法人の立替経費精算とインボイス|従業員・役員が立て替えた領収書で仕入税額控除を受ける条件
従業員や役員が自分の財布やカードで払った経費を会社が精算するときに、消費税の仕入税額控除を受けるために何を保存するかを、国税庁のインボイス制度Q&Aで整理します。宛名が個人名の領収書、立替金精算書、帳簿だけで足りる支払いの違いを表にしています。
インボイス法人成りすると、会社の経費を代表者や従業員が個人のカード・現金で先に払い、あとから会社が精算する場面が増えます。インボイス制度では、この立替払いの領収書をそのまま保存するだけでは、仕入税額控除に足りないことがあります。
宛名が従業員個人になっている適格簡易請求書は、従業員名簿などを一緒に保存していれば、会社の仕入税額控除に使えます(国税庁Q&A問94-2、令和6年4月追加)。名簿がなく誰が立て替えたか特定できないときは、立替金精算書が要ります。
立替払いで問題になること
仕入税額控除を受けるには、原則として、取引先が交付した適格請求書(インボイス)の保存が要ります。立替払いでは、領収書の宛名が会社ではなく立て替えた人になっているため、「会社の課税仕入れ」と言えるのかが論点になります。
| 場面 | 会社が保存するもの | 根拠 |
|---|---|---|
| 従業員が事業用の消耗品を購入し、会社が代金を負担。宛名が従業員名の適格簡易請求書 | その請求書+従業員名簿等(名簿がなければ従業員作成の立替金精算書) | Q&A問94-2 |
| 取引先が経費を立て替え、請求書が取引先宛 | その適格請求書+立替金精算書等 | Q&A問94 |
| 3万円未満の電車・バス・飛行機 | 一定の事項を記載した帳簿のみ | Q&A問105 |
| 通常必要と認められる出張旅費・宿泊費・日当・通勤手当 | 一定の事項を記載した帳簿のみ | タックスアンサーNo.6496 |
従業員が立て替えた領収書の保存(問94-2)
国税庁Q&A問94-2は、従業員が事業に必要な消耗品を自分で購入し、その適格簡易請求書と引き換えに会社が代金を支払う場合を扱っています。宛名には従業員名が書かれています。
国税庁の答えは、宛名に仕入税額控除を行う事業者以外の名前があるときは、原則として、そのまま保存しても仕入税額控除はできない、というものです。
ただし、その従業員が会社に所属していることが分かる名簿(電磁的記録でも可)を一緒に保存していれば、仕入税額控除を行ってよいとされています。名簿等がなく、立て替えた人を特定できないときは、従業員が作成した立替金精算書の交付を受けて保存します。
- この問答は「従業員」を想定しています。代表者や役員が立て替える場合の名簿の扱いは、このQ&Aに書かれていません
- 名簿等は、立て替えた日に在籍していたことが分かる形で残します
- 領収書そのものが適格請求書または適格簡易請求書の要件を満たしていることが前提です(登録番号がない領収書は別の問題になります)
立替金精算書が必要になる場合(問94)
国税庁Q&A問94は、取引先B社が経費の支払先C社に代金を立て替え、C社の適格請求書がB社宛に出た場合です。A社がB社からその適格請求書を受け取って保存しても、それだけでは、C社からA社に交付された適格請求書とは扱えません。
B社から立替金精算書等の交付を受け、C社からの課税仕入れがA社のものだと明らかにできれば、その適格請求書と精算書の保存で、請求書等の保存要件を満たします(消費税法基本通達11-6-2)。
立て替えた側が適格請求書発行事業者でなくても、支払先のC社が適格請求書発行事業者であれば、仕入税額控除は行えます。精算書に、立て替えた側の登録番号を書く必要はありません。
精算書に載せる消費税額は、合計額を税率で割り戻して端数処理する方法と、料金ごとに割り戻して端数処理して合計する方法のどちらかで計算します。国税庁の記載イメージでは、内容、税込金額、消費税額、備考を並べた表になっています。
領収書がなくても帳簿だけで足りる支払い
立替払いの内容が、請求書等をもらうのが難しい取引にあたるなら、一定の事項を記載した帳簿だけの保存で仕入税額控除が認められます。問94も、この場合は適格請求書と立替金精算書の保存は不要としています。
| 取引 | 条件 |
|---|---|
| 公共交通機関の運賃 | 税込3万円未満(1回の取引の価額で判定)。3万円以上は適格請求書の保存が必要 |
| 出張旅費・宿泊費・日当・通勤手当 | 従業員等に支給する、通常必要と認められるもの |
| 自動販売機・自動サービス機での購入 | 税込3万円未満 |
| 少額特例 | 税込1万円未満の課税仕入れ。基準期間の課税売上高1億円以下または特定期間の課税売上高5,000万円以下の事業者が、令和5年10月1日から令和11年9月30日までに行うもの |
