を損金に算入しないと定めています。退職給与については、法人税法施行令70条2号が、その役員の業務に従事した期間、退職の事情、事業規模が類似する法人の役員に対する退職給与の支給の状況などに照らして、相当と認められる金額を超える部分を対象にしています。

  • 使用人兼務役員:役員としての退職給与と使用人としての退職給与を合わせた額で、高額かどうかを判断します(法人税基本通達9-2-30)。
  • 分掌変更のとき:実質的に退職したと同様の事情があれば退職給与として扱えますが、代表権が残る場合や、実質的に経営上主要な地位を占める場合は除かれます。支払わずに未払金へ計上しただけの額は、原則として退職給与として支給した給与に含まれません(法人税基本通達9-2-32)。

相当な金額の水準について、公式ページが具体的な計算式や倍率を示しているわけではありません。金額の決め方に不安があるときは、顧問税理士に相談してください。

支払うときの源泉徴収と受給に関する申告書

退職手当等を支払う会社は、所得税を源泉徴収して、徴収した月の翌月10日までに納めるのが原則です(国税庁 No.2732)。給与の支給人員が常時10人未満の会社が「納期の特例」の承認を受けている場合は、給与や退職金から徴収した分を、1〜6月分は7月10日、7〜12月分は翌年1月20日にまとめて納められます(国税庁 No.2505)。徴収する額は、受け取る人が「退職所得の受給に関する申告書」を提出しているかで変わります。

申告書源泉徴収の方法
提出あり退職所得控除額を差し引いた課税退職所得金額にもとづいて源泉徴収する
提出なし支払金額に20.42%の税率を乗じて源泉徴収し、本人が確定申告で精算する
  • 提出の時期:申告書は、退職手当等の支払を受けるときまでに、支払者(会社)へ提出してもらいます。
  • 会社側の保管:支払者は、税務署から特に求められた場合を除いて税務署へは提出せず、保管します。
  • 死亡退職金:相続税の対象になる死亡退職金は、所得税の源泉徴収は不要です。

一人社長が自分に退職金を支払う場合も、会社と本人は別の主体です(この点は編集部の整理です)。会社として申告書を受け取り、源泉徴収と納付を行う形になります。

源泉徴収の計算例(支給額800万円・勤続10年2か月)

申告書の提出があるときの源泉徴収額を、国税庁が示す例と同じ条件で確認します。勤続年数の1年未満の端数は1年に切り上げるため、10年2か月は11年として計算します。

  • 退職所得控除額:40万円×11年=440万円(勤続20年以下の算式)
  • 課税退職所得金額:(800万円−440万円)×1/2=180万円
  • 所得税額:180万円×5%=9万円。復興特別所得税(2.1%)を加えて91,890円(令和8年分までの計算。令和9年分以後は防衛特別所得税が加わると国税庁が案内しています)

この結果は、国税庁 No.2732に示されている同条件の計算例(税額91,890円)と一致します。ここで使った1/2課税は、役員等としての勤続年数が5年超のときの計算です。

受け取る側の退職所得の計算

国税庁 No.1420によると、退職所得の金額は「(収入金額−退職所得控除額)×1/2」で計算します。退職所得控除額は、勤続年数が20年以下なら「40万円×勤続年数」(80万円に満たないときは80万円)、20年を超えるなら「800万円+70万円×(勤続年数−20年)」です。

役員等としての勤続年数が5年以下の人が受ける退職手当等(特定役員退職手当等)には、1/2をかけません。勤続期間が4年11か月なら5年として扱われ該当し、5年1か月なら6年として扱われ該当しません(国税庁 No.2737)。

受け取る側の制度の細部や、小規模企業共済・iDeCoの出口との関係は、共済・iDeCoの受け取りと出口の税金で扱っています。

出典

まとめ

  • 損金算入は、決議で金額が確定した事業年度が原則。内定額の未払計上では損金にならない。
  • 不相当に高額な部分は損金不算入。分掌変更で支払うときは、代表権や経営上の地位が残っていないかを確認する。
  • 支払うときは、受給に関する申告書の有無で源泉徴収額が変わり、納付は原則として翌月10日まで(納期の特例の承認があれば半年分をまとめて納付)。
  • 役員等の勤続年数が5年以下なら、受け取る側は1/2課税にならない。

よくある質問

役員退職金はいつの事業年度の損金になりますか?
原則は、株主総会の決議等で退職金の額が具体的に確定した日の属する事業年度です。実際に支払った事業年度に損金経理をした場合は、その年度の損金にすることも認められます。
決算で退職金の見込み額を未払金に計上すれば、その期の損金になりますか?
なりません。額が具体的に確定する事業年度より前に、取締役会で内定した金額を未払金に計上しても、その時点の損金には算入できません。
退職金を支払うとき、会社は何を源泉徴収しますか?
所得税を源泉徴収し、原則として翌月10日までに納めます(納期の特例の承認があれば、半年分をまとめて7月10日・翌年1月20日に納付)。受給に関する申告書の提出があれば課税退職所得金額にもとづいて計算し、提出がなければ支払金額に20.42%を乗じて徴収します。
退職所得の受給に関する申告書は、税務署へ出しますか?
支払を受けるときまでに支払者である会社へ提出します。会社は、税務署から特に求められた場合を除いて税務署へは提出せず、保管します。
役員を4年で退任すると、退職金の税金はどうなりますか?
役員等としての勤続年数が5年以下の人が受ける退職手当等は特定役員退職手当等にあたり、退職所得控除額を差し引いた残りに1/2をかけません。
本記事について。専門家の監修前の概説です。退職金の相当額の判断や、分掌変更に該当するかどうかは、個別の事情で変わります。実際の決議・支払い・源泉徴収は、顧問税理士または所轄の税務署にご確認ください。