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個人事業から法人へ引き継ぐときの会計処理|廃業時の整理・開始仕訳・現物出資と売買の違い

個人側の廃業時の整理と、法人側の開始仕訳を、現物出資と売買に分けて整理します。法令の条文で確かめられる範囲だけを書きます。

法令の条文で照合
編集:個人事業主のお金ラボ編集部(合同会社フューチャープロンプト) / 運営方針・出典

個人事業から法人へ事業用の資産を移すとき、帳簿では「個人の側で何を整理するか」と「法人の側で最初にどう記帳するか」の2つが必要です。移し方が現物出資か売買かで、法人の開始仕訳も変わります。

仕訳の形は簿記の一般的な整理で、税務署が様式を定めたものではありません。ここでは、金額の根拠になる条文(会社法・会社計算規則・法人税法施行令・所得税法)に当たれる部分を確かめて書いています。資産を移す方法そのものの選び方と税金は、個人事業から法人への資産引継ぎで解説しています。

個人側と法人側でやること

場面やること根拠
個人側事業の廃止の届出、青色申告の効力の確認、消費税の事業廃止届出書、廃業後に出た経費の扱いの確認所得税法229条・151条・63条、消費税法57条
法人側(現物出資)受け取った資産を、給付の日の価額で資産に計上し、同額を資本金にする会社法445条、会社計算規則43条
法人側(売買)購入代価で資産に計上し、代金は未払金などで処理する法人税法施行令54条

個人側:廃業時の整理

個人事業を法人に引き継ぐと、個人としての事業はやめることになります。条文で確かめられる整理は次の4つです。

  • 事業の廃止の届出。事業所得を生ずべき事業を廃止した場合は、届出書を、その事実があった日の属する年分の所得税の確定申告期限までに税務署長へ出します(所得税法229条)。
  • 青色申告の効力。青色申告の承認を受けている人が業務の全部を譲渡または廃止したときは、その日の属する年の翌年分以後、承認は効力を失います(所得税法151条2項)。同じ人が個人で事業を続ける場合などは、別の扱いになります。
  • 消費税の事業廃止届出書。消費税の納税義務がある個人事業者が事業を廃止した場合は、届出書を速やかに税務署長へ出します(消費税法57条1項3号)。免税事業者は対象外です。
  • 廃業後に出た経費。事業を廃止した後に、その事業に係る費用や損失が出たときは、政令で定めるところにより、廃止した日の属する年分(その年に総収入金額がなければ、総収入金額があった最近の年分)またはその前年分の必要経費に算入します(所得税法63条)。

売掛金・買掛金・在庫・借入金など、残高をどちらに残すかは、契約の相手方との取り決め次第です。借入金の扱いは個人名義の借入金はどうなる、届出の全体像は開業届の出し方と法人成りの手順ガイドで確認できます。

法人側:現物出資の開始仕訳

株式会社の資本金の額は、原則として、設立のときに株主となる人が会社に払込みまたは給付をした財産の額です(会社法445条1項)。そのうち2分の1までは資本金に計上せず、資本準備金にできます(同条2項・3項)。

金銭以外の財産(現物出資財産)を受け取った場合、その額は給付があった日における価額が原則です。帳簿価額が使われる例外もあり、現物出資財産について定款に定めた額と帳簿価額が同じでなければならないわけではありません(会社計算規則43条1項2号・5項)。

例として、車両(個人の帳簿価額60万円、給付の日の価額100万円)と現金100万円を出資して、資本金200万円の会社を設立したとします。資本金の全額を資本金に計上する場合の仕訳は次の形です。

借方金額貸方金額
現金預金1,000,000円資本金2,000,000円
車両運搬具1,000,000円

この例では、車両は帳簿価額の60万円ではなく、給付の日の価額100万円で計上しています。

現物出資では、検査役の調査が必要かどうかの確認もあります。現物出資財産の価額の総額が500万円以下なら調査は不要です(会社法33条10項。詳しくは資産引継ぎの解説)。

法人側:売買の仕訳

個人から法人へ売る場合、法人にとっては購入です。減価償却資産の取得価額は、購入の代価に、引取運賃・購入手数料など購入のために要した費用と、事業の用に供するために直接要した費用を加えた額です(法人税法施行令54条1項1号)。

例として、先ほどの車両を100万円で売買し、代金は後日支払うとします。

借方金額貸方金額
車両運搬具1,000,000円未払金(個人への代金)1,000,000円

代金を会社の預金から支払ったときは、借方に未払金、貸方に預金を記帳します。売買の場合は資本金が増えず、会社の資金から個人へ代金が出ていく点が現物出資と違います。

個人から現物出資を受けた場合の取得価額は、法人間の適格現物出資(現物出資をする側が法人で、完全支配関係などがある場合。法人税法2条12号の14)に当たらないため、「取得の時における当該資産の取得のために通常要する価額」に事業の用に供するために直接要した費用を加えた額と整理できます(法人税法施行令54条1項6号)。実際の適用は、資産の種類と状況によるため、税理士への確認をおすすめします。

現物出資と売買の違い

項目現物出資売買
法人側の貸方資本金(一部は資本準備金にできる)未払金・預金など
会社の資金の動き資産を受け取るだけで、会社から資金は出ない代金の支払いで会社の資金が出る
法人側の資産の計上額給付の日の価額が原則(会社計算規則43条)購入の代価+付随費用(法人税法施行令54条)
個人側の課税資産によって譲渡所得などの対象。法人への時価の2分の1未満の対価での譲渡は時価で譲渡したものとみなされる(所得税法59条、同施行令169条)同左
消費税課税標準は取得する株式の時価譲渡の対価

個人側の課税と消費税の詳しい扱いは資産引継ぎの解説で整理しています。会社の資本金の決め方は資本金の決め方、引き継いだ資産の償却方法の届出は減価償却資産の償却方法の届出書が関わります。

公式一次情報

よくある質問

個人事業から法人へ現物出資するときの開始仕訳はどうなりますか?
受け取った資産を借方に、資本金を貸方に記帳するのが基本の形です。資産の額は給付の日における価額が原則で、資本金に計上する額は払込みまたは給付をした財産の額です。2分の1までは資本準備金にもできます。
個人の帳簿価額のまま法人に引き継げますか?
会社計算規則43条は、現物出資財産の額を給付の日における価額としています。帳簿価額を使うのは共通支配下関係など一定の例外です。法人への低額譲渡は、個人側で時価での譲渡とみなされる場合もあります。
売買で引き継ぐと、法人の資産の額は何で決まりますか?
購入の代価に、引取運賃・購入手数料などの付随費用と、事業の用に供するために直接要した費用を加えた額が取得価額です(法人税法施行令54条1項1号)。
廃業後に出た経費は、個人の確定申告に入れられますか?
事業を廃止した後に、その事業に係る費用や損失が出たときは、廃止した日の属する年分などの必要経費に算入する特例があります(所得税法63条)。具体的な年分と金額は、政令の定めと状況で決まります。
本記事について。税理士監修前の概説です。仕訳の形は一般的な簿記の整理で、個別の資産・金額・契約によって処理は変わります。実際の記帳と申告は税理士に確認してください。