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法人成りで在庫・設備・車を会社へ売るときの消費税

個人事業の資産を新しい会社へ売ると、個人側では課税売上になり、会社側では仕入税額控除を受けられるかが分かれます。個人と会社それぞれの扱いを、消費税法の条文で整理します。

消費税法の整理
編集:個人事業主のお金ラボ編集部 / 運営方針・出典

法人成りでは、個人で使っていた在庫、パソコンなどの設備、事業用の車を、新しい会社へ引き継ぐ場面があります。時価で会社へ売る形にしたとき、消費税はどちらに、どれだけかかるのでしょうか。

この記事は、売る側(個人)と買う側(会社)の二つに分けて、消費税法の条文から分かる範囲を整理します。移し方の選び方(売買・現物出資・賃貸)全体は個人事業から法人への資産引継ぎにまとめています。

会社へ売る取引は消費税の課税対象

身内の会社への売却でも、通常の売却と同じ扱いです:消費税法4条1項は、国内で事業者が行った資産の譲渡等を課税の対象にしています。買い手が自分の会社でも、事業として対価を得て資産を売る取引なら課税対象になります。

課税標準(税のかかる金額)は、消費税法28条1項で「対価として収受し、または収受すべき一切の金銭または金銭以外の物もしくは権利その他経済的な利益の額」とされています。会社から受け取る売却代金が、そのまま基準になります。

ただし、売るものがすべて課税になるわけではありません。土地のように、消費税法6条で非課税とされる資産の譲渡には消費税がかかりません。

車、パソコン、棚卸資産(在庫)などは、通常は課税の対象です。課税・非課税の区分は消費税の課税・非課税・不課税・免税の違いで確認できます。

なお、金額を著しく低くした譲渡には別の論点があります。消費税法28条1項のただし書は、法人が役員に資産を譲渡して対価が時価に比べて著しく低い場合に時価を対価とみなす定めで、会社が売り手になる取引の規定です。

個人が会社へ売る取引は、この定めの直接の対象ではありません。詳しくは自家消費・役員への贈与と低額譲渡の消費税で整理しています。

売る個人の側で確認すること

個人が会社へ資産を売った年の消費税は、個人が課税事業者かどうかで変わります。

  • 免税事業者の場合:消費税法9条1項により、基準期間(個人は前々年)の課税売上高が1,000万円以下の事業者(適格請求書発行事業者を除く)は、その課税期間の納税義務が免除されます。売却代金に消費税相当額が含まれていても、納める義務はありません。
  • 課税事業者の場合:売却した資産の対価は、その年の課税売上に加わります。本則課税なのか簡易課税なのかで、計算の仕方が変わります。方式の違いは簡易課税と本則課税の違いで説明しています。
  • インボイス登録をしている場合:9条1項のかっこ書きのとおり、適格請求書発行事業者は免税の対象から外れます。売上が小さくても、登録していれば課税事業者として申告します。

法人成りで個人事業をやめるときは、課税事業者だった人は消費税の事業廃止届出書を速やかに出します(消費税法57条1項3号)。廃業した年の申告の流れは個人事業を廃業した年の消費税で説明しています。会社へ売らず手元に残した車などは、廃業時に家事のために使うものとみなされ、課税される場合があります(消費税法4条5項1号)。

買う会社の側で確認すること

会社が個人から買った資産の消費税を、仕入税額控除として差し引けるかどうかは、会社が免税事業者かどうかで決まります。

会社が免税事業者のあいだは、仕入れの消費税を控除できません:消費税法30条1項は、仕入税額控除の対象を「9条1項本文により納税義務が免除される事業者を除く」事業者としています。設立したばかりの会社が免税になるなら、個人から買った設備の消費税は控除できません。

設立した会社が課税事業者かどうかは、資本金で分かれます。

  • 資本金1,000万円以上の会社:消費税法12条の2が定める新設法人に当たり、基準期間がない設立1期目から納税義務が免除されません。個人から買った資産の消費税を控除できる立場になります。
  • 資本金1,000万円未満の会社:基準期間がないため、原則として設立1期目は免税です。ただし、特定新規設立法人(12条の3)などの例外があり、全員が免税になるとは限りません。
  • 免税の会社が控除を受けたいとき:9条4項の届出書(課税事業者選択届出書)を出すと、課税事業者になれます。出す時期や、出したあとの縛りは消費税課税事業者届出書で整理しています。

設立後に資本金や免税の見通しを組み立てる流れは、法人成りの消費税の免税期間で説明しています。

在庫については、免税期間中に仕入れた棚卸資産を課税事業者になってから使う場合の調整があります。棚卸資産の消費税調整を併せて確認してください。

個人と会社の状況別の整理

個人会社起きること
免税事業者課税事業者個人は納税義務なし。会社は仕入税額控除を検討できる
免税事業者免税事業者個人も会社も消費税の納付なし。会社は控除を受けられない
課税事業者課税事業者個人は売却額を課税売上に含めて申告。会社は仕入税額控除を検討できる
課税事業者免税事業者個人は売却額を申告。会社は控除を受けられず、その分の税負担が残る

表のとおり、個人が課税事業者で会社が免税の組み合わせでは、個人は納め、会社は引けないという形になります。資本金や課税事業者の選択を決める前に、売却する資産の金額を一覧にしておくと見通しが立ちます。

確認の順番

  1. 売る資産を課税・非課税に分ける。土地などの非課税資産と、車・設備・在庫の課税資産を分けます。
  2. 個人が課税事業者かを確認する。基準期間の売上と、インボイス登録の有無を見ます。
  3. 会社の資本金と課税事業者の見通しを決める。1,000万円以上か未満か、選択届出書を出すかを決めます。
  4. 個人の事業廃止届出書を出す。課税事業者だった場合は速やかに提出します。
  5. 売却額の根拠を残す。売買契約書と、時価の考え方を書面にしておきます。

売却額の決め方は所得税や法人税の論点でもあります。金額を決める前に、税務署または税理士へ確認してください。

次に知りたいこと

公式情報

まとめ

  • 自分の会社への売却でも、事業用の資産を対価を得て売る取引は消費税の課税対象になる。土地などの非課税資産は除く。
  • 個人は、免税事業者なら納税義務がなく、課税事業者なら売却額を課税売上に含めて申告する。
  • 会社が免税事業者のあいだは、仕入税額控除を受けられない。資本金1,000万円以上の新設法人は1期目から課税事業者になる。
  • 個人が課税事業者だった場合の廃業時には、事業廃止届出書を速やかに出す。

よくある質問

自分の会社に事業用の車を売ると、消費税はかかりますか?
事業として対価を得て行う資産の譲渡なので、課税対象です。ただし売る個人が免税事業者なら、納める義務はありません(出典:消費税法4条1項・9条1項)。
個人から買った設備の消費税を、会社は引けますか?
会社が課税事業者であれば仕入税額控除の対象になります。免税事業者のあいだは控除できません(出典:消費税法30条1項)。
土地を会社へ売るときも消費税がかかりますか?
土地の譲渡は消費税法6条の非課税に当たり、消費税はかかりません。建物や設備は別に判断します(出典:消費税法6条・別表第二)。
資本金はいくらにすれば免税になりますか?
資本金1,000万円以上なら新設法人として1期目から課税事業者になります。1,000万円未満は原則免税ですが、特定新規設立法人などの例外があります(出典:消費税法12条の2・12条の3)。
本記事について。税理士監修前の概説です。資産の売却額や会社の設立時期によって消費税の扱いは変わるため、実際の手続きの前に税務署または税理士へ確認してください。