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返品・値引き・リベートの消費税|税額の調整と返還インボイス

売った後に返品や値引き、リベートで代金を減らしたとき、納める消費税を減らす方法と、1万円未満なら要らない返還インボイスの扱いを整理します。

国税庁の制度
編集:個人事業主のお金ラボ編集部 / 運営方針・出典

商品を売ったあとに返品を受けたり、値引きや割戻し(リベート)をしたりして代金を減らすと、売ったときに計算した消費税額も減らす必要があります。消費税法では、これを「売上げに係る対価の返還等」と呼びます。

インボイス制度の登録事業者は、取引先へ「適格返還請求書」を交付する義務も負います。調整の方法、対象になる取引、1万円未満の免除を順に確認します。

売上げに係る対価の返還等とは

売上の取消しや減額に合わせて、消費税額も減らす仕組み:国税庁は、商品を販売した事業者が、売上値引き、売上割戻金や販売奨励金の支払い、返品などで売掛金を減額する場合、これらの金額に対応する消費税額について調整する必要があると案内しています(消費税法第38条)。

たとえば、110万円(税込)で売った商品の一部を5,500円値引きしたら、5,500円×110分の7.8=390円を、納める消費税から差し引きます。5,500円に含まれる消費税率10%分の500円のうち、地方消費税にあたる110円は、この控除の計算には含まれません。

この調整が使えるのは、国内で課税資産の譲渡等を行った課税事業者です。輸出取引のように消費税が免除される取引に基づくものは対象外です。

調整が必要な取引の7種類

国税庁のタックスアンサーが挙げる、売上げに係る対価の返還等の対象は次のとおりです。

種類内容
返品売った商品が戻される
値引き売価を後から引き下げる
割戻し直接の取引先に支払うリベート。卸売業者や製造業者など間接の取引先に支払う飛越しリベート等も含む
船舶の早出料海上運送事業を営む事業者が支払うもの
販売奨励金等販売促進の目的で、販売数量や販売高に応じて金銭で支払うもの
事業分量配当金協同組合等が組合員に支払う、課税資産の譲渡等の分量等に応じた部分
売上割引代金を支払期日より前に受け取ったことなどを基因として支払うもの

振込手数料を取引先が差し引いて支払った場合も、売手がその金額を売上の減額として処理するなら、売上げに係る対価の返還等に当たります。国税庁のインボイスQ&Aには、500,000円の請求に対し、買手が振込手数料相当額440円を差し引いて499,560円を支払った例があります。

調整する時期と方法

調整は、元の売上を計上した課税期間ではなく、返品や値引きなどを行った課税期間に行います。前の年の売上に対する値引きを今年行ったなら、今年の納税額で調整します。

調整の方法は2通りです。

  • 課税標準額に対する消費税額から、返還等に係る消費税額を控除する。
  • 売上の金額から返還等の金額を差し引く経理処理を継続して行っているなら、その処理も認められる。

控除を受けるには、返還等をした金額の明細を記録した帳簿を保存する必要があります(消費税法第38条第2項)。売上から差し引く経理処理をしている場合も同じです。災害などやむを得ない事情で保存できなかったと証明した場合は例外です。

税額の計算式

返還等の税込金額に次の割合を掛けて、控除する消費税額を計算します(国税庁「No.6359」)。

売上の税率掛ける割合
標準税率(10%)110分の7.8
軽減税率(8%)108分の6.24

標準税率と軽減税率が混在し、返還等の金額を合理的に区分できないときは、元の売上の税込価額に占める軽減対象の割合で按分します。

適格返還請求書の写しや電磁的記録を保存している場合は、その書類に記載した消費税額等に100分の78を掛けた金額を、控除する消費税額にできます。

簡易課税の場合

簡易課税制度を選んでいる事業者も、返還等の調整があります。消費税法第37条は、簡易課税の仕入控除税額を、課税標準額に対する消費税額から、売上げに係る対価の返還等の消費税額を差し引いた残額にみなし仕入率を掛けて計算するとしています。

つまり、返品や値引きがあった課税期間は、先に売上側の税額を減らしたうえで、みなし仕入率を掛けます。制度の概要は簡易課税制度、事業区分は簡易課税の事業区分で確認できます。

適格返還請求書の記載事項

インボイス制度の登録事業者は、課税事業者へ返品や値引きなどの売上げに係る対価の返還等を行う場合、適格返還請求書を交付する義務があります(消費税法第57条の4第3項)。国税庁のQ&Aが示す記載事項は次の5つです。

番号記載事項
1登録事業者の氏名または名称と登録番号
2返還等を行う年月日と、その基になった課税資産の譲渡等を行った年月日(適格請求書を交付した売上は、課税期間の範囲で一定の期間の記載でもよい)
3返還等の基となる資産または役務の内容(軽減対象の場合はその旨)
4返還等の税抜価額または税込価額を税率ごとに区分して合計した金額
5返還等の金額に係る消費税額等または適用税率

