法人成りの現物出資|定款の記載・検査役の調査・登記の添付書面
個人事業の機械や車、在庫を資本金として会社に出すときの会社法の手続きです。定款に書かないと効力がないこと、価額が500万円以下なら検査役の調査が不要なこと、設立登記に付ける書面を条文で整理します。
法人成り株式会社を設立するとき、金銭ではなく事業用の機械や車などを出資する「現物出資」は、設立前に定款へ書いておかなければ効力が生じません。出資する財産の価額が合計500万円を超えると、原則として裁判所が選ぶ検査役の調査が必要になります。
定款に書かないと効力がない
会社法28条は、金銭以外の財産を出資する者の氏名、その財産と価額、割り当てる株式の数を、定款に記載または記録しなければ効力を生じないと定めています。
定款は公証人の認証を受けるまで効力がなく、認証後は成立前に原則として変更できません(会社法30条)。現物出資を使うなら、公証人の認証を受ける前に、財産の内容と価額を決めておく必要があります。
| 定款に書く事項 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 出資する人 | 金銭以外の財産を出資する者の氏名 | 会社法28条1号 |
| 財産と価額 | 出資する財産の内容とその価額 | 会社法28条1号 |
| 割り当てる株式 | その人に与える設立時発行株式の数 | 会社法28条1号 |
この記事の内容を申告書に落とすときの本PR
個人から法人に切り替える手続きと、設立後の税金・経理を一冊で確かめたいとき向けです。
検査役の調査が不要になる3つの場合
現物出資は、価額を高く付けると資本金を実態以上に見せられるため、会社法33条は、原則として発起人に裁判所へ検査役の選任を申し立てさせます。ただし33条10項は、次の場合に検査役の調査を不要としています。
| 場合 | 条文の内容 |
|---|---|
| 価額の合計が500万円以下 | 定款に記載した現物出資財産等の価額の総額が500万円を超えない場合(33条10項1号) |
| 市場価格のある有価証券 | 定款の価額が、法務省令の方法で算定した市場価格を超えない場合(同項2号) |
| 専門家の証明 | 価額が相当であることについて弁護士、公認会計士、税理士などの証明を受けた場合。不動産は証明に加えて不動産鑑定士の鑑定評価が必要(同項3号) |
出す財産の価額の合計が500万円以下なら、検査役の調査も専門家の証明も要りません。500万円を超えるときや不動産を出すときは、証明者や鑑定評価の依頼が別に必要です。
証明をする専門家には制限があります。次の人は証明できません(33条11項)。発起人、財産の譲渡人、設立時の取締役、設立時の監査役のほか、業務停止中の専門家などです。
自分の税理士を証明者にするときは、その税理士が発起人や役員でないことが条件です。
価額が足りないときの発起人の責任
会社の成立時に、現物出資の財産の実際の価額が定款に書いた価額に著しく足りないとき、発起人と設立時取締役は、会社に対して連帯して不足額を支払う義務を負います(会社法52条1項)。
検査役の調査を受けた場合は、この義務はありません(同条2項1号)。また、財産を給付した者と財産の譲渡人を除く発起人、および設立時取締役は、職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明すれば、義務を負いません(同項2号)。証明をした専門家も、注意を怠らなかったことを証明できない限り、連帯して責任を負います(同条3項)。
設立後に譲り受ける財産引受け
会社法28条2号は、会社の成立後に譲り受けることを約した財産とその価額、譲渡人の氏名を定款に記載しなければ効力を生じないとしています。これを一般に財産引受けと呼びます。
個人事業の資産を、設立後に会社が買い取る契約を設立前に結ぶ場合が当たります。現物出資と同じく、定款の記載がなければ効力がありません。検査役の調査が不要になる500万円の判定は、現物出資と財産引受けの価額を合計して行います(33条10項1号)。
個人から会社への資産の移し方(現物出資・売買・賃貸)の税金の違いは、個人事業から法人への資産引継ぎと引き継ぐときの会計処理で整理しています。
設立登記に付ける書面
定款に現物出資などの記載があるときは、設立登記の申請書に、商業登記法47条2項3号・4号の書面を付けます。
| 場面 | 付ける書面 |
|---|---|
| 検査役を選任したとき | 検査役の調査報告を記載した書面とその附属書類。検査役の報告に関する裁判があれば謄本 |
| 検査役の調査が不要で、設立時取締役が調査したとき | 設立時取締役(監査役設置会社は設立時監査役も)の調査報告を記載した書面とその附属書類 |
| 有価証券を出すとき | 有価証券の市場価格を証する書面 |
| 専門家の証明を受けたとき | 証明を記載した書面とその附属書類 |
出資の履行も確認が必要です。発起人は、出資に係る金銭以外の財産の全部を遅滞なく給付します(会社法34条1項)。登記や登録が必要な財産は、発起人全員の同意があれば、会社の成立後に移転の登記をしても構いません。
合同会社の場合
合同会社は、定款に社員の出資の目的とその価額または評価の標準を記載します(会社法576条1項6号)。有限責任社員の出資の目的は、金銭等に限られます。
出資は、設立の登記をするまでに、金銭の全額の払込みまたは金銭以外の財産の全部の給付が必要です(会社法578条)。登記や登録が必要な財産の移転は、社員になろうとする全員の同意があれば、成立後にできます。
次に知りたいこと
まとめ
- 現物出資は、設立前に定款へ財産・価額・割り当てる株式数を書かなければ効力がない(会社法28条1号)。
- 定款は公証人の認証後、成立前は原則変更できない(会社法30条2項)。
- 価額の総額が500万円以下なら、検査役の調査は不要(会社法33条10項1号)。
- 価額が著しく足りないと、発起人と設立時取締役が不足額を支払う義務を負う(会社法52条1項)。
- 設立登記には、調査報告や専門家の証明などの書面を付ける(商業登記法47条2項3号)。
よくある質問
- 現物出資の価額が500万円を超えると、必ず検査役が必要ですか?
- 必ずではありません。弁護士、公認会計士、税理士などから価額が相当であるとの証明を受ければ、検査役の調査は不要になります。不動産は証明に加えて不動産鑑定士の鑑定評価が必要です(会社法33条10項3号)。
- 設立後に現物出資を決めることはできますか?
- 設立時の現物出資は、公証人の認証を受ける定款に記載する必要があります(会社法28条・30条)。設立後に財産を会社へ移す場合は、設立後の増資や売買など別の手続きになります。
- 現物出資をした財産の名義変更は、会社の成立前にしなければなりませんか?
- 財産の給付は、株式の引受け後、遅滞なく行います。ただし、登記や登録が必要な財産は、発起人全員の同意があれば、移転の登記や登録を会社の成立後にできます(会社法34条1項ただし書)。
- 自分の税理士に価額の証明を頼めますか?
- 税理士は証明者になれます。ただし、その税理士が発起人や設立時の取締役・監査役である場合は証明できません(会社法33条11項)。

