消費税の納付額の計算|本則課税の計算例と申告の流れ
預かった消費税から支払った消費税を引く、本則課税の計算を数字で追います。
国税庁の制度本則課税の計算方法は、納付する消費税額=売上税額(売上にかかる消費税額)−仕入税額(仕入れや経費にかかる消費税額)です。消費税の課税事業者が納める額は、その課税期間の分をこの式で実額から求めます。
売上税額と仕入税額の計算方法、数字を入れた計算例、納付する額の内訳(消費税と地方消費税)を順に説明します。
納付税額の基本の式
複数税率(標準税率10%・軽減税率8%)になってからも、売上税額から仕入税額を控除するという計算の考え方は変わっていません。ただし、売上げと仕入れは税率ごとに区分して計算します。
売上税額は、お客さまから預かった消費税にあたります。仕入税額は、仕入れや経費の支払いで負担した消費税のうち、控除できる額です。
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売上税額の計算方法
売上税額には、原則の割戻し計算と、特例の積上げ計算があります。
| 方法 | 計算 |
|---|---|
| 原則:割戻し計算 | 税率ごとに区分した税込の売上合計に、110分の100(軽減税率は108分の100)を掛けて課税標準額を出し、7.8%(軽減税率は6.24%)を掛ける |
| 特例:積上げ計算 | 交付した適格請求書や適格簡易請求書の写しを保存している場合に、それらに記載した消費税額等の合計額に100分の78を掛ける |
売上税額を積上げ計算にしたときは、仕入税額も積上げ計算にしなければなりません。
仕入税額の計算方法
仕入税額も、原則の積上げ計算と、特例の割戻し計算があります。
| 方法 | 計算 |
|---|---|
| 原則:積上げ計算 | 受け取った適格請求書などに記載された消費税額等のうち、課税仕入れにかかる部分の合計額に100分の78を掛ける |
| 特例:割戻し計算 | 税率ごとに区分した課税仕入れの支払対価の額の合計に、110分の7.8(軽減税率は108分の6.24)を掛ける |
- 割戻し計算で仕入税額を求められるのは、売上税額も割戻し計算にしている場合に限られます。
- 売上税額では割戻し計算と積上げ計算を併用できますが、仕入税額では併用できません。
- 課税仕入れの都度、支払対価の額に10/110(軽減税率は8/108)を掛けた額を仮払消費税額として帳簿に記載している場合は、その合計額に78/100を掛ける帳簿積上げ計算も認められます。
仕入税額控除が受けられるのは、課税仕入れにあたる取引です。非課税や不課税の取引は課税仕入れになりません。区分は消費税の課税・非課税・不課税・免税の違いで整理しています。
計算例:税込売上1,100万円・税込仕入550万円
標準税率10%の取引だけがある課税期間を、割戻し計算の原則どおりに計算します。
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 課税標準額 | 1,100万円 × 100/110 | 1,000万円 |
| 売上税額 | 1,000万円 × 7.8% | 78万円 |
| 仕入税額 | 550万円 × 7.8/110 | 39万円 |
| 納付する消費税 | 78万円 − 39万円 | 39万円 |
| 納付する地方消費税 | 39万円 × 22/78 | 11万円 |
| 合計の納付額 | 39万円 + 11万円 | 50万円 |
消費税と地方消費税を合わせた税率は10%なので、(1,100万円 − 550万円) × 10/110 = 50万円と一致します。標準税率だけなら、この式で目安の額を確認できます。
売上より仕入れのほうが大きいなど、売上税額より仕入税額が多くなる課税期間は、引ききれない分が還付になります。還付の手続きは、課税期間に応じた申告書の提出で行います。
消費税と地方消費税の内訳
消費者が負担する消費税は、消費税と地方消費税の合計です。標準税率の10%は消費税7.8%と地方消費税2.2%、軽減税率の8%は消費税6.24%と地方消費税1.76%に分かれます(国税庁タックスアンサーNo.6303)。
| 区分 | 標準税率 | 軽減税率 |
|---|---|---|
| 消費税率 | 7.8% | 6.24% |
