仮払消費税・仮受消費税の仕訳|税抜経理と税込経理の違い
消費税の経理処理の2方式を、仕訳の例と納付時の処理で比べます。
国税庁の制度消費税の課税事業者は、帳簿に消費税を載せるやり方を2つから選べます。「仮払消費税」「仮受消費税」という勘定を使う税抜経理と、売上や経費に消費税を含めたままにする税込経理です。
この記事では、2方式の仕訳の違い、納付するときの処理、併用の条件、インボイス制度で変わった点を説明します。
税抜経理と税込経理の違い(比較表)
| 項目 | 税抜経理方式 | 税込経理方式 |
|---|---|---|
| 売上の消費税 | 仮受消費税等として分けて計上 | 売上金額に含める |
| 仕入れ・経費の消費税 | 仮払消費税等として分けて計上 | 仕入金額や経費に含める |
| 納付する消費税等 | すべての取引を税抜経理にしていれば、仮受から仮払を引いた額。損益には影響しない | 租税公課として必要経費・損金に算入 |
| 還付を受ける消費税等 | 未収消費税等として計上。損益には影響しない | 雑収入などとして収入・益金に算入 |
ここでいう消費税等は、消費税と地方消費税を合わせたものです(国税庁タックスアンサーNo.6375・No.6901)。
消費税の納税義務が免除されている免税事業者は、取引を税抜経理で帳簿に付けていても、所得税や法人税の所得金額の計算では税込経理方式を適用します。
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仕入れと売上の仕訳の例
国税庁の例は、標準税率10%の商品を、7,000円(税抜き)で掛仕入れし、10,000円(税抜き)で現金で販売した場合です(国税庁タックスアンサーNo.6375)。
| 場面 | 税抜経理方式 | 税込経理方式 |
|---|---|---|
| 仕入時 | 借方 仕入 7,000円/貸方 買掛金 7,700円・仮払消費税等 700円 | 借方 仕入 7,700円/貸方 買掛金 7,700円 |
| 売上時 | 借方 現金 11,000円/貸方 売上 10,000円・仮受消費税等 1,000円 | 借方 現金 11,000円/貸方 売上 11,000円 |
税抜経理では、売上10,000円と仕入7,000円の差額3,000円が利益になります。税込経理では、売上11,000円と仕入7,700円の差額3,300円が利益になり、納付する消費税等の300円は、あとで租税公課として費用にします。
納付する・還付を受けるときの処理
税抜経理方式の場合
すべての取引に税抜経理を適用していて控除対象外消費税額等がない場合、納付すべき税額は、その課税期間の仮受消費税等の金額から、仮払消費税等の金額を引いて計算します。上の例なら、仮受1,000円から仮払700円を引いた300円です。所得税や法人税の課税所得には影響しません。
決算では、納付すべき税額を未払消費税等、還付を受ける税額を未収消費税等として計上します(国税庁タックスアンサーNo.6901)。
税込経理方式の場合
納付すべき消費税等の額は租税公課として必要経費または損金の額に算入し、還付を受ける額は雑収入などとして総収入金額または益金の額に算入します。計上する時期は次のとおりです(国税庁タックスアンサーNo.6901)。
- 申告に係るもの:申告書を提出した日の属する年または事業年度
- 更正または決定に係るもの:更正または決定があった日の属する年または事業年度
申告期限が来ていない納税申告書に書く消費税等の額を、法人が損金経理で未払金に計上した場合は、その計上した事業年度の損金に算入します。個人事業者が未払金に計上した場合は、その計上した年の必要経費に算入できます。申告と納付の期限は消費税の確定申告の期限で整理しています。
仮払消費税はなぜ資産で、仮受消費税と相殺されるのか
税抜経理では、仕入れや経費で払った消費税を費用にせず、仮払消費税等として別に計上しておきます。この金額は、決算で仮受消費税等から差し引かれて納付額の計算に使われるため、帳簿では貸借対照表の資産側(流動資産)に置くのが一般的です。逆に、売上で受け取った消費税は、いったん国に納める前の預かりとして仮受消費税等とし、負債側に置きます。
相殺するのは、納付すべき消費税等の額が「受け取った消費税等−払った消費税等」で決まるためです(国税庁タックスアンサー No.6901)。前の節の例なら、仮受1,000円と仮払700円を相殺した差額300円を、決算で未払消費税等に振り替えます。仮払のほうが多ければ、差額は未収消費税等になります。
どちらも損益には出ないので、利益は消費税を除いた金額のままです。
法人は一部だけ税込経理にできる
選んだ方式は、法人が行うすべての取引に適用するのが原則です。ただし、税抜経理方式を選ぶ法人は、次の条件で税込経理方式を併用できます(国税庁タックスアンサーNo.6905)。
- 売上などの収益に係る取引は、必ず税抜経理にする。
- 固定資産・棚卸資産・繰延資産の取得に関する取引と、販売費・一般管理費などの支出に関する取引は、グループごとに、どちらかを税込経理にできる。
- 棚卸資産の取得は、継続適用を条件に、固定資産・繰延資産と別の方式にできる。
- 個々の固定資産や個々の経費ごとに、方式を変えることはできない。
- 売上を税込経理にする場合は、取得と経費の取引もすべて税込経理にする。
併用すると、仮受消費税等の合計から仮払消費税等の合計を引いた額が、納付する額と一致しなくなります。その差額は、法人では益金の額に、個人事業者では総収入金額に算入します(国税庁タックスアンサーNo.6913)。
また、税抜経理の処理は取引のたびに行うのが原則ですが、帳簿積上げ計算の適用を受ける場合を除き、事業年度の終了の時にまとめて税抜経理処理をする、期末一括税抜経理方式もあります。
