合同会社の持分を譲渡する手続き|承諾の範囲と変更登記
合同会社の社員が持分を他人に譲るときの、誰の承諾が要るか、定款の変更は誰の同意でできるか、変更登記の期限と登録免許税、譲った後の債務の責任を説明します。
会社法合同会社の持分は、株式会社の株式のように自由には売れません。譲るには他の社員の承諾が要り、誰の承諾が要るかは、譲る人が業務を執行する社員かどうかで変わります。
この記事では、譲渡の承諾と定款変更の同意の範囲、変更登記の期限と登録免許税、持分を全部譲った後に残る責任を説明します。
譲渡に必要な承諾
会社法第585条第1項は、社員は他の社員の全員の承諾がなければ、持分の全部または一部を他人に譲渡できないと定めています。合同会社は持分会社の一つなので、この規定が適用されます。
例外が同条第2項にあります。業務を執行しない有限責任社員は、業務を執行する社員の全員の承諾があれば、持分を譲渡できます。合同会社の社員は全員が有限責任社員なので、業務を執行しない社員の持分譲渡は、他の社員全員ではなく、業務執行社員の承諾で足ります。
同条第4項により、これらは定款で別の定めを置くことを妨げません。定款に譲渡の条件が書かれていれば、先にそれを確認してください。
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定款の変更は誰の同意でできるか
社員の氏名や出資の額は定款の記載事項なので、社員が入れ替わると定款の変更が必要になります。原則は、第637条のとおり、定款に別段の定めがなければ総社員の同意です。
第585条第3項は、業務を執行しない有限責任社員の持分譲渡に伴う定款の変更に限り、業務執行社員の全員の同意でできると定めています。
| 譲る人 | 譲渡の承諾 | 定款変更の同意 |
|---|---|---|
| 業務を執行する社員 | 他の社員の全員(第585条第1項) | 総社員(第637条) |
| 業務を執行しない社員 | 業務執行社員の全員(同条第2項) | 業務執行社員の全員(同条第3項) |
いずれも、定款に別段の定めがあればそちらが優先します(第585条第4項、第637条)。
変更登記の期限と登録免許税
合同会社の登記事項には、資本金の額、業務を執行する社員の氏名、会社を代表する社員の氏名と住所などがあります(会社法第914条)。業務を執行しない社員の氏名は、この条文に挙がっていません。
このため、業務を執行しない社員から別の人へ持分が移るだけなら、第914条の事項に変更が生じず、変更登記の対象にならない場合があります。業務執行社員が入れ替わるときは、変更が生じてから2週間以内に、本店の所在地で変更登記をします(第915条第1項)。
法務局の記載例「持分全部譲渡による社員の退社及び加入の場合」は、業務執行社員が持分を全部譲渡して退社し、譲受人が業務執行社員として加入する例です。
- 登記の事由:業務執行社員の退社及び加入。登記すべき事項に、退社した社員と加入した社員の資格、氏名、原因年月日を書きます。
- 登録免許税:1件につき1万円。資本金の額が1億円を超える会社は3万円です。
- 主な添付書面:総社員の同意書。加入した業務執行社員を、定款の定めに基づく互選で代表社員に定めたときは、定款、互選で代表社員を選んだことを証する書面、就任承諾書も付けます。
譲受人が法人の場合や、代理人に申請を任せる場合は、登記事項証明書や委任状が加わります。会社の状況に合う記載例を、法務局のページで確認してください。
持分を全部譲った後の責任
第586条第1項は、持分の全部を他人に譲渡した社員は、譲渡した旨の登記をする前に生じた会社の債務について、従前の責任の範囲内で弁済する責任を負うと定めています。
この責任は、登記から2年以内に請求や請求の予告をしない債権者に対しては、登記から2年を過ぎた時に消滅します(同条第2項)。譲渡した日ではなく、登記の日から数える点に注意してください。登記が遅れると、責任が残る期間も長くなります。
譲渡ではなく死亡のとき
社員が死亡すると、第607条第1項第3号により、社員は退社します。持分は原則として相続人に引き継がれません。
ただし第608条第1項は、社員が死亡した場合に相続人が持分を承継する旨を、定款で定められるとしています。承継させたい場合は、定款の定めが先に必要です。
公式一次情報
- e-Gov法令検索「会社法」第585条・第586条・第607条・第608条・第637条・第914条・第915条(2026-10-18確認)
- 法務局「合同会社(持分全部譲渡による社員の退社及び加入の場合)」記載例(登録免許税と添付書面、2026-10-18確認)
まとめ
合同会社の持分を譲るには、原則として他の社員全員の承諾が要ります。業務を執行しない社員なら、業務執行社員の全員の承諾で譲渡でき、定款の変更も業務執行社員の全員の同意でできます。
業務執行社員が入れ替わるときは、2週間以内に変更登記をし、登録免許税は1万円(資本金1億円超は3万円)です。持分を全部譲った社員の責任は、登記から2年で消えます。
次に知りたいことは、社員を加える手続き、社員の退社の手続き、会社の解散と清算の流れの記事で確認できます。
よくある質問
- 合同会社の持分は自由に売れますか?
- 売れません。社員は、他の社員の全員の承諾がなければ持分を譲渡できません。業務を執行しない社員は、業務執行社員の全員の承諾があれば譲渡できます(会社法第585条)。
- 持分の譲渡で定款の変更は必要ですか?
- 社員が入れ替わると定款の記載が変わるため必要です。原則は総社員の同意で、業務を執行しない社員の持分譲渡に限り、業務執行社員の全員の同意でできます(会社法第585条第3項・第637条)。
- 持分を譲渡すると変更登記は必要ですか?
- 業務執行社員が入れ替わるなど、第914条の登記事項に変更が生じるときは、2週間以内に変更登記をします。業務を執行しない社員の氏名は登記事項に挙がっていません(会社法第914条・第915条)。
- 持分を全部譲った後も会社の借金の責任は残りますか?
- 譲渡の登記をする前に生じた債務については、従前の責任の範囲で弁済する責任が残ります。登記から2年以内に請求や請求の予告がなければ、2年を過ぎた時に消滅します(会社法第586条)。
代表社員の住所が変わったときの登記は、合同会社の代表社員の住所変更登記で扱っています。

