ガイド

電子インボイス(Peppol)とは|義務ではない・保存の決まり

電子インボイスは、適格請求書の記載事項を電子データで渡す方法です。Peppol(ペポル)はそのやり取りの国際規格で、日本の標準仕様がJP PINTです。使うことも受け取ることも義務ではなく、保存の決まりを条文と公式資料で整理します。

消費税・インボイス
編集:個人事業主のお金ラボ編集部 / 運営方針・出典

「電子インボイスに対応しないと取引できなくなるのか」と心配する声があります。結論から言うと、制度上の義務はありません。ただし、電子データで請求書を受け取った場合は、保存のしかたに決まりがあります。

電子インボイスの提供・受領も、Peppolの標準仕様(JP PINT)を使うことも、義務ではありません。電子データでやり取りしたなら、その電磁的記録を決められた方法で保存します。

電子インボイス・Peppol・JP PINTの意味

3つの語は、次のように使い分けられています。

語意味
電子インボイス適格請求書に記載すべき事項を、紙ではなく電磁的記録で提供するもの(消費税法57条の4第5項)
Peppol(ペポル)電子インボイスをやり取りするための国際的な仕組み。デジタル庁が日本のPeppol Authorityとして管理している
JP PINTPeppolネットワークでやり取りするデジタルインボイスの、日本の標準仕様

デジタル庁のJP PINTのページによると、標準仕様は3種類公開されています。適格請求書に対応するPeppol BIS Standard Invoice JP PINT、仕入明細書に対応するJP BIS Self Billing Invoice、区分記載請求書に対応するJP BIS Invoice for Non-tax Registered Businessesです。いずれも2026年6月8日にVer. 1.1.3へ更新・公表されています。

つまり、電子インボイスは「電子データで渡す」という広い言い方で、Peppolはその中の一つの方法です。メールで送るPDFの請求書も、適格請求書の記載事項を満たしていれば、電磁的記録による提供にあたります。

義務かどうか(デジタル庁の説明)

デジタル庁の「よくある質問:JP PINTについて(概要)」(2023年7月21日時点)は、次のように答えています。標準仕様を用いることは義務ではなく、いわゆる電子インボイスの提供・受領も義務ではありません。

同じ回答の注記では、適格請求書発行事業者は、課税事業者からの求めに応じて適格請求書を交付する義務はあるものの、電磁的記録での提供が義務付けられているわけではない、と説明されています。

  • 交付義務があるのは「適格請求書」で、紙か電子かは選べる
  • Peppolに対応するかどうかも、事業者が選べる
  • JP PINTのデータをやり取りしただけでは、直ちに仕入税額控除の要件を満たしたことにはならない(保存が必要)

FAQの日付は2023年7月21日で、同ページにも変更の可能性がある旨の断りがあります。導入を決める前に、デジタル庁の最新のページも確認してください。

条文での位置づけ(消費税法57条の4)

電子での提供は、消費税法57条の4に置かれています。

項内容
第5項適格請求書発行事業者は、書類の交付に代えて、記載すべき事項に係る電磁的記録を提供することができる。提供した事項に誤りがあれば、修正した書類を交付する義務(第4項)を準用する
第6項書類を交付し、または電磁的記録を提供した事業者は、政令で定めるところにより、書類の写しまたは電磁的記録を保存する。電磁的記録の保存は財務省令で定める方法による

第5項は「提供することができる」という書き方で、義務ではなく選択肢です。交付義務の全体はインボイスの交付義務・修正・写しの保存で整理しています。

電子で渡す側・受け取る側の保存

国税庁のインボイス制度に関するQ&Aには、電子データを扱うときの保存が3つの場面で書かれています。

場面保存の考え方Q&A
書面で渡し、自社システムで作ったデータを写しとして保存する電子帳簿保存法に基づき電磁的記録で保存できる。システム関係書類の備付け、出力できる環境、検索機能などの要件を満たす問80
電子データで提供を受けた側が、出力した書面で保存する整然とした形式・明瞭な状態で出力した書面を保存すれば、仕入税額控除の保存要件を満たす(消費税法施行規則15条の5第2項)問85
電子データで提供を受けた側が、そのままデータで保存する仕入税額控除を受けるには、その電磁的記録の保存が必要。タイムスタンプが付されたデータを受領する等の措置を講じる問102

