法人設立時の資本金はいくらにする?1,000万円の壁と4つの判断軸
消費税の納税義務・登録免許税・許認可の財産要件・法人住民税の均等割という、金額で結果が変わる4点から整理します。
法人化(法人成り)資本金の額に法律上の下限はありませんが、金額の置き方で税金・登記費用・許認可の可否が実際に変わります。設立してから変えるには登記や株主総会の手続きが必要になるため、決める前に条件を確認しておく価値があります。
本記事では、公式の一次情報で金額基準がはっきりしている4つの論点を順に整理します。個別の金額判断は税理士・司法書士へご確認ください。
| 判断軸 | 効いてくる金額 | 効果 |
|---|---|---|
| 消費税の納税義務 | 期首の資本金1,000万円 | 1,000万円以上だと設立1期目から課税事業者 |
| 設立登記の登録免許税 | 株式会社2,143万円/合同会社857万円が分岐点 | 資本金の額の0.7%と最低額(15万円・6万円)の大きい方 |
| 許認可の財産要件 | 業種ごとに個別(建設業500万円等) | 資本金ではなく自己資本・基準資産額で判定 |
| 法人住民税の均等割 | 資本金等の額の区分 | 赤字でも区分に応じた年額がかかる |
最低資本金の規制は廃止されている
会社法の施行前は、株式会社は1,000万円、有限会社は300万円の最低資本金が必要でした。法務省は会社法施行に伴うQ&Aで、会社法では最低資本金規制が廃止され、株式会社であっても資本金1円で設立することが可能になったと説明しています。
したがって「いくら必要か」という下限の問題ではなく、「いくらに置くと何が起きるか」という設計の問題になります。以下の4点は、いずれも公式資料で金額基準が明示されている論点です。
1,000万円以上にすると設立1期目から消費税がかかる
新設法人は設立1期目・2期目に基準期間がありませんが、それだけで消費税が免除されるわけではありません。国税庁は、その事業年度開始の日における資本金の額または出資の金額が1,000万円以上であるときは納税義務が免除されないとしています。
つまり資本金1,000万円は、設立1期目の消費税で最も分かりやすい分岐点です。1,000万円未満で設立しても、2期目の期首に増資して1,000万円以上になれば2期目は課税事業者になります。
また資本金が1,000万円未満でも、免除されない場合があります。他の者に株式等の50%超を支配されていて、その支配する者の基準期間相当期間の課税売上高が5億円超などの要件に当てはまると、「特定新規設立法人」として免除されません。令和6年10月1日以後に開始する課税期間では、売上等の合計額50億円超という判定も加わりました。
設立1期目・2期目の判定手順の全体像は法人成り後の消費税の免税判定で詳しく整理しています。インボイス登録を予定している場合は登録の時点で課税事業者になるため、法人成りとインボイス登録も合わせて確認してください。
登録免許税は資本金の額の0.7%で決まる
設立登記の登録免許税は、資本金の額に対する定率と最低額のどちらか大きい方です。国税庁の税額表では、株式会社の設立登記は資本金の額の1,000分の7で、15万円に満たないときは1件につき15万円とされています。
合同会社も税率は同じ1,000分の7ですが、最低額は1件につき6万円です。最低額で収まる資本金の上限は、株式会社が約2,143万円、合同会社が約857万円という計算になります。
この範囲内であれば、資本金をいくらに置いても登録免許税は変わりません。市区町村の特定創業支援等事業の証明書がある場合は軽減される制度もあるため、設立予定地で使えるかは登録免許税を半額にする特定創業支援等事業の条件と手順で確認してください。会社形態そのものの選び方は合同会社と株式会社の違い、設立手続き全体の流れは法人化の手続きで解説しています。
設立登記の登録免許税は、法人税法施行令14条1項1号が創立費の例に挙げています。償却のしかたは法人の創立費・開業費の経理処理で整理しています。
許認可の財産的基礎の判定:資本金ではなく自己資本・基準資産額
許認可が必要な業種では財産的な要件が課されますが、判定に使われるのは資本金の額ではなく、貸借対照表から計算する自己資本や基準資産額です。資本金を積んでも設立費用や初期の赤字で純資産が減れば、要件を満たさなくなることがあります。
国土交通省は、一般建設業の許可について「自己資本が500万円以上であること」「500万円以上の資金調達能力を有すること」「許可申請直前の過去5年間許可を受けて継続して営業した実績を有すること」のいずれかに該当することを財産的基礎の要件としています(建設業法第7条第4号)。特定建設業はさらに厳しく、次の4つをすべて満たす必要があります(同法第15条第3号)。資本金の額が2,000万円以上、自己資本の額が4,000万円以上、欠損の額が資本金の20%以内、流動比率が75%以上です。
