免税から課税になるときの在庫の消費税調整|控除額と保存要件
免税事業者だった間に仕入れた在庫を、課税事業者になった課税期間の仕入税額控除に入れる調整を整理します。
国税庁の制度免税事業者だった間に仕入れた在庫には、仕入れ時に払った消費税を引く手続きがありません。課税事業者になる日に在庫が残っていると、その在庫に含まれる消費税を、課税事業者になった課税期間の仕入税額控除に入れられる場合があります。
対象の在庫、控除額の計算式、書類の保存期間と、逆に免税事業者になるときの扱いを説明します。
棚卸資産の調整とは
国税庁のタックスアンサーNo.6491は、この調整を「免税事業者が課税事業者となった場合等の棚卸資産に係る仕入控除税額の調整」として案内しています。
課税事業者になる場面は、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えたとき、課税事業者選択届出書を出したとき、インボイス登録をしたときなどです。
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対象になる在庫
対象は、免税だった期間中に国内で課税仕入れとして譲り受けた棚卸資産と、課税事業者になる前日にまだ持っているものです。輸入した課税貨物や、それを原材料にして作った棚卸資産も含まれます。
棚卸資産には、商品、製品、半製品、仕掛品、原材料、貯蔵中の消耗品などが当たります。
- 課税事業者になる前日までに売れた在庫や、使い切った原材料は対象外です。
- 免税期間より前に仕入れた在庫は、この調整の対象になりません。
控除額の計算式と例
控除に入れる額は、棚卸資産の取得価額に110分の7.8を掛けて求めます。軽減税率の対象品目は108分の6.24です。取得価額は、仕入れの支払対価に、引取運賃などの購入費用と販売・消費の直接費用を加えた額です。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 課税事業者になる前日の在庫の取得価額(税込・標準税率) | 1,100,000円 |
| 計算式 | 1,100,000円 × 7.8 ÷ 110 |
| 課税事業者になった課税期間の仕入税額控除に加える額 | 78,000円 |
上の数字は計算方法を示すための例です。実際の取得価額は、仕入れの請求書や帳簿から個別に確認してください。国税庁の案内には具体的な計算例はなく、計算式と対象の定義が示されているだけです。
控除を入れる課税期間は、課税事業者となった課税期間です。
書類の保存要件
この調整は、書類を保存しないと受けられません。消費税法第36条第2項と施行令第54条第3項は、在庫の品名、数量、取得に要した費用の明細を書類に記載して保存することを求めています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 書類に記載する事項 | 品名・数量・取得に要した費用の明細 |
| 保存期間 | 書類を作成した日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間 |
| 保存しなかった場合 | 原則としてその棚卸資産に調整は適用されない(災害などやむを得ない事情を証明した場合を除く) |
5年を経過したあとの保存は、財務大臣の定める方法(電子的な保存など)によることができます(施行令第54条第5項)。
課税から免税になるときの扱い
逆に課税事業者が免税事業者になるときは、消費税法第36条第5項が適用されます。免税事業者となる日の前日の属する課税期間中に仕入れた棚卸資産の税額は、その期間の仕入税額控除に含めません。
この調整の対象は、免税になる前日の属する課税期間中の仕入れ分です。直前の課税期間に簡易課税制度の適用を受けるときは、仕入控除税額の調整は不要と国税庁は案内しています。
簡易課税の仕組みは簡易課税と本則課税で整理しています。
使う前の注意点
- インボイス登録で課税事業者になる場合も、調整の仕組みは同じです。ただし登録の場合だけを分けた記載は、国税庁のこのページでは確認できませんでした。登録日をまたぐ在庫は、税務署または税理士に確認してください。
- 個人事業から法人への引継ぎ(法人成り)で棚卸資産を譲る場合は、相続・合併・分割を扱う第36条第3項の列挙には含まれません。国税庁の説明で個別に確認できていないため、法人側の控除の扱いは事前に確認してください。
- 割合は令和8年4月1日現在の国税庁の案内に基づきます。税率が変わる期間があるため、申告時点の最新の案内で確認してください。
個人から法人へ在庫を移すときの所得税側の扱いは個人から法人への資産の引継ぎ、課税事業者になる判定は「消費税はいつから?」、インボイス登録の判断はインボイス登録の判断で整理しています。
まとめ
- 免税期間中に仕入れた在庫を、課税事業者になる前日に持っていれば、消費税額を仕入税額控除に入れられる。
- 控除額は取得価額 × 7.8 ÷ 110(軽減税率は6.24 ÷ 108)。
- 入れられる課税期間は、課税事業者となった課税期間だけ。
- 品名・数量・費用の明細の書類を、書類を作成した日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間保存する。
- 免税事業者になるときは、前日の課税期間中の仕入れ分が控除から外れる。直前が簡易課税なら調整は不要。
課税期間を短縮する選択は消費税の課税期間の特例、各方式の納税額は消費税4方式の比較シミュレーターで確認できます。
公式情報
- 国税庁「No.6491 免税事業者が課税事業者となった場合等の棚卸資産に係る仕入控除税額の調整」(対象、計算式、免税事業者となる場合)
- e-Gov法令検索「消費税法」(第36条)
- e-Gov法令検索「消費税法施行令」(第54条:取得価額、書類の保存)
よくある質問
- 免税事業者から課税事業者になるとき、在庫の消費税は引けますか?
- 免税だった期間中に仕入れた棚卸資産を、課税事業者になる前日に持っていれば、その消費税額を課税事業者となった課税期間の仕入税額控除に入れられます(出典:国税庁)。
- 棚卸資産の調整の控除額はどう計算しますか?
- 棚卸資産の取得価額に110分の7.8を掛けます。軽減税率の対象品目は108分の6.24です(出典:国税庁)。
- 棚卸資産の調整に必要な書類と保存期間は?
- 品名・数量・取得に要した費用の明細を書類に記載し、書類を作成した日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間保存します。保存がないと原則として適用されません(出典:国税庁、消費税法施行令)。
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