問85の参考欄には、電子取引の電磁的記録について注意書きがあります。電子帳簿保存法では、令和4年1月1日以後の電子取引は、書面に出力して保存に代える措置が廃止されました。令和6年1月1日以後の電子取引は、要件に従った電子データの保存が必要です。

電子データを検索できるようにする方法は電子取引データの検索要件で、電子帳簿保存法の全体像は電子帳簿保存法の基本で扱っています。ファイル名や索引簿の具体的な付け方は、そちらを確認してください。

個人事業主・小規模法人の現実的な選び方

制度上の義務がないため、次のような整理が考えられます。個別の判断は、取引先と使っている会計ソフトの対応状況によって変わります。

  • 取引先から電子インボイスでの請求を求められていない場合は、これまでどおりの書面やPDFでも、記載事項を満たしていれば適格請求書になる
  • 取引先がPeppol対応のサービスを使っている場合は、先方に確認してから、自社のソフトが対応しているかを調べる
  • PDFなどで電子データを受け取っているなら、すでに電子取引の保存義務の対象になっている。Peppolを導入するかどうかとは別に、保存の仕組みを整える

日本でPeppolのサービスを提供する事業者は、デジタル庁が「日本のPeppol Certified Service Provider一覧」を公表しています(最終更新2026年10月2日)。費用や機能は事業者ごとに違うため、本記事では比較していません。

記載事項の6項目は適格請求書の6つの記載事項で、登録そのものの判断はインボイス登録すべきかで整理しています。

まとめ

  • 電子インボイスは、適格請求書の記載事項を電磁的記録で提供するもの。Peppolはその国際的な仕組みで、日本の標準仕様がJP PINT。
  • 電子インボイスの提供・受領も、JP PINTの利用も義務ではない(デジタル庁FAQ)。
  • 電子で提供した側は、書類の写しまたは電磁的記録を保存する(消費税法57条の4第6項)。
  • 電子で受け取った側は、出力した書面か、要件を満たした電子データのどちらかで保存する。

次に確認したい論点は、インボイス未登録で値下げを求められたときの線引きと2割特例です。

公式一次情報

よくある質問

電子インボイスに対応しないと、インボイス制度に違反しますか?
違反にはなりません。デジタル庁のFAQは、電子インボイスの提供・受領は義務ではないと説明しています。紙やPDFの請求書でも、適格請求書の記載事項を満たしていれば足ります。
Peppolを使わないと、PDFの請求書は電子インボイスと認められませんか?
標準仕様を用いることは義務ではないとされています。消費税法57条の4第5項は、記載すべき事項に係る電磁的記録を提供することを認めており、Peppol経由に限る書き方ではありません。
電子データで請求書を受け取ったら、印刷して保存すればよいですか?
仕入税額控除の保存要件では、整然とした形式・明瞭な状態で出力した書面の保存でも満たすとされています(国税庁Q&A問85)。ただし電子帳簿保存法では、令和6年1月1日以後の電子取引は要件に従った電子データの保存が必要です。両方を確認してください。
電子で請求書を渡したら、写しはどうしますか?
書類の写しに代えて、提供した電磁的記録を保存します(消費税法57条の4第6項)。保存の方法は財務省令で定められています。
Peppolのサービスはどこで探せますか?
デジタル庁が「日本のPeppol Certified Service Provider一覧」を公表しています。導入するかどうかは、取引先の対応状況を確認してから判断してください。
本記事について。専門家監修前の概説です。2026年10月19日時点の条文と公開情報にもとづく一般的な案内で、個別の税務の判断に代わるものではありません。