労働者派遣事業では、厚生労働省の都道府県労働局が資産要件を3つ示しています。なお「基準資産額」とは、資産の総額から繰延資産・営業権を引き、さらに負債の総額を引いた額です。(1) 基準資産額が、2,000万円に事業所数を掛けた額以上であること。(2) 基準資産額が、負債の総額の7分の1以上であること。(3) 自己名義の現金・預金が、1,500万円に事業所数を掛けた額以上であることです。
- 資本金を要件額ちょうどに設定しても、設立費用の支出で純資産が下回ることがある。
- 要件の対象・金額は業種ごとに異なるため、申請先の所管官庁・労働局の最新の基準を確認する。
- 許認可を引き継ぐ形で法人化する場合は、個人事業の許可がそのまま移らないことがある。
個人事業で取得済みの許認可を法人へ移すときの流れは、法人成りと許認可の引き継ぎで扱っています。
法人住民税の均等割は資本金等の額の区分で変わる
法人住民税の均等割は、利益が出ていなくても事務所があればかかります。東京都主税局は、均等割は決算の状況にかかわらず資本金等の額および従業者の数に応じて課税されると説明しています。
区分は資本金等の額と従業者数の組み合わせで決まり、税率表は自治体ごとに公表されています。資本金を大きくすると上の区分に移り、赤字の年でも毎年の固定費が増える点が判断材料になります。
均等割を含めた法人設立後のランニングコストの考え方は法人成りのデメリット、赤字でも必要な申告の流れは法人の決算・申告で確認できます。
設立後に資本金を増やす手続きと登録免許税は法人の増資の手続きと費用で扱っています。
まとめ
- 会社法で最低資本金規制は廃止され、株式会社でも資本金1円で設立できる(法務省)。
- 期首の資本金が1,000万円以上だと、基準期間がなくても消費税の納税義務は免除されない(国税庁)。
- 設立登記の登録免許税は資本金の額の1,000分の7で、最低額は株式会社15万円・合同会社6万円(国税庁)。
- 一般建設業の財産的基礎は自己資本500万円以上等、労働者派遣事業は基準資産額2,000万円以上等で、いずれも資本金ではなく純資産ベースの判定。
- 法人住民税の均等割は赤字でもかかり、資本金等の額と従業者数の区分で年額が決まる。
法人化した場合の税負担の全体像は法人成りシミュレーターで試算できます。設立前後にやることの順序は法人成りの進め方にまとめています。
個人のお金を会社へ入れるときの出資と貸付の違いは、法人成り後の個人の事業用口座の扱いを参照してください。貸付(役員借入金)にした場合の登録免許税・均等割との比較は役員借入金とはで解説しています。
公式一次情報
- 法務省「会社法の施行に伴う会社登記についてのQ&A」(最低資本金規制の廃止、資本金1円での設立)
- 国税庁「No.6531 新規開業又は法人の新規設立のとき」(期首資本金1,000万円以上・特定新規設立法人の要件)
- 国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」(設立登記の税率1,000分の7と最低額15万円・6万円)
- 国土交通省「許可の要件」(一般建設業・特定建設業の財産的基礎、建設業法第7条第4号・第15条第3号)
- 厚生労働省 大阪労働局「労働者派遣事業許可申請に必要な資産要件」(基準資産額2,000万円・現金預金1,500万円・負債の7分の1)
- 東京都主税局「法人事業税・法人都民税」(均等割は決算の状況にかかわらず資本金等の額と従業者数で課税)
よくある質問
- 資本金は1円でも会社を設立できますか?
- 会社法では最低資本金規制が廃止されており、株式会社であっても資本金1円で設立することが可能とされています(出典:法務省)。
- 資本金1,000万円が分かれ目と言われるのはなぜですか?
- 事業年度開始の日における資本金の額または出資の金額が1,000万円以上であるときは、基準期間がない新設法人でも消費税の納税義務が免除されないためです(出典:国税庁)。
- 資本金を増やすと設立登記の費用も増えますか?
- 設立登記の登録免許税は資本金の額の1,000分の7ですが、株式会社は15万円、合同会社は6万円という最低額があり、その金額に達するまでは資本金を変えても税額は変わりません(出典:国税庁)。
- 許認可の要件は資本金の額で判定されますか?
- 一般建設業の財産的基礎は自己資本500万円以上等、労働者派遣事業は基準資産額2,000万円以上等とされており、資本金の額ではなく貸借対照表から計算する純資産ベースで判定されます(出典:国土交通省・厚生労働省)。