個人事業主が亡くなったときの消費税(申告期限・相続人の納税義務)
消費税の課税事業者だった個人事業主が亡くなったとき、相続人が行う手続を整理します。死亡した人の消費税の申告は、相続の開始を知った日の翌日から4か月以内です。事業を引き継ぐ相続人の納税義務の判定と、インボイスの登録がどうなるかも、条文と国税庁の案内で確認します。
消費税・相続個人事業主が亡くなると、所得税だけでなく消費税の手続も相続人に引き継がれます。所得税の準確定申告は知られていますが、消費税にも同じ考え方の申告があり、期限も同じ4か月です。
消費税の申告は相続の開始を知った日の翌日から4か月以内、事業を引き継ぐ相続人は新たに届出や登録申請をする、というのが手続の骨組みです。被相続人の簡易課税などの選択は、相続人には引き継がれません。
亡くなった人の消費税の申告期限
消費税法45条は、個人事業者が課税期間の途中で亡くなり、その課税期間分の申告が必要な場合は、相続人が申告書を出すと定めています(同条3項)。期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月を経過した日の前日です。
前年分の申告書を出さないまま亡くなった場合も、期限は同じ4か月です(同条2項)。納付は申告書の提出期限までに行います(同法49条)。
申告が必要かどうかは、亡くなった人が免税事業者だったかどうかで変わります。免税事業者だった場合は、通常は申告の義務がありません。基準期間の課税売上高や課税事業者選択の有無は、課税売上高が1,000万円を超えたときで確認できます。
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相続人が出す届出(死亡届出書)
消費税法57条1項4号は、免税事業者を除く個人事業者が亡くなったとき、相続人が届出書を提出するとしています。国税庁の手続案内では「個人事業者の死亡届出書」という様式です。
インボイスの登録を受けていた人が亡くなった場合は、別の根拠(同法57条の3第1項)で、相続人が「適格請求書発行事業者の死亡届出書」を出します。登録の有無で届出書が異なるため、亡くなった人がどちらだったかを先に確認します。
事業を引き継いだ相続人の納税義務
国税庁タックスアンサーNo.6602によると、免税事業者の相続人が被相続人の事業を引き継いだ場合の納税義務は、次のように決まります。
| 時期 | 1,000万円を超える場合 | 1,000万円以下の場合 |
|---|---|---|
| 相続があった年 | 被相続人の基準期間の課税売上高が超えるとき、相続の翌日から12月31日まで免税されない | その年の納税義務は免除される |
| 相続があった年の翌年・翌々年 | 被相続人と相続人の基準期間の課税売上高の合計が超えるとき、免税されない | その年の納税義務は免除される |
どちらも、適格請求書発行事業者だった人の事業を引き継いだ場合は、この表とは別に、後述のみなし登録の期間の取扱いがあります。
相続人が複数いて、遺産分割がまだ終わっていないときは、各相続人が共同で事業を引き継いだものとして扱います。この場合、被相続人の基準期間の課税売上高に、民法上の相続分の割合をかけた額が、各相続人の課税売上高として判定されます(タックスアンサーNo.6602の注)。
簡易課税などの選択は引き継がれない
被相続人が出していた次の3つの届出書は、効力が相続人には及びません。
- 消費税課税事業者選択届出書
- 消費税課税期間特例選択届出書
- 消費税簡易課税制度選択届出書
相続人が同じ制度を使いたいときは、相続人が新たに届出書を出す必要があります(タックスアンサーNo.6602)。簡易課税を使う前提で資金計画を立てていた場合は、届出の期限に注意が必要です。
インボイスの登録はどうなるか
亡くなった人の登録は、相続人が死亡の届出書を出せば、届出書を提出した日の翌日に失効します。届出がなくても、死亡した日の翌日から4か月を経過した日に失効します。2つのうち早い日です(消費税法57条の3第2項)。
相続人が自分では登録を受けていない場合は、みなし登録の制度があります。相続の日の翌日から、相続人が登録を受けた日の前日、または死亡日の翌日から4か月を経過する日の、いずれか早い日までは、相続人を適格請求書発行事業者とみなします(同条3項)。この期間は被相続人の登録番号が相続人の登録番号とみなされます。
4か月を過ぎても事業を続けてインボイスを出したいときは、相続人が新たに「適格請求書発行事業者の登録申請書」を出して登録を受ける必要があります。登録の手順はインボイスの登録方法、登録をやめる場合の期限はインボイス登録をやめる手続きと提出期限で確認できます。
まとめ
- 亡くなった人の消費税の申告は、相続人が相続の開始を知った日の翌日から4か月以内に行う。
- 免税事業者を除き、相続人は死亡届出書を出す。インボイス登録者の場合は別の死亡届出書になる。
- 事業を引き継ぐ相続人の納税義務は、被相続人の基準期間の課税売上高が1,000万円を超えるかで決まる。
- 簡易課税などの選択は引き継がれず、相続人が新たに届け出る。
- インボイスは、死亡日の翌日から4か月までみなし登録で、その先は新たな登録申請が必要になる。
個人事業主の所得税の準確定申告は、事業主が亡くなったときの準確定申告で扱っています。
公式一次情報
- 国税庁 タックスアンサー No.6602 相続で事業を引き継いだ場合の納税義務について(納税義務の判定・選択届出書の効力・みなし登録。2026-10-13確認)
- 消費税法 第45条・第49条・第57条・第57条の3(申告期限・納付・死亡届出書・登録の失効とみなし登録。2026-10-13確認)
よくある質問
- 個人事業主が亡くなったとき、消費税の申告はいつまでにしますか?
- 申告が必要な場合は、相続人が、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月を経過した日の前日までに申告します。納付も同じ期限です。
- 亡くなった人が免税事業者だった場合も届出が必要ですか?
- 消費税法57条1項4号は、免税事業者を除く個人事業者の死亡を対象にしています。免税事業者だった場合は、この届出の対象外です。
- 被相続人が選んでいた簡易課税は、相続人も使えますか?
- 引き継がれません。相続人が簡易課税制度を使いたいときは、新たに簡易課税制度選択届出書を出します。
- 亡くなった人のインボイス登録番号は、いつまで使えますか?
- 相続人が登録を受けていない場合、死亡日の翌日から4か月を経過する日などのいずれか早い日まで、相続人が被相続人の登録番号を使えるとみなされます。
- 相続人が複数いて遺産分割が終わっていないときは、納税義務をどう判定しますか?
- 各相続人が共同で事業を引き継いだものとして扱います。被相続人の基準期間の課税売上高に、民法上の相続分の割合をかけた額で判定します。

