廃業した年の減価償却費の月割り計算|事業に使うのをやめた日までの月数
個人事業を年の途中でやめた年は、パソコンや車などの減価償却費を1年分では計上しません。所得税法施行令132条は、事業の用以外に使い始めた日までの月数で計算し、1か月に満たない端数を1か月とすると定めています。計算の流れと設例を整理します。
e-Govの条文で確認済み事業用に使っていた資産を、廃業して自宅用などに戻すと、その日以後は事業の費用にできません。そのため廃業した年の減価償却費は、1月1日から事業の用以外に使い始めた日までの月数で按分した額になります(所得税法施行令132条1項2号)。
減価償却の基本は減価償却の基本にまとめています。この記事は、廃業した年に絞った月割りの計算です。
月割りになる条文と計算の式
減価償却費は、その年の12月31日に有している減価償却資産について、必要経費に算入します(所得税法49条1項)。年の途中で資産を事業の用以外に使い始めた場合、定額法・定率法などを採用している資産の償却費は、次の式で計算します(所得税法施行令132条1項2号イ)。
月数は暦に従って数え、1か月に満たない端数は1か月として数えます(同条2項)。その年に取得して事業に使い始めた資産は、1月1日の代わりに事業に使い始めた日から数えます(同条1項2号イのかっこ書き)。
「通常の1年分の償却費」とは、施行令131条の規定で計算した、その年分の償却費の額です。採用している償却の方法(定額法・定率法など)によって金額が変わります。
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計算例(9月15日に自宅用へ戻したパソコン)
数字で見ます(架空の設例。前年までに取得した資産で、通常の1年分の償却費が12万円とします)。
| 事業の用以外に使い始めた日 | 1月1日からの期間 | 月数(端数は1か月) | 廃業した年の償却費 |
|---|---|---|---|
| 6月30日 | 6か月ちょうど | 6か月 | 12万円÷12×6=6万円 |
| 9月15日 | 8か月と15日 | 9か月 | 12万円÷12×9=9万円 |
| (12月31日まで事業に使った) | 12か月 | 12か月 | 12万円(月割りで減らない) |
9月15日の例では、8か月と15日の端数が1か月に切り上がり、9か月分の9万円を必要経費にします。事務所に置いたまま12月31日まで事業に使っていた資産は、この特例の対象ではなく、1年分をそのまま計上します。
月割りの対象外になる場合・繰延資産の場合
施行令132条1項2号は、償却の方法が「旧定額法、旧定率法、定額法、定率法、取替法」の資産は月数で按分し、生産高比例法などの資産は採掘数量等で按分すると分けています。普通の事業用資産は前者です。
開業費などの繰延資産は、施行令137条1項1号で、繰延資産の額を60で除し、その年に事業を行っていた期間の月数を乗じて計算します。この月数も、1か月に満たない端数は1か月です(同条2項)。廃業した年は、事業をやめた日までの月数になります。
年の途中で死亡または出国した場合の月数の数え方は、施行令132条1項3号に別の定めがあります。この記事の対象は廃業です。
売却・廃棄した資産は別の整理になる
所得税法49条1項は、その年の12月31日に有している資産の償却費を定めています。廃業の年に売却や廃棄で手元から離れた資産は、償却費ではなく別の規定で整理します。廃棄・除却の損失は所得税法51条1項(資産損失の必要経費算入)、事業の廃止に伴う消費税は廃業した年の消費税が関係します。
除却の税務は固定資産の除却の税務で整理しています。個別の資産の扱いは、所轄の税務署や税理士に確認してください。
次に知りたいこと
減価償却の基本:定額法・定率法と償却率
廃業した年の青色申告特別控除:月割りになるかと申告期限
固定資産の除却の税務:個人は必要経費、法人は除却損
個人事業主の廃業:廃業時に必要な手続きの全体像
よくある質問
- 廃業した年の減価償却費は、1年分を計上できますか?
- 12月31日まで事業に使っていた資産なら、1年分を計上します。年の途中で事業の用以外に使い始めた資産は、1月1日からその日までの月数で按分します(所得税法施行令132条1項2号)。
- 月数の端数はどう数えますか?
- 暦に従って数え、1か月に満たない端数は1か月とします(同条2項)。9月15日までなら、8か月と15日で9か月です。
- 廃業のときに開業費が残っていたらどうなりますか?
- 繰延資産の償却費は、繰延資産の額を60で除し、その年に事業を行っていた期間の月数を乗じて計算します(施行令137条1項1号)。廃業した年は、事業をやめた日までの月数になります。
- 売却した資産の償却費は計上しますか?
- 償却費の規定(所得税法49条1項)は、その年の12月31日に有している資産が対象です。売却・廃棄した資産の扱いは別の整理になりますので、所轄の税務署や税理士に確認してください。
廃業のタイミングで手取りを比べる
年内に廃業する場合と年明けにする場合で、申告が1年分で済むか2年分になるか、手取りがどう変わるかを試算できます。
公式情報
- e-Gov法令検索「所得税法施行令」(第131条 減価償却資産の償却費の計算、第132条 年の中途で業務の用に供した減価償却資産等の償却費の特例、第137条 繰延資産の償却費の計算)
- e-Gov法令検索「所得税法」(第49条 減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法、第51条 資産損失の必要経費算入)

