領収書の宛名が上様・空欄でも仕入税額控除できる?
宛名が「上様」や空欄の領収書で消費税の仕入税額控除を受けられるかを、消費税法と国税庁のQ&Aで整理します。宛名が不要な簡易インボイスを出せる業種、宛名が必要な取引、受け取ってから気づいたときの直し方を説明します。
インボイスコンビニやレストラン、タクシーの領収書は、宛名が空欄や「上様」のことがよくあります。インボイス制度が始まってから、この領収書で仕入税額控除を受けられるのかを迷う場面が増えました。
小売業・飲食店業などが交付する適格簡易請求書(簡易インボイス)は、法律上、宛名の記載が要りません(消費税法57条の4第2項)。一方、卸売や建設、事務所の家賃のような取引で受け取る通常の適格請求書は、宛名が記載事項に入っています。
適格請求書と簡易インボイスの記載事項の違い
適格請求書の記載事項は消費税法57条の4第1項に、適格簡易請求書の記載事項は同条2項に定められています。違いは、宛名と消費税額等の扱いです。
| 記載事項 | 適格請求書(1項) | 適格簡易請求書(2項) |
|---|---|---|
| 発行事業者の氏名または名称と登録番号 | 必要 | 必要 |
| 取引年月日 | 必要 | 必要 |
| 取引内容(軽減税率の対象なら、その旨) | 必要 | 必要 |
| 税率ごとに区分した合計額 | 必要 | 必要 |
| 消費税額等 | 必要 | 消費税額等と適用税率のどちらか一方でよい |
| 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称(宛名) | 必要 | 不要 |
国税庁も、受け取ったインボイスに宛名の記載がなくても、不備ではなく簡易インボイスである場合があると案内しています。宛名が空欄であることだけでは、その書類が使えないとは言えません。
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簡易インボイスを出せる業種
簡易インボイスを交付できる事業は、消費税法施行令70条の11に列挙されています。不特定多数の人に販売する業種が対象です。
| 区分 | 対象 |
|---|---|
| 1号 | 小売業、飲食店業、写真業、旅行業 |
| 2号 | 一般乗用旅客自動車運送事業(タクシー)。営業所のみで運送の引受けが行われるものとして認可を受けた運賃等が適用されるものは除く |
| 3号 | 駐車場業(不特定かつ多数の人に車両の駐車場所を提供するもの) |
| 4号 | 1〜3号に準ずる事業で、不特定かつ多数の人に資産の譲渡等を行うもの |
どの業種に当たるかは、請求書を受け取る側ではなく、交付する側の事業で決まります。ドラッグストアで事務用品を買ったときも、売手は小売業なので、宛名なしの簡易インボイスが出てきます。
宛名が必要になる取引
上の業種に当たらない売手は、簡易インボイスを選べず、宛名を記載した適格請求書を交付します。法人や個人事業主どうしの継続的な取引は、ほとんどがこちらです。
| 受け取る書類の例 | 宛名 |
|---|---|
| スーパー・コンビニ・飲食店・タクシーの領収書やレシート | 空欄でも簡易インボイスとして使える |
| 卸売業者、建設・工事、広告、士業などへの支払いの請求書・領収書 | 簡易インボイスの対象業種に当たらないため、宛名のある適格請求書が必要 |
| 事務所の家賃の請求書 | 同上(不動産の貸付けは、通常は上の業種に当たらないため) |
業種の判定には、取引の実態が関わります。判断に迷う場合は、売手に適格簡易請求書か適格請求書かを確認するか、税務署に相談してください。
宛名が抜けた請求書を受け取ったときの直し方
宛名が必要な取引なのに空欄だった場合、買手が自分で書き足すことは原則としてできません。国税庁Q&A問92は、売手に修正した適格請求書の交付を求め、それを保存することを原則としています。
例外として、買手が修正した事項を明記した仕入明細書等を作り、売手の確認を受けて保存する方法も認められています。この場合、売手は最初に交付した適格請求書の写しを保存する必要があります。
宛名を書き足してもらうだけで済むのか、再発行が必要なのかは、売手の発行ルールによります。後から頼むと手間が増えるので、支払いのときに宛名を伝えて記載してもらうのが確実です。
仕入税額控除のために保存するもの
仕入税額控除を受けるには、帳簿と請求書等の両方を保存します。請求書等には、適格請求書、適格簡易請求書、仕入明細書等が含まれます(国税庁タックスアンサーNo.6496)。
保存期間は7年間です。数え始めは、帳簿ならその閉鎖の日、請求書等なら受け取った日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日です。6年目と7年目は、いずれか一方を保存すれば足ります。
従業員が立て替えた領収書の宛名が個人名のときは、法人の立替経費精算とインボイスを読んでください。領収書をなくしたときは領収書を紛失したときの経理に書いています。
まとめ
- 簡易インボイスは宛名が記載事項に入っていない(消費税法57条の4第2項)
- 交付できるのは、小売業・飲食店業・写真業・旅行業、タクシー、駐車場業など不特定多数が相手の事業(施行令70条の11)
- 卸売・建設・家賃などの取引では、宛名のある適格請求書が必要
- 宛名が抜けた請求書は、買手が自分で直さず、売手に修正版を求めるのが原則(Q&A問92)
- 請求書等は7年間保存する(6年目と7年目はどちらか一方)
次に読むなら、適格請求書(インボイス)の書き方で記載事項と端数処理、仕入税額控除を受ける要件で帳簿と請求書等の保存を確認できます。交付する側の義務はインボイスの交付義務・修正・写しの保存にあります。
公式一次情報
- 消費税法 第57条の4(適格請求書発行事業者の義務)(適格請求書と適格簡易請求書の記載事項を掲載。2026-10-25確認)
- 消費税法施行令 第70条の11(適格簡易請求書の交付が認められる事業の範囲)(小売業、飲食店業、写真業、旅行業、タクシー、駐車場業などを掲載。2026-10-25確認)
- 国税庁「インボイス制度について」(簡易インボイスは宛先を省略でき、宛名がなくても不備ではない場合があることを掲載。2026-10-25確認)
- 国税庁「インボイス制度に関するQ&A 問92(交付を受けた適格請求書に誤りがあった場合の対応)」(買手が自ら追記・修正できない原則と、仕入明細書等による対応を掲載。2026-10-25確認)
- 国税庁タックスアンサーNo.6496「仕入税額控除をするための帳簿及び請求書等の保存」(保存が必要な書類と7年間の保存期間を掲載。2026-10-25確認)
よくある質問
- 領収書の宛名が「上様」でも仕入税額控除はできますか。
- 売手が小売業や飲食店業など簡易インボイスを交付できる事業で、登録番号などの記載事項がそろっていれば、宛名が上様や空欄でも適格簡易請求書として保存できます。売手が対象業種でない場合は、宛名のある適格請求書が必要です。
- 宛名が空欄の領収書に、自分で会社名を書き足してもよいですか。
- 国税庁Q&A問92は、受け取った適格請求書の記載事項を買手が自ら修正することを原則として認めていません。売手に修正版の交付を求めるか、修正事項を明記した仕入明細書等を作って売手の確認を受ける方法があります。
- 簡易インボイスは税額が書かれていなくてもよいのですか。
- 適格簡易請求書は、消費税額等と適用税率のどちらか一方が記載されていればよいと、消費税法57条の4第2項に定められています。
- タクシーの領収書は宛名なしで使えますか。
- タクシーは施行令70条の11の2号で簡易インボイスの対象です。ただし、営業所のみで運送の引受けが行われるものとして認可を受けた運賃等が適用されるものは除かれます。