書類の名称は決まっていません。請求書、納品書、販売奨励金の支払明細書など、記載事項を満たせば適格返還請求書になります。通常の請求書と同じ書類にまとめて交付することもできます。

1万円未満なら交付は不要

返還等の税込価額が1万円未満なら、交付義務が免除されます:根拠は消費税法第57条の4第3項と、消費税法施行令第70条の9第3項第2号です。

1万円未満かどうかは、税率ごとではなく、返還した金額や値引きの対象になる請求や債権の単位ごとの、減額した金額で判定します。標準税率と軽減税率が混ざっていても同じです。

国税庁の例判定
500,000円の請求に対し、買手が振込手数料相当額440円を差し引いて499,560円を支払った1万円未満のため、交付義務は免除
400,000円の請求に関し、1商品当たり100円のリベートを後日支払った(合計20,000円)1万円以上のため、交付義務は免除されない

免除されるのは交付義務だけです。消費税額を控除するための帳簿の記録と保存は必要です。

調整ができない場合

国税庁は、次の場合には調整を行えないと案内しています。

  • 免税事業者だった課税期間の課税資産の譲渡等について、課税事業者になった後の課税期間に返還等を行った場合。
  • 課税事業者だった課税期間の課税資産の譲渡等について、事業を廃止、または免税事業者になった後の課税期間に返還等を行った場合。

また、登録を受ける前に行った課税資産の譲渡等について、登録後に返還等を行う場合は、適格返還請求書の交付義務はありません。

相続や合併、分割で事業を引き継いだ人が、引き継いだ売上について返還等をしたときは、引き継いだ人が行ったものとして調整します(消費税法第38条第3項・第4項)。

元の売上をいつの課税期間に計上するかは消費税の売上の計上時期で整理しています。

売掛金が回収できずに貸倒れになった場合は別の制度です。貸倒れに係る消費税額の控除で整理しています。

インボイス登録事業者が値引きをしたときの返還請求書(税込1万円未満は不要)は、インボイスの交付義務・修正・写しの保存で扱っています。

予約の取消しで受け取るキャンセル料は、値引きや返品とは別の扱いです。キャンセル料と解約手数料の消費税で整理しています。

売上割引と、非課税の利子との違いは、預金・貸付金の利子と売上割引の消費税で整理しています。

まとめ

  • 返品、値引き、割戻し、販売奨励金などで代金を減らしたら、含まれる消費税額を納税額から控除する。
  • 調整は返還等を行った課税期間に行う。計算は税込の返還額×110分の7.8(軽減税率は108分の6.24)。
  • 返還等の明細を記録した帳簿を保存していないと控除できない。
  • 簡易課税では、売上側の税額から返還等の税額を引いた残額にみなし仕入率を掛ける。
  • 登録事業者は適格返還請求書の交付義務があるが、返還等の税込価額が1万円未満なら免除される。

取引先が振込手数料を差し引いて入金した場合の処理は振込手数料を差し引かれたときの消費税で整理しています。

インボイスに登録すべきかはインボイス登録すべきか、少額な仕入れの特例はインボイスの少額特例で確認できます。各方式の納税額は消費税4方式の比較シミュレーターで確認できます。

次に知りたいこと

返品や値引きの処理漏れに申告後に気づいたときの手続きは、消費税の修正申告と更正の請求で扱っています。

申告書と請求書で端数の扱いが違う点は消費税の端数計算(千円・1円・100円未満の切捨てとインボイスの端数処理)で整理しています。

公式情報

よくある質問

値引きや返品をしたとき、消費税はどうなりますか?
値引きや返品の税込金額に含まれる消費税額を、値引きや返品を行った課税期間の売上げに対する消費税額から控除します。控除には明細を記録した帳簿の保存が必要です(出典:国税庁)。
返還等の消費税額はどう計算しますか?
税込の返還等の金額に、標準税率なら110分の7.8、軽減税率なら108分の6.24を掛けます(出典:国税庁)。
値引きのたびに適格返還請求書が必要ですか?
登録事業者が課税事業者へ返還等を行う場合は交付義務がありますが、返還等の税込価額が1万円未満なら免除されます。判定は請求や債権の単位ごとに減額した金額で行います(出典:国税庁インボイスQ&A)。
簡易課税でも値引きの調整は必要ですか?
必要です。課税標準額に対する消費税額から、売上げに係る対価の返還等の消費税額を差し引いた残額にみなし仕入率を掛けて、仕入控除税額を計算します(出典:消費税法第37条)。
本記事について。税理士監修前の概説です。取引ごとの扱いは契約内容や経理処理で変わるため、申告前に税務署または税理士へ確認してください。

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