売掛金の貸倒れと消費税|控除の条件と計算式
売掛金が回収できなくなったとき、売上のときに納めた消費税を取り戻せる条件、計算式、保存書類、回収できたときの戻しを整理します。
国税庁の制度課税売上にしていた売掛金が回収できなくなると、売上のときに預かった消費税を納めたまま、代金だけが入らない状態になります。消費税法には、この税額を貸倒れの発生した課税期間の納税額から差し引く仕組みがあります。
使えるのは課税事業者だけで、貸倒れと認められる事実と、それを示す書類が必要です。控除の条件、計算、回収できたときの扱いを順に確認します。
貸倒れに係る消費税額の控除とは
たとえば、110万円(税込)の課税売上の代金が回収できなくなった場合、売上のときに納税額の計算に入れた消費税7.8万円分(計算式は後述)を、貸倒れの年の納税額から差し引けます。
控除の対象は、消費税の課税対象となる取引の売掛金などに限られます。給与や非課税取引の債権が貸倒れになっても、この控除は使えません。
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貸倒れとして認められる事実
国税庁のタックスアンサーが挙げる、貸倒れとして認められる主な例は次の4つです。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 法的な整理による切捨て | 更生計画認可の決定、再生計画認可の決定などにより債権の切捨てがあったこと |
| 支払能力の欠如 | 債務者の財産状況、支払能力等からみて、債務の全額を弁済できないことが明らかであること |
| 関係者の協議による切捨て | 法令の規定による整理手続によらない関係者の協議決定で、一定の要件に該当する基準により債権の切捨てがあったこと |
| 書面による債務免除 | 債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、弁済を受けられないと認められる場合に、その債務者へ書面で債務の免除を行ったこと |
「相手が払ってくれない」というだけでは足りません。事実が生じた課税期間に控除します。
取引を停止した時の扱いは、継続的に取引していた債務者に限られます。国税庁の消費税法基本通達14-2-1は、不動産取引のようにたまたま取引を行った債務者への債権には、この扱いは適用されないとしています。
控除する税額の計算式
貸倒れの金額に消費税と地方消費税が含まれているときは、貸倒れの金額(税込)に次の割合を掛け、1円未満の端数を切り捨てます(国税庁「No.6367 貸倒れに係る税額の調整」)。
| 対象の債権 | 掛ける割合 |
|---|---|
| 標準税率(10%)の取引 | 110分の7.8 |
| 軽減税率(8%)の取引 | 108分の6.24 |
110分の7.8は、消費税7.8%と地方消費税2.2%を合わせた10%のうち、消費税の部分にあたる割合です。110万円が貸倒れになった場合、110万円×7.8/110=7.8万円が、納税額から差し引く消費税額です。
標準税率と軽減税率の債権が混ざり、貸倒れの金額を合理的に区分できないときは、貸倒れの対象になった取引の税込価額に占める軽減対象の割合で按分します。区分が著しく困難な場合の割合計算は、基本通達14-2-3にも定めがあります。
保存する書類
控除を受けるには、債権の切捨ての事実を証する書類その他、貸倒れの事実を明らかにする書類を保存する必要があります(消費税法第39条第2項)。
- 書類を保存していないと、控除は受けられません。
- 災害などやむを得ない事情で保存できなかったことを事業者が証明した場合は、例外があります。
- どの書類が事実を明らかにするかは、貸倒れの事由ごとに変わります。個別の事情は税務署または税理士に確認してください。
控除した後に回収できたとき
控除を受けた債権を、後からその全部または一部回収できたときは、回収した税込額に係る消費税額を、回収した日の属する課税期間の売上げに係る消費税額に加算します(消費税法第39条第3項)。国税庁は、この計算をタックスアンサー「No.6631 貸倒債権を回収したときの消費税額の計算」で案内しています。
控除は「貸倒れの年に取り戻す」仕組みなので、回収できた年には取り戻した分を納めて精算します。
控除が使えない場合
国税庁の消費税法基本通達は、次の場合に貸倒れ控除の適用がないとしています。
| 場面 | 扱い | 通達 |
|---|---|---|
| 免税事業者だった課税期間の売上の債権が、課税事業者になった後に貸倒れ | 控除なし。後で回収しても加算なし | 14-2-4 |
| 事業を廃止、または免税事業者となった後に、課税事業者だった課税期間の債権が貸倒れ | 控除なし。後で回収しても加算なし | 14-2-5 |
このため、廃業した年の消費税や法人解散時の消費税では、最後の課税期間に貸倒れを整理できるかが論点になります。売掛金を抱えたまま廃業すると、あとで貸倒れになっても消費税の控除を使えません。
相続や合併で事業を引き継いだ人は、被相続人や被合併法人が行った売上の債権が貸倒れになったとき、引き継いだ人が売上を行ったものとみなして控除を受けられます(消費税法第39条第4項・第6項)。
所得税・法人税の貸倒損失との違い
所得税や法人税では、貸倒れを経費・損金にする別の仕組みがあります。個人事業主の貸倒れや法人の貸倒損失で整理していますが、消費税の控除とは別の制度で、時期や要件が異なる場合があります。
- 所得税・法人税:貸倒れの金額を経費・損金にして、所得を減らす。
- 消費税:貸倒れの金額に含まれる消費税額を、納税額から差し引く。
所得税側で経費にできた債権でも、消費税側の貸倒れ控除には、貸倒れの事実と書類保存の要件を別に満たす必要があります。
納税額の全体の計算は本則課税の納税額の計算で確認できます。
課税事業者になるかどうかの判定は、消費税はいつから?を見てください。
まとめ
- 課税売上の売掛金が貸倒れになったら、含まれる消費税額を貸倒れの課税期間の納税額から控除できる。
- 計算は税込の貸倒れ額×110分の7.8(軽減税率は108分の6.24)で、1円未満は切り捨て。
- 貸倒れの事実を明らかにする書類を保存していないと使えない。
- 控除後に回収できたら、回収した課税期間の売上げに係る消費税額に加算する。
- 免税事業者だった課税期間の債権や、廃業・免税事業者になった後の貸倒れには使えない。
各方式の納税額は消費税4方式の比較シミュレーターで確認できます。
売掛金が民法上いつ時効にかかるかは、売掛金の時効は何年かで解説しています。
次に知りたいこと
公式情報
- 国税庁「No.6367 貸倒れに係る税額の調整」(貸倒れの例、保存書類、計算式)
- 国税庁「消費税法基本通達 第14章第2節 貸倒れに係る消費税額の控除」(14-2-1、14-2-3〜14-2-5)
- e-Gov法令検索「消費税法」(第39条)
よくある質問
- 売掛金が貸倒れになったとき、消費税は戻りますか?
- 課税事業者が貸倒れの事実を示す書類を保存していれば、貸倒れの金額に含まれる消費税額を、貸倒れの発生した課税期間の売上げに対する消費税額から控除できます(出典:国税庁)。
- 貸倒れの消費税額はいくらですか?
- 税込の貸倒れ額に、標準税率なら110分の7.8、軽減税率なら108分の6.24を掛け、1円未満を切り捨てた金額です(出典:国税庁)。
- 貸倒れ控除の後に代金を回収できたらどうなりますか?
- 回収した税込額に係る消費税額を、回収した日の属する課税期間の売上げに係る消費税額に加算します(出典:消費税法第39条第3項)。
- 廃業後に貸倒れになった売掛金は控除できますか?
- 課税事業者が事業を廃止した後に貸倒れが生じても、貸倒れに係る消費税額の控除は適用されません(出典:消費税法基本通達14-2-5)。

