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個人事業を廃業した年の消費税の届出・申告・みなし譲渡

消費税の課税事業者だった個人事業主が廃業するときに必要な届出書、廃業した年の消費税の申告、車などを手放さずに持ち続けた場合の課税が、押さえるポイントです。

国税庁の制度
編集:個人事業主のお金ラボ編集部 / 運営方針・出典

個人事業をやめるときは、税務署に廃業届を出せば終わりと思いがちです。しかし消費税の課税事業者だった場合は、廃業届とは別に「事業廃止届出書」を出し、廃業した年の消費税も申告します。

さらに、事業で使っていた車などを廃業後も手元に残すと、その資産を売ったものとみなして消費税がかかります。

対象になるのは課税事業者だけ

免税事業者は、消費税の廃業手続きが要りません:消費税法57条1項3号は、事業廃止の届出の対象から納税義務が免除される事業者を除いています。届出書を出すのは、課税事業者として申告していた人です。

課税事業者になるのは、基準期間(個人は前々年)の課税売上高が1,000万円を超えた年や、課税事業者を選んだ年、インボイスの登録を受けている年などです。自分がどれに当たるか分からないときは、個人事業主の消費税はいつから・いくら?で判定の順序を確認してください。

インボイスの登録を受けている人は、売上が小さくても納税義務が免除されません。小さな副業を廃業する場合でも、登録していれば届出書の対象になる点に注意します。

廃業のときに出す消費税の届出書

国税庁No.6603は、個人事業者が事業を廃止した場合に必要な消費税の届出書を次のように示しています。提出期限は、どれも「事由が生じた場合速やかに」です。

開業・廃業等届出書にある「事業廃止届出書」の有無の欄は、廃業届の書き方で説明しています。

届出書出す人
事業廃止届出書課税事業者、または適格請求書発行事業者が事業を廃止した場合
消費税課税事業者選択不適用届出書課税事業者を選択している事業者が事業を廃止した場合
消費税簡易課税制度選択不適用届出書簡易課税制度を選択している事業者が事業を廃止した場合
消費税課税期間特例選択不適用届出書課税期間の特例を選択している事業者が事業を廃止した場合
任意の中間申告書を提出することの取りやめ届出書任意の中間申告制度を適用している事業者が事業を廃止した場合

これらを全部出す必要はありません。国税庁の注記によると、不適用届出書などのどれかに事業を廃止した旨を書いて出せば、ほかの不適用届出書と事業廃止届出書も出したものとして扱われます。逆に、事業廃止届出書を出せば、不適用届出書も出したものとして扱われます。

インボイスの登録も、事業をやめるなら登録の取消しを求める届出書ではなく、事業廃止届出書を出します(国税庁No.6603。事業を続けたまま登録だけやめる場合は登録取消届出書の期限、亡くなった場合は個人事業主が亡くなったときの消費税を参照)。所得税の廃業届(個人事業の開業・廃業等届出書)とは別の書類なので、個人事業主の廃業の届出一覧とあわせて出し忘れを防ぎます。

廃業した年の消費税の申告

課税事業者に当たる個人事業者が事業を廃止した場合は、廃止の日の属する課税期間の消費税の申告が必要です。中間申告をしている場合は、中間申告も含みます(国税庁No.6603)。

個人事業者の課税期間は原則として1月1日から12月31日です。たとえば2026年6月に廃業した人は、2026年分の消費税を、2026年1月から6月までの取引にもとづいて申告します。

個人の確定申告の期限は原則として翌年3月31日です。詳しくは消費税の確定申告の期限で整理しています。

課税期間の特例(3か月や1か月への短縮)を選んでいた場合は、課税期間の区切りが変わるため、その区切りで申告します。特例の届出は消費税の課税期間の特例で説明しています。

中間申告の期限前に廃業した場合

国税庁No.6609によると、廃業した年の中間申告書の提出期限前であれば、前年の確定税額にもとづく金額ではなく、仮決算にもとづいて中間申告の税額を計算して申告・納付できます。所得税の予定納税額の減額申請のような手続はありません。

中間申告で納めた税額は、確定申告のときに差し引かれます。引ききれない分は還付されます。個人の中間納付の仕組みは消費税の中間納付に書いています。

事業用資産を残すと「みなし譲渡」になる

廃業すると、事業で使っていた車や機器は事業用ではなくなります。消費税法4条5項1号は、個人事業者が事業用の資産を家事のために消費し、または使用した場合を、事業として対価を得て行った資産の譲渡とみなすと定めています。

