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インボイスの交付義務・修正・写しの保存(発行する側のルール)

適格請求書発行事業者は、請求書を渡すだけでは終わりません。求められたら交付する義務、間違えたら修正して渡す義務、渡した書類の写しを7年間保存する義務があります。交付が免除される場合や、簡易請求書を使える業種も、消費税法と施行令の条文で整理します。

消費税・インボイス
編集:個人事業主のお金ラボ編集部 / 運営方針・出典

インボイス(適格請求書)の登録を受けると、受け取る側の事業者ではなく、発行する側として守る義務が生まれます。多くの記事は記載事項を中心に説明しますが、実務で困るのは「いつ渡すか」「間違えたらどうするか」「何を残すか」です。

登録事業者は、取引先の課税事業者から求められたら適格請求書を交付する義務があり、交付した書類の写しは、課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間保存します。誤りがあれば修正した書類を交付します。

発行する側の4つの義務(条文の整理)

消費税法57条の4は「適格請求書発行事業者の義務」を定めています。国税庁のタックスアンサー(No.6498)も、売り手の留意点として、交付義務と写しの保存義務を挙げています。条文の項ごとに整理すると、次の4つです。

義務内容条文
交付課税事業者の取引先から求められたとき、適格請求書を交付する57条の4第1項
返還の書類値引き・返品などをしたとき、適格返還請求書を交付する同条第3項
修正記載に誤りがあったとき、修正した書類を交付する同条第4項
保存交付した書類の写し(または電子データ)を保存する同条第6項

交付を求められる相手は、消費税の納税義務が免除されている事業者を除く「他の事業者」です。消費者への販売では、求められても交付義務は生じません。記載事項そのものは適格請求書の6つの記載事項で扱っています。

交付しなくてよい場合(3万円未満の交通機関・自動販売機など)

事業の性質上、交付が難しい取引は、施行令70条の9第2項で交付義務の対象外とされています。主なものは次のとおりです。

  • 税込3万円未満の、船舶・路線バス・鉄道・軌道による旅客の運送(条文は一般旅客定期航路事業、一般乗合旅客自動車運送事業、第一種・第二種鉄道事業、軌道法の運輸事業を列挙)
  • 卸売市場で、せり売や入札などの方法により行われる、出荷者から委託を受けた生鮮食料品等の卸売
  • 農業協同組合などが、組合員から販売の委託を受けて行う農林水産物の譲渡(譲渡する人を特定せずに行うもの)
  • 自動販売機による販売など、対価が通常少額で、不特定多数に行われ、交付が著しく困難なものとして財務省令で定めるもの

同じ条には、前受金を収入した日に売上とする特例などで、売上の時期が別になる場合の扱いも置かれています。個別の取引が当てはまるかは、国税庁のQ&Aと税務署で確認してください。

簡易請求書を使える業種

不特定多数に販売する業種は、適格請求書に代えて「適格簡易請求書」を交付できます(57条の4第2項)。対象は施行令70条の11に、次のとおり書かれています。

  • 小売業、飲食店業、写真業、旅行業
  • 一般乗用旅客自動車運送事業(タクシー。営業所のみで運送を引き受ける運賃が適用されるものを除く)
  • 駐車場業(不特定多数の人に駐車の場所を提供するもの)
  • 上記に準ずる事業で、不特定多数に資産の譲渡等を行うもの

簡易請求書は、買い手の氏名を書かなくてよく、税率ごとの消費税額等か適用税率のどちらかを書けばよい書類です。国税庁のタックスアンサー(No.6625)も、小売業・飲食店業・タクシー等の書類では、適用税率か消費税額等のどちらかの記載でよいとしています。

誤りがあったときの修正と返還インボイス

適格請求書・簡易請求書・返還請求書の記載に誤りがあったときは、書類を渡した相手に、修正した書類を交付します(57条の4第4項)。誤りに気づいても放置すると、受け取った側が仕入税額控除を受けにくくなります。

値引きや返品、販売奨励金のように、売上の金額を減らす取引では、適格返還請求書を交付します(同条第3項)。必要な記載は、登録番号、返還を行った年月日と元の取引の年月日、取引内容、返還額(税率ごとの合計)、消費税額等または適用税率です。

ただし、返還の税込額が1万円未満なら、返還請求書の交付は不要です(施行令70条の9第3項2号)。1万円以上の値引きが多い取引先がある場合は、請求書の様式に値引きの欄を設けておくと、あとから別の書類を作らずに済みます。売上の値引き・返品の消費税の扱いは売掛金・返品・値引きの消費税で、取引先が振込手数料を差し引いた場合は振込手数料を差し引かれたときの消費税で整理しています。

写しの保存期間と電子データでの提供

交付した適格請求書等の写しは、交付した日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間、納税地または取引に係る事務所等に保存します(施行令70条の13第1項)。たとえば12月決算の個人事業者が令和8年に交付した書類は、令和9年3月1日から7年間が保存の期間です。

紙で渡す代わりに、請求書に記載すべき事項の電子データを提供することも認められています(57条の4第5項)。電子データで提供した場合は、写しの代わりにそのデータを保存します。電子データの保存方法は財務省令で定められています。

電子で提供することが義務かどうか、Peppolとの関係は電子インボイス(Peppol)とはで整理しています。

電子帳簿保存法の考え方と合わせて確認が必要です。帳簿の電子保存は電子帳簿保存法の基本、書類全般の保存期間は法人の書類の保存期間で扱っています。

登録をやめたあとの請求書の扱いはインボイス登録をやめる手続き、これから登録する場合の流れはインボイスの登録方法にまとめています。

委託販売で受託者が代わりに適格請求書を出せる場合は、インボイスの媒介者交付特例で整理しています。

まとめ

  • 登録事業者は、課税事業者の取引先から求められたら適格請求書を交付する。消費者への販売では交付義務は生じない。
  • 税込3万円未満の旅客運送、卸売市場の委託販売、自動販売機などは、交付義務の対象外。
  • 小売業・飲食店業・写真業・旅行業・タクシー・駐車場業などは、簡易請求書を使える。
  • 記載に誤りがあれば、修正した書類を交付する。返還の税込額が1万円未満なら返還請求書は不要。
  • 交付した書類の写しは、課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間保存する。

電子で受け取った請求書データをファイル名や索引簿で探せるようにする方法は、電子取引データの検索要件で整理しています。

税率が変わる日をまたぐ請求書の書き方は、飲食料品の消費税率1%とインボイスの書き方で国税庁の例を確認できます。

公式一次情報

よくある質問

消費者に商品を売るときも、適格請求書を渡す義務がありますか?
義務はありません。交付義務は、免税事業者を除く他の事業者から求められたときに生じます。消費者への販売で求められても、条文上の義務の対象ではありません。
電車やバスの運賃は、インボイスを交付しなくてよいのですか?
税込3万円未満の鉄道・路線バスなどによる旅客の運送は、交付義務の対象外です。3万円以上の場合は、交付義務の免除に当たりません。
請求書の金額や税額を間違えたら、どうしますか?
渡した相手に、修正した適格請求書などを交付します。消費税法57条の4第4項が定める義務です。
値引きをしたときに、必ず書類を出す必要がありますか?
値引きなどの税込額が1万円未満なら、適格返還請求書の交付は不要です。1万円以上なら、必要な事項を記載した書類を交付します。
交付した請求書の写しは、何年保存しますか?
課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間です。電子データで提供した場合は、そのデータを保存します。
本記事について。専門家監修前の概説です。2026年10月15日時点の条文と公開情報にもとづく一般的な案内で、個別の税務の判断に代わるものではありません。

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