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工事進行基準と消費税|工事の請負の売上を計上する時期(消費税法17条)

工事の請負は、完成まで数か月から数年かかることがあります。消費税は原則として引渡しの時に売上を計上しますが、所得税・法人税で工事進行基準を使っていれば、消費税でも同じ基準で申告できます。使える条件、長期大規模工事の要件、申告書への付記、引渡し時の精算を、国税庁の通達と法令にもとづき整理します。

消費税法17条
編集:個人事業主のお金ラボ編集部 / 運営方針・出典

所得税や法人税で工事進行基準により経理して収入を計上しているなら、消費税でも同じ基準で、その課税期間に売上計上した部分を資産の譲渡等として申告できます。ただし、使えるのは所得税・法人税の特例の適用を受けている場合に限られ、申告書に適用を受ける旨を付記します。

工事進行基準を使わず、引渡しの日を基準にすることも認められています。どちらを選べるのかを、工事の種類ごとに見ていきます。

消費税の原則と17条の特例

国税庁のタックスアンサー(No.6161)は、消費税の納税義務の成立の時期は資産の譲渡等の時とされている、と案内しています。工事の請負なら、原則は目的物を引き渡した時です。

売上を計上する時期の一般的な考え方は、別のガイド(資産の譲渡等の時期)で説明しています。

一方、消費税法17条は、工事の請負について特例を設けています。所得税や法人税で工事進行基準を使っている工事は、計上した部分を、その年(事業年度)の課税期間の資産の譲渡等にできます。完成前でも、進んだ分だけ消費税の課税売上に入れる扱いです。

根拠は所得税法66条と法人税法63条です。

長期大規模工事とそれ以外の工事

17条の特例は、所得税法・法人税法がどの工事を対象にしているかで、2つの形に分かれます。

区分所得税・法人税の扱い消費税の特例
長期大規模工事(法人税法63条1項・所得税法66条1項)工事進行基準によることになる17条1項。進行基準で計上した部分は、その課税期間の資産の譲渡等にできる
それ以外の工事で、着工した期の中に引渡しが行われないもの(法人税法63条2項・所得税法66条2項)確定した決算で工事進行基準により経理したとき、選択して適用する17条2項。経理した部分について、その課税期間の資産の譲渡等にできる

長期大規模工事の要件は、法人税法63条1項と法人税法施行令129条に書かれています。

  • 着手の日から契約で定めた目的物の引渡しの期日までの期間が1年以上であること
  • 請負の対価の額が10億円以上であること(施行令129条1項)
  • 契約で、請負の対価の額の2分の1以上が、引渡しの期日から1年を経過する日後に支払われると定められていないこと(施行令129条2項)

請負の対価が10億円に届かない工事は、長期大規模工事に当たらず、2項の「経理して選ぶ」側になります。着工した期の中に引渡しが行われる工事は、どちらの対象にもなりません。

引渡しの日を基準にしてもよい

消費税法基本通達9-4-1によると、17条の特例を使えるのは、所得税法66条または法人税法63条の適用を受ける場合だけです。ただし、適用を受ける場合でも、資産の譲渡等の時期を引渡しのあった日にして差し支えないとされています。

注書きでは、所得税・法人税の所得金額の計算上、工事進行基準によらなければならない長期大規模工事でも、消費税の時期を引渡しの日にして差し支えないと明記されています。

所得税・法人税の経理消費税で選べる時期
工事進行基準で経理している工事進行基準(17条の特例)、または引渡しの日
工事進行基準を使わない引渡しの日(17条の特例は使えない)

所得税・法人税と消費税で、計上の時期を合わせるか、ずらすかを選べます。選ぶ前に、課税売上が各課税期間にどう割り振られるかを、前後の期で比べてください。

課税期間をまたぐ工事の計上例

請負金額(税抜)1億円の工事を、法人が2つの事業年度にわたって行った場合の試算です。事業年度と課税期間は同じで、工事進行基準で経理し、17条2項を使う想定です。税率は10%とします。

課税期間法人税で計上した収益の額消費税の課税標準(税抜)消費税額(10%)
1期目(引渡しの前)4,000万円4,000万円400万円
2期目(引渡しの期)6,000万円6,000万円600万円
合計1億円1億円1,000万円

引渡しの日を基準にした場合は、1期目の課税売上が0円、2期目の課税売上が1億円になります。同じ工事でも、1期目と2期目の消費税額が変わります。

1期目の売上が基準期間に影響する:課税売上高は、2年後の課税事業者の判定(基準期間)にも使われます。計上の時期の選び方は、課税事業者の判定にも関係します。

付記・精算・途中でやめるときの注意

  • 申告書への付記:17条の特例の適用を受けるときは、消費税の確定申告書(法45条1項の申告書)に、適用を受ける旨を付記します(17条4項)。
  • 引渡し時の精算:特例を使った工事の目的物を引き渡した課税期間では、すでに資産の譲渡等があったものとされた部分を差し引いた残りを、その課税期間の資産の譲渡等とします(17条3項)。引渡しの期に二重に計上されることはありません。
  • 経理をやめたとき:17条2項のただし書は、所得税・法人税の側で工事進行基準による経理をしなかったときは、その経理をしなかった課税期間以後には特例を使えないと定めています。所得税・法人税の取扱いと同じ扱いになります。
  • 損失が見込まれる工事:損失が見込まれる工事でも、所得税・法人税で工事進行基準の経理に当たらないとは取り扱われない工事については、17条2項本文を適用できます(通達9-4-2)。

次に知りたいこと

公式一次情報

よくある質問

消費税でも工事進行基準を使えますか?
所得税や法人税の申告で工事進行基準により経理し収入を計上している場合は、消費税でも同じ基準で申告できます。申告書に適用を受ける旨を付記します。
長期大規模工事は、消費税も工事進行基準でなければなりませんか?
いいえ。所得税・法人税で工事進行基準によらなければならない長期大規模工事でも、消費税は引渡しの日を基準にして差し支えないと、通達の注書きに明記されています。
長期大規模工事とはどんな工事ですか?
着手から契約上の引渡しの期日までが1年以上で、請負の対価が10億円以上などの要件を満たす工事です。対価の2分の1以上が、引渡しの期日から1年を経過する日後に支払われる契約でないことも要件です。
工事進行基準で計上した分は、引渡しのときに二重になりませんか?
なりません。引渡しの課税期間では、すでに資産の譲渡等があったものとされた部分を、対価の額から差し引きます。
損失が見込まれる工事でも使えますか?
所得税・法人税で、工事進行基準の経理に当たらないとは取り扱われない工事なら、17条2項本文の特例を適用できます。
本記事について。専門家監修前の概説です。2026年10月26日時点の国税庁の公開情報と法令にもとづく一般的な案内で、個別の判断に代わるものではありません。どの基準を選ぶかは、税理士または所轄の税務署へご確認ください。