国税庁No.6603は、廃業で事業用資産に当たらなくなった車両などを、廃業の時点で家事のために消費・使用したものとして扱うと説明しています。非課税取引に当たるものでなければ、消費税の課税対象です。

  • 手放したり売ったりしなくても、廃業後も自分で使い続ければ課税対象になる。
  • 課税標準額に含める金額は、廃業の時の通常売買される価額(時価)。
  • 国税庁は、一般的にはその資産の未償却残高とすることができるとしている。
  • その金額は、廃業した日の属する課税期間の課税標準額に含める。

土地のように、消費税が非課税の資産はみなし譲渡の対象になりません。非課税の範囲は消費税の課税・非課税・不課税・免税の違いで確認できます。

個人事業を法人に引き継ぐ法人成りの場合は、資産の移し方(現物出資・売買・賃貸)によって扱いが変わります。そちらは個人事業から法人への資産引継ぎで説明しています。

みなし譲渡の計算例

国税庁No.6603の考え方にそって、仮の数字で流れを確かめます。実際の金額は時価や事業の状況で変わるため、あくまで目安です。

項目金額
廃業時点で手元に残す事業用の車の未償却残高(時価の代わりとして使う額)60万円
廃業した年の課税標準額に加える額60万円
消費税額の目安(税率10%=国税7.8%+地方消費税2.2%)約6万円

この6万円は、廃業した年のほかの売上にかかる消費税と合わせて計算されます。

本則課税では、同じ年の課税仕入れにかかる消費税を差し引けます。簡易課税を選んでいる場合は、みなし仕入率を使った計算になります。どちらの方式になるかは簡易課税と本則課税の違いで整理しています。

事業の売上が小さい年でも、残す資産の額が大きいとその年の納税額が増えることがあります。廃業の時期を決める前に、手元に残す資産の一覧を作っておくと見通しが立ちます。

廃業時の確認手順

  1. 課税事業者かどうかを確認する。基準期間の売上、選択届出書、インボイス登録の有無を見ます。
  2. 事業廃止届出書を出す。廃業の事実が生じたら、速やかに所轄の税務署へ出します。
  3. 手元に残す資産を洗い出す。車、機器、備品などの未償却残高を、廃業日の時点で確認します。
  4. 廃業日の属する課税期間の申告をする。個人の場合の期限は原則として翌年3月31日で、みなし譲渡の金額も加えます。
  5. 所得税の廃業届も出す。こちらは別の書類です。

事業を子や配偶者へ引き継ぐ場合の届出は、個人事業を子・配偶者へ引き継ぐ手続きで整理しています。

次に知りたいこと

廃業した年の所得税・住民税の目安は確定申告の税額試算で確かめられます。

公式情報

まとめ

  • 課税事業者だった個人事業主は、廃業のときに消費税の事業廃止届出書を速やかに出す。
  • 不適用届出書のどれかに廃止を書いて出せば、ほかの届出書も出したものとして扱われる。
  • 廃止の日の属する課税期間の消費税は、廃業しても申告が必要。
  • 事業用の車などを手元に残すと、みなし譲渡として課税標準額に含まれる。国税庁は未償却残高を目安にできるとしている。

よくある質問

廃業届を出せば、消費税の手続きも終わりますか?
終わりません。廃業届は所得税の届出です。消費税の課税事業者だった人は、別に事業廃止届出書を出し、廃業した年の消費税の申告も必要です(出典:国税庁No.6603)。
免税事業者だった場合、事業廃止届出書は必要ですか?
消費税法57条1項3号は、納税義務が免除される事業者を事業廃止の届出の対象から除いています。ただしインボイスの登録を受けていた場合は、事業廃止届出書で登録を取り消します(出典:消費税法57条、国税庁No.6603)。
廃業後も車を使い続けると、消費税がかかりますか?
非課税の資産でなければ、廃業時に家事のために消費・使用したものとして、事業として譲渡したものとみなされます。課税標準額に含める金額は時価で、一般的には未償却残高とすることができます(出典:国税庁No.6603)。
本記事について。税理士監修前の概説です。廃業時の消費税は事業の状況や資産の内容で変わるため、手続きの前に税務署または税理士へ確認してください。

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