インボイス制度で変わった仮払消費税の扱い
令和5年10月1日にインボイス制度が始まってから、仕入税額控除を受けられる消費税額は、適格請求書などの記載事項に基づいて計算した金額になりました。税抜経理の場合、消費者・免税事業者・登録を受けていない課税事業者など、適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れは、原則として仮払消費税等がないことになります(国税庁タックスアンサーNo.6375)。
- 原則:請求書に消費税額が書かれていても、仮払消費税等として分けず、取引の対価の額に含めて所得金額を計算します。
- 経過措置:令和5年10月1日から令和13年9月30日までは、適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れについて、従来の仕入控除税額相当額の80%・70%・50%・30%を課税仕入れに係る消費税額とみなします。この間は、その割合に当たる額を仮払消費税等とし、残りを取引の対価の額にします。
経過措置の期間中、適格請求書等の記載事項に基づく金額がない課税仕入れで、消費税等の額を対価と区分して経理しなかったときは、仮払消費税等はないものとして所得金額を計算することも認められています。簡易課税や2割(3割)特例を使う課税期間は、継続適用を条件に、すべての課税仕入れの支払対価に110分の10(軽減税率は108分の8)を掛けた額を仮払消費税等とする処理も認められます。
登録や経過措置の内容はインボイスは登録すべきかで整理しています。
控除できなかった消費税額が出る場合
税抜経理で、その課税期間の課税売上高が5億円超、または課税売上割合が95%未満のときは、仕入税額控除ができる額が、課税仕入れ等にかかった消費税額等の全額ではなくなります。この、控除できない仮払消費税等の額を控除対象外消費税額等といいます。
資産に係るものは、取得価額に算入して、以後の事業年度に償却費などとして損金にする方法があります。次のいずれかに当たる場合は、損金経理をした金額を、その事業年度の損金にできます。
- その事業年度の課税売上割合が80%以上である。
- 棚卸資産に係るものである。
- 一の資産に係る額が20万円未満である。
これらに当たらない場合は、繰延消費税額等として資産に計上し、60で割って事業年度の月数を掛けた額の範囲内で損金にします。資産以外に係るものは、法人税では全額をその事業年度の損金に算入します。ただし、交際費等に係る額は、交際費等の額に加算して損金不算入額を計算します(国税庁タックスアンサーNo.6921)。
税込経理では特別な処理は要りません。
課税売上割合の計算は、課税売上割合とはで計算例を示しています。
前受金や未収金があるときに、売上をどの日に計上するかは消費税の売上の計上時期で確認できます。
まとめ
- 課税事業者は、税抜経理か税込経理を選べる。納付する消費税等の額は、どちらでも同じ。
- 税抜経理は仮受消費税等と仮払消費税等で分け、納付額は未払消費税等になる。損益には影響しない。
- 税込経理は売上や経費に含め、納付額は租税公課として費用に、還付は雑収入などとして収入にする。
- 免税事業者は、所得の計算では税込経理を適用する。
- 法人は、税抜経理を選んでも、固定資産等か経費等のグループごとに税込経理を併用できる。
- インボイス制度の開始後は、適格請求書発行事業者以外からの仕入れの仮払消費税等の扱いが変わった。
次に知りたいこと
- 取引が課税・非課税・不課税・免税のどれに当たるかは、消費税の取引区分の違い。
- 仕入れの消費税を全額引けない場合は、課税売上割合と個別対応方式・一括比例配分方式。
- 少額の減価償却資産の金額判定が経理方式で変わる点は、少額減価償却資産の一括償却。
- 令和9年4月から飲食料品の税率が1%になる案での帳簿・請求書の書き方は、飲食料品の消費税率1%とインボイスの書き方。
本則・簡易・2割・3割特例の納税額の比較は消費税4方式の比較シミュレーターでできます。
課税売上割合が95%未満などで控除しきれない仮払消費税等の処理は控除対象外消費税額等の処理で扱っています。
公式情報
- 国税庁「No.6375 税抜経理方式または税込経理方式による経理処理」(方式の選択、仕訳の例、免税事業者、インボイス制度後の仮払消費税等)
- 国税庁「No.6901 納付税額または還付税額の経理処理」(納付・還付の処理と計上時期)
- 国税庁「No.6905 税抜経理と税込経理の選択適用(法人の場合)」(併用の条件、期末一括税抜経理)
- 国税庁「No.6913 税抜経理と税込経理の併用と経理処理」(併用で生じた差額の扱い)
- 国税庁「No.6921 控除できなかった消費税額等(控除対象外消費税額等)の処理」(控除対象外消費税額等の処理)
よくある質問
- 税抜経理と税込経理は、どちらを選ぶべきですか?
- 課税事業者はどちらを選んでもよく、納付する消費税等の額は同じです(出典:国税庁)。帳簿の付け方と、納付額が費用になる時期が違います。迷うときは税理士に確認してください。
- 仮払消費税と仮受消費税の差額は、そのまま納付額になりますか?
- すべての取引に税抜経理を適用していて、控除対象外消費税額等がなければ、仮受消費税等から仮払消費税等を引いた額が納付すべき税額になります。控除対象外消費税額等が出る場合は、その分を仮払消費税等から除いて計算します(出典:国税庁)。
- 免税事業者は税抜経理を使えますか?
- 帳簿は税抜経理で付けても、所得税や法人税の所得金額の計算では税込経理方式を適用します(出典:国税庁)。
- 消費税を納めたら、経費になりますか?
- 税込経理なら、納付した消費税等は租税公課として必要経費または損金になります。税抜経理なら、納付額は未払消費税等として処理し、損益には影響しません(出典:国税庁)。

