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振込手数料を差し引かれたときの消費税と保存書類

取引先が振込手数料を引いて入金した場合の処理は、売上値引きにするか、手数料を受けた役務の対価にするかで変わります。返還インボイスの要否と、銀行の手数料で保存する書類を説明します。

消費税
編集:個人事業主のお金ラボ編集部 / 運営方針・出典

10,000円を請求して9,560円が入金されたとき、差額の440円は振込手数料を取引先が差し引いたものです。差し引かれた振込手数料は、売上値引きとして扱うか、取引先から受けた役務の対価として扱うかで、必要な書類が変わります(国税庁インボイスQ&A問29)。

  • 売上値引きにする場合、振込手数料相当額は通常1万円未満なので、返還インボイスの交付は不要です。
  • 取引先から役務を受けた対価とする場合、仕入税額控除には取引先の適格請求書の保存が必要です。
  • 自分が銀行に払う振込手数料は、金融機関の適格簡易請求書か、少額特例の帳簿保存で控除します。

差し引かれた手数料の3つの扱い

国税庁Q&A問29は、売手が負担する振込手数料相当額について、取引当事者間の契約関係などにより次の3つに分けています。すでに売手が適格請求書を交付している場合の対応です。

扱い売手の消費税の処理書類
売上値引きとする売上げに係る対価の返還等1万円未満なら適格返還請求書は不要
買手から代金決済上の役務の提供を受けた対価とする課税仕入れ買手の適格請求書の保存(仕入明細書でも可)
買手が売手に代わって立替払したものとする課税仕入れ金融機関の適格請求書と立替金精算書等
どの扱いにするかは、取引先との契約関係で決まります。経理上は支払手数料として処理しつつ、消費税の面では売上げに係る対価の返還等として扱う方法もあります(問29)。

売上値引きにする場合

売手が振込手数料相当額を売上値引きとする場合、売上げに係る対価の返還等を行ったことになります。原則として買手へ適格返還請求書を交付しますが、1万円未満の値引きは交付義務が免除されます。振込手数料相当額は、一般的に1万円未満と考えられます(消費税法57条の4第3項、消費税法施行令70条の9第3項第2号)。

Q&Aの例では、10,000円の請求に対して買手が440円を差し引いて9,560円を振り込んでいます。売上値引きは440円なので、適格返還請求書の交付は必要ありません。売手の課税売上げは10,000円、売上対価の返還は440円です。

買手側は課税仕入れ10,000円、仕入対価の返還が440円になります。値引きの適用税率は、値引きの基になった取引の税率に従います。軽減税率8%の取引に係る振込手数料の値引きには、8%が適用されます。

返品や値引きの消費税の考え方は売掛金の返品・値引き・貸倒れの消費税で、返還インボイスの交付免除はインボイスの交付義務・修正・写しの保存で整理しています。

役務の対価とする場合

差し引かれた金額を、買手から「代金決済上の役務の提供(支払方法の指定に係る便宜)」を受けた対価とする場合、売手の買手への資産の譲渡等と、買手の売手への役務の提供は、別々の取引になります。

  • 売手は、差し引かれた金額について仕入税額控除を受けるには、買手から交付された適格請求書の保存が必要です。
  • 売手が仕入明細書等を作成し、買手の確認を受けて仕入税額控除を行うこともできます(消費税法30条9項3号)。
  • 例の440円では、売手は課税売上げ10,000円と課税仕入れ440円、買手は課税仕入れ10,000円と課税売上げ440円になります。

一定規模以下の事業者は、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの課税仕入れで、支払対価が1万円未満なら、一定の事項を書いた帳簿のみの保存で仕入税額控除を受けられます(問29注1、少額特例)。

取引先が立替払したものとする場合

買手が売手に代わって振込手数料を立替払したものとする場合は、書類が増えます。売手は、買手が金融機関から受け取った振込手数料の適格請求書と、買手が作成した立替金精算書等の交付を受け、仕入税額控除を行います。この場合、買手が差し引く金額は、金融機関の振込手数料と同額である必要があります(問29)。

買手が金融機関のATMで振り込んだ場合は、ATM手数料が3万円未満の自動販売機及び自動サービス機による取引の特例の対象になります。金融機関の適格請求書と立替金精算書等の保存は不要です。売手は、差し引かれた金額が振込手数料であること、立替払がATMでの振込みであることを確認したうえで、一定の要件の下で帳簿のみの保存により控除できます。

従業員が立て替えた領収書の扱いは法人の立替経費精算とインボイスで確認できます。

自分が払う振込手数料の保存書類

金融機関の窓口やオンラインで払った入出金手数料・振込手数料について仕入税額控除を受けるには、原則として適格簡易請求書と、一定の事項を書いた帳簿の保存が必要です(国税庁インボイスQ&A問103-2)。

場面保存するもの
原則適格簡易請求書と帳簿
入出金や振込みが多く、すべての請求書の保存が難しい通帳や入出金明細等(取引年月日と対価の額が分かるもの)と、その金融機関の任意の1取引に係る適格簡易請求書を併せて保存
少額特例の対象で、支払対価が1万円未満帳簿のみ
金融機関のATMによる手数料帳簿のみ(機械装置のみで取引が完結するため)

インターネットバンキングで電磁的記録の適格簡易請求書が提供される場合は、その記録をダウンロードします。ただし、同種の手数料の支払いが繰り返され、請求書の電磁的記録がインターネットバンキング上でいつでも確認できるなど一定の要件を満たすときは、ダウンロードしなくても控除を受けられます。

金融機関が登録を取りやめないことを前提に、適格簡易請求書は一度だけ取得して保存すれば差し支えありません。金融機関から手数料のお知らせを受け取った場合は、そのお知らせ1通の保存で、適格簡易請求書の保存に代えられます。お知らせには、登録番号、適用税率、取引の内容が書かれている必要があります。

少額特例の対象者と期間はインボイスの少額特例で、事業用口座の分け方は法人口座の開設で確認できます。

よくある質問

取引先が振込手数料を差し引いて入金しました。返還インボイスは必要ですか?
売上値引きとして処理する場合、振込手数料相当額は一般に1万円未満なので、適格返還請求書の交付義務は免除されます(国税庁インボイスQ&A問29)。
差し引かれた振込手数料を、仕入税額控除の対象にできますか?
買手から代金決済上の役務の提供を受けた対価とする場合は、買手の適格請求書の保存が必要です。仕入明細書を作って買手の確認を受ける方法もあります(問29)。
銀行に払った振込手数料の請求書は、毎回保存が必要ですか?
原則は適格簡易請求書の保存ですが、多頻度で難しい場合は、通帳や入出金明細等と任意の1取引の適格簡易請求書を併せて保存します。少額特例の対象なら帳簿のみで足ります(問103-2)。
ATMで振り込んだ場合の手数料は、書類が必要ですか?
ATMによるものは、機械装置のみで取引が完結するため、一定の事項を書いた帳簿のみの保存で仕入税額控除ができます(問103-2注1)。

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公式一次情報

本記事について。税理士監修前の概説です。個別の取引は条件によって扱いが変わるため、実際の申告は税務署や税理士へ確認してください。出典:国税庁。