| 地方消費税率 | 2.2%(消費税額の22/78) | 1.76%(消費税額の22/78) |
| 合計 | 10% | 8% |
上の計算例のように、地方消費税は納付する消費税額に22/78を掛けて求めます。
申告までの流れ
- 課税期間中の売上げと仕入れを、税率ごとに区分して集計する。
- 売上税額と仕入税額を、使う計算方法で計算する。
- 売上税額から仕入税額を引いて、消費税の納付税額(または還付税額)を出す。
- 消費税額に22/78を掛けて、地方消費税の額を出す。
- 申告書を提出し、期限までに納付する。
申告と納付の期限は、個人事業者と法人で違います。消費税の確定申告の期限で整理しています。中間納付がある場合は消費税の中間申告も確認してください。
実額で計算しない方法と特例
「消費税簡易課税制度選択届出書」を出した事業者は、基準期間(前々年または前々事業年度)の課税売上高が5,000万円以下の課税期間について、仕入れにかかる消費税額を実額によらず計算できます。本則課税と簡易課税のどちらが有利かは消費税の簡易課税と本則課税の違いで整理しています。
インボイス制度を機に免税事業者から適格請求書発行事業者の登録を受けて課税事業者になった場合は、納付税額を売上税額の2割とする2割特例があります。国税庁の資料では、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する課税期間が対象です。小規模な個人事業者には、令和9年と令和10年の課税期間に納付税額を売上税額の3割とする3割特例が設けられています。
課税事業者になるかどうかの判定は、課税事業者になる1,000万円の判定で確認できます。
まとめ
- 本則課税の納付税額は、売上税額から仕入税額を引いた額。
- 売上税額は割戻し計算が原則、仕入税額は積上げ計算が原則で、それぞれ特例がある。
- 売上税額を積上げ計算にしたら、仕入税額も積上げ計算にする。
- 標準税率だけなら、納付額は(税込売上 − 税込仕入)× 10/110で確認できる。
- 納付額は消費税と地方消費税に分かれ、地方消費税は消費税額の22/78。
次に知りたいこと
- 仕入れの消費税を全額引けない場合は、課税売上割合と個別対応方式・一括比例配分方式。共通分の割り振りを実態に合わせたいときは課税売上割合に準ずる割合。仕入れの3区分は個別対応方式の課税仕入れの区分。
- 帳簿での消費税の処理は、仮払消費税・仮受消費税の仕訳。
- 簡易課税・2割特例との納税額の比較は、消費税の簡易課税と本則課税の違い。
本則・簡易・2割・3割特例の納税額の比較は消費税4方式の比較シミュレーターでできます。
判定から届出・申告・納付までの順番と期限は消費税のまとめで一覧にしています。
代金に印紙代・源泉所得税・配送料が含まれるときの売上の金額は、印紙代・源泉所得税・配送料を含む代金の消費税で整理しています。
申告書と請求書で端数の扱いが違う点は消費税の端数計算(千円・1円・100円未満の切捨てとインボイスの端数処理)で整理しています。
公式情報
- 国税庁「No.6351 納付税額の計算のしかた」(売上税額・仕入税額の計算方法、簡易課税、2割特例・3割特例)
- 国税庁「No.6303 消費税および地方消費税の税率」(消費税率と地方消費税率の内訳)
よくある質問
- 消費税の納付額は、どう計算しますか?
- 本則課税では、課税期間中の売上税額から仕入税額を引いた額が納付税額です。売上げと仕入れは税率ごとに区分して計算します(出典:国税庁)。
- 売上税額と仕入税額の計算方法は、自由に組み合わせられますか?
- 仕入税額の割戻し計算は、売上税額も割戻し計算にしている場合に限られます。売上税額を積上げ計算にしたときは、仕入税額も積上げ計算にします。仕入税額で積上げ計算と割戻し計算を併用することはできません(出典:国税庁)。
- 地方消費税は別に計算しますか?
- 地方消費税は、納付する消費税額の22/78です。標準税率の10%は、消費税7.8%と地方消費税2.2%の合計です(出典:国税庁)。
- 仕入税額のほうが多いときはどうなりますか?
- 売上税額より仕入税額が多い課税期間は、納付ではなく還付になります。計算の考え方は納付の場合と同じです。
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