業務委託でも労働者とされるのはどんなとき
契約書の名前が業務委託や請負でも、実態によっては労働基準法の「労働者」とされます。厚生労働省が示す判断基準を、指揮監督の4つの見方、報酬の見方、補強する要素に分けて表で説明します。
労務法人成りのあと、これまで手伝ってもらっていた人と業務委託契約を結ぶ場面があります。契約書に「業務委託」と書いてあれば労働者ではない、とは限りません。
労働基準法上の労働者かどうかは、契約の形式や名称にかかわらず、契約の内容、労務提供の形態、報酬などから、個別の事案ごとに総合的に判断されます(厚生労働省)。この記事は、その判断の見方を整理したものです。
労働者かどうかを分ける2つの基準
労働基準法9条は、労働者を「事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」と定めています。厚生労働省は、これに当たるかを次の2つの基準で判断するとしています。
- 労働が他人の指揮監督下で行われているか(他人に従属して労務を提供しているか)
- 報酬が、その指揮監督下の労働の対価として支払われているか
この2つを合わせて「使用従属性」と呼びます。具体的な判断要素は、昭和60年12月の労働基準法研究会報告にまとめられています。
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指揮監督下の労働かどうかの4つの見方
指揮監督の有無は、諾否の自由、業務遂行上の指揮監督、拘束性、代替性の4点で見ます。研究会報告の記述を表にしました。
| 見方 | 労働者から遠ざかる状態 | 労働者に近づく状態 |
|---|---|---|
| 仕事を断れるか(諾否の自由) | 依頼や指示を断る自由がある。対等な当事者の関係になり、指揮監督関係を否定する重要な要素 | 依頼や指示を断る自由がない。指揮監督関係を推認させる重要な要素 |
| 業務の進め方の指示(業務遂行上の指揮監督) | 通常の注文者が行う程度の指示にとどまる | 業務の内容と進め方について具体的な指揮命令を受けている。基本的で重要な要素 |
| 場所と時間の指定(拘束性) | 業務の性質や安全確保の必要から場所や時間が決まるだけ | 勤務場所と勤務時間が指定され、管理されている。一般的には基本的な要素 |
| 本人に代わる人(代替性) | 本人に代わって他の人が働くことや、自分の判断で補助者を使うことが認められている | 代わりの人が認められていない |
代替性は、指揮監督関係そのものを決める基準ではなく、補強する要素として位置づけられています。
報酬の見方
報酬が時間給、日給、月給のように時間を単位として計算される場合は、使用従属性を補強する重要な要素とされています。成果物の量や完成した仕事に応じた報酬は、この点では労働者から遠ざかります。
報酬の名目が「業務委託料」でも「給与」でも、それだけでは決まりません。何に対して支払われているかという実態で見ます。
労働者性を補強する要素と弱める要素
指揮監督と報酬の2点で決めにくいときは、事業者性と専属性を加えて総合的に判断します。
| 要素 | 労働者性を弱める | 労働者性を補強する |
|---|---|---|
| 機械・器具の負担(事業者性) | 本人が所有する機械や器具が著しく高価で、自分の計算と危険負担で事業をしている | 機械や器具を会社が用意している |
| 報酬の額(事業者性) | 同じ仕事をする正規従業員より著しく高額で、事業者への代金の支払いと認められる | 正規従業員と同程度の水準 |
| 専属性 | 専属性がないこと自体は、労働者性を弱める理由にはならない | 他社の仕事が制度上制約される、時間的余裕がなく事実上難しい、報酬に固定給部分があり生活保障の性格が強い |
報告書には、業務上の損害に対する責任を負うことや、独自の商号の使用が認められていることを、事業者としての性格を補強する要素とした裁判例があることも書かれています。
契約前に見直す点
契約を結ぶ前に、次の点を実態に合わせて確認してください。
- 個々の依頼を断れるか。断った場合に不利益はないか
- 作業の手順や進め方を、発注側が細かく指示していないか
- 勤務場所と勤務時間を、発注側が指定し管理していないか
- 本人の代わりに別の人が仕事をしてよいか
- 報酬は時間単位でなく、成果や仕事の完成に対して決まっているか
- 他社の仕事を受けることを、契約や実際の運用で制限していないか
労働者に当たると判断されるかどうかは、この表のどれか1つで決まるわけではありません。個別の事案は、労働基準監督署や弁護士、社会保険労務士に確認してください。
税務上の給与と外注費の区分は外注費と給与の区分、契約書の作り方は法人成り後の業務委託契約で整理しています。
まとめ
- 労働者かどうかは、契約の名称ではなく実態で総合的に判断される(厚生労働省)
- 基準は「指揮監督下の労働」と「報酬の労務対償性」の2つで、合わせて使用従属性という
- 指揮監督は、諾否の自由、業務遂行上の指揮監督、拘束性、代替性の4点で見る
- 機械・器具の負担や報酬の額(事業者性)、専属性が補強の要素になる
次に読むなら、就業規則の必要記載事項と労働者名簿・賃金台帳の記載事項と保存期間で、人を雇うときの備え付けを確認できます。
公式一次情報
- 厚生労働省「労働基準法における「労働者」とは」(2つの基準、使用従属性、契約の形式にかかわらず実態で総合判断することを掲載。2026-10-25確認)
- 労働基準法研究会報告「労働基準法の「労働者」の判断基準について」(昭和60年12月19日)(諾否の自由、指揮監督、拘束性、代替性、報酬の性格、事業者性、専属性の判断要素を掲載。2026-10-25確認)
よくある質問
- 契約書に「業務委託」と書けば、労働者ではなくなりますか。
- なりません。厚生労働省は、使用従属性の有無を、請負契約や委任契約といった契約の形式や名称にかかわらず、契約の内容、労務提供の形態、報酬その他の要素から個別に総合判断するとしています。
- 仕事を断れれば、労働者ではないといえますか。
- 研究会報告は、依頼や指示に対する諾否の自由があれば、指揮監督関係を否定する重要な要素になるとしています。ただし、これだけで決まるのではなく、ほかの要素と合わせた総合判断です。
- 他社の仕事もしていれば、労働者ではないといえますか。
- 研究会報告は、専属性がないことをもって労働者性を弱めることにはならないとしています。専属性は、判断を補強する要素のひとつという位置づけです。
- 時給で報酬を決めると、労働者とみられやすくなりますか。
- 報酬が時間給、日給、月給など時間を単位として計算される場合は、使用従属性を補強する重要な要素になるとされています。