帳簿には、取引の年月日、内容、金額などに加えて、どの特例にあたるかを書きます。記載事項は国税庁Q&A問110とタックスアンサーNo.6497にあります。
出張旅費の非課税の範囲は出張旅費規程と日当の非課税の範囲で整理しています。少額特例はインボイスの少額特例に詳しく書いています。
役員が立て替えた場合の考え方
代表者が事業用の経費を個人のカードで払う場面は、一人で経営する会社ほど多くなります。国税庁Q&Aには、従業員の場合(問94-2)と取引先の場合(問94)の問答があり、役員が立て替えた領収書の保存方法を直接示した問答は、この記事で確認した範囲にはありません。
確実に残すには、宛名が会社名の領収書を受け取るか、役員本人が作成した立替金精算書を、領収書に添えて保存する方法が考えられます。これは問94の考え方を当てはめた当サイトの整理で、国税庁が役員について明示したものではありません。個別の扱いは税理士に確認してください。
精算せずに立替分が積み上がると、会社の帳簿では役員への債務になります。役員と会社の間でお金をやり取りするときの処理は役員からの借入金の処理で整理しています。経費として認められる範囲は法人の経費の範囲が基本です。
精算ルールを決めておく順序
- 立替精算の対象を決める(事業に必要なものだけ、私的な支出は含めない)
- 領収書は、適格請求書または適格簡易請求書の要件を満たすものをもらう(登録番号の有無を確認)
- 従業員名簿等を、在籍が分かる形で電磁的記録でも保存しておく
- 名簿等で立替者を特定できない場合や、他社・役員が立て替えた場合は、立替金精算書を作って領収書に添える
- 3万円未満の電車賃、出張旅費など帳簿のみで足りる支払いは、帳簿に特例の区分を書く
- 精算の締め日と支払日を社内で決め、立替分を翌月までに精算する
まとめ
- 宛名が従業員名の適格簡易請求書は、従業員名簿等の保存で仕入税額控除に使える(問94-2)
- 名簿がなく立替者を特定できないときは、立替金精算書の保存が必要
- 他社が立て替えた場合は、適格請求書と立替金精算書の保存で足りる。立て替えた側の登録番号は不要(問94)
- 3万円未満の公共交通機関、通常必要な出張旅費等は帳簿のみで足りる
- 役員が立て替えた場合を直接示す問答は確認できず、精算書を添える方法は当サイトの整理
公式一次情報
- 国税庁「インボイス制度に関するQ&A 問94-2(従業員が立替払をした際に受領した適格簡易請求書での仕入税額控除)」(従業員名簿等または立替金精算書の保存を掲載。2026-10-09確認)
- 国税庁「インボイス制度に関するQ&A 問94(立替金)」(立替金精算書の保存、立替者の登録番号が不要なこと、帳簿のみで足りる場合を掲載。2026-10-09確認)
- 国税庁「インボイス制度に関するQ&A 問105(公共交通機関による旅客の運送)」(3万円未満は帳簿のみ、3万円以上は適格請求書の保存を掲載。2026-10-09確認)
- 国税庁タックスアンサーNo.6496「仕入税額控除をするための帳簿及び請求書等の保存」(帳簿のみで足りる取引の一覧、少額特例の期間と要件を掲載。2026-10-09確認)
よくある質問
- 従業員が立て替えた領収書の宛名が個人名でも、仕入税額控除はできますか。
- 国税庁Q&A問94-2では、その従業員が会社に所属していることが分かる名簿等を一緒に保存していれば、仕入税額控除を行ってよいとされています。名簿等がなく立替者を特定できない場合は、従業員が作成した立替金精算書の保存が必要です。
- 立替金精算書にはインボイスの登録番号が必要ですか。
- 国税庁Q&A問94では、立て替えた側が適格請求書発行事業者でなくても、支払先が適格請求書発行事業者であれば仕入税額控除ができ、精算書に立替者の登録番号を書く必要はないとされています。
- 電車やバスの立替は、領収書が必要ですか。
- 税込3万円未満の公共交通機関の運賃は、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。3万円以上は適格請求書の保存が必要です(Q&A問105)。
- 代表者が立て替えた経費はどう保存すればいいですか。
- 国税庁Q&Aに、役員が立て替えた場合を直接示した問答は、この記事の確認範囲にはありません。宛名が会社名の領収書をもらうか、本人作成の立替金精算書を添える方法がありますが、扱いは税理士に確認してください。
- 1万円未満の立替なら領収書は不要ですか。
- 基準期間の課税売上高が1億円以下または特定期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者は、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの課税仕入れで税込1万円未満のものについて、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。