会社設立の資本金の払込み手順と払込証明書の作り方(通帳の写し・合同会社の出資金領収書)
法人成りで会社を作るとき、資本金は設立登記の前に自分の口座へ振り込みます。法務局の記載例にもとづいて、払込みの流れ、払込証明書に付ける通帳の写し、合同会社の出資金領収書を整理します。
法務局の記載例・会社法にもとづく会社は設立の登記をした時に成立します(会社法49条・579条)。そのため、資本金の払込みの時点では、会社名義の口座はまだ作れません。出資する人(発起人)の口座へ入金し、その記録を払込みの証明として登記申請書に付けるのが基本の形です。
この記事では、株式会社と合同会社に分けて、払込みの手順と、法務局の記載例が求める書類の作り方を整理します。資本金をいくらにするかは資本金の決め方、設立後に事業用の口座を開く流れは事業用口座の移し方を参照してください。
払込みの流れ(株式会社)
会社法34条1項は、発起人は設立時発行株式の引受け後、遅滞なく、出資に係る金銭の全額を払い込まなければならないと定めています。払込みは、発起人が定めた銀行等の払込みの取扱いの場所でする決まりです(同条2項)。
法務省の発起設立の案内では、出資の履行が完了したあとに、設立時取締役を選任する順番です(会社法38条1項)。つまり、払込みは取締役の選任より前の手順です。
| 順番 | やること | 根拠・書類 |
|---|---|---|
| 1 | 各発起人が株式を引き受け、出資額を決める | 会社法25条2項・32条1項(定款または発起人全員の同意) |
| 2 | 発起人の口座へ出資額を全額振り込む | 会社法34条(通帳の記録が証明の元になる) |
| 3 | 設立時取締役などを選任する | 会社法38条1項(出資の履行が完了した後) |
| 4 | 払込みを証明する書面を作り、登記申請書に付ける | 商業登記法47条2項5号 |
| 5 | 設立の登記を申請する。登記した日に会社が成立する | 会社法49条 |
現物出資や財産引受けなどを定款に定める場合は、検査役の調査が別に必要になることがあります(会社法33条)。この記事は、金銭だけを出資する一般的な設立を対象にしています。
どの口座に振り込むか
設立前は会社の口座がないため、発起人の個人の口座に振り込みます。法務省の通達(平成29年民商第41号)は、預金通帳の口座名義人は、発起人のほか、設立時取締役(設立時代表取締役である者を含む)でもよいとしています。
口座名義人が発起人ではなく設立時代表取締役である場合は、払込金の受領を委任したことがわかる書面(委任状)を付けます。法務局の記載例の注意書きにも、この場合は委任状を添付すると書かれています。
払込証明書と通帳の写しの作り方
法務局の株式会社の記載例(発起設立・取締役会を設置しない会社)では、払込みを証する書面は、次の2点を合わせて作ります。
- 証明書:設立時代表取締役が作成します。「当会社の設立時発行株式については以下のとおり、全額の払込みがあったことを証明します」と書き、設立時発行株式数、払込みを受けた金額、日付、会社名、設立時代表取締役名を入れます。
- 預金通帳の写し:口座名義人が判明する部分を含めて、証明書と合わせて綴じます。
通帳の写しの代わりに、取引明細票、取引履歴照会票、払込金受取書、インターネットバンキングの取引状況の画面を印刷したものも使えます。この場合は、払込先の金融機関名、口座名義人名、振込日、振込金額が書かれている必要があります。
通帳などの写しは、入金または振込みの部分にマーカーや下線を引き、払い込まれた日と金額がわかるようにします。ネットバンキングを使う人は、口座名義と金融機関名が画面に入っているか、印刷の前に確認してください。
発起設立の場合、銀行が発行する払込金保管証明書は、記載例の要件には入っていません。銀行の証明書が出てくるのは、記載例では、変態設立事項がある場合の調査報告書の例に限られます。
合同会社の場合(出資金領収書)
合同会社は、社員になる人が、定款の作成後、設立の登記をする時までに、出資に係る金銭の全額を払い込みます(会社法578条)。株式会社のような払込みの取扱いの場所の指定は、この条文にはありません。
法務局の合同会社の記載例には、払込みがあったことを証する書面として、次の2種類の例があります。
- 出資金領収書:「○○合同会社の出資金として領収しました」と書き、代表社員が作成して、出資する有限責任社員あてに出します。
- 払込証明書:「当会社の資本金については以下のとおり、全額の払込みがあったことを証明します」と書く形です。
記載例の注意書きでは、取引明細表や預金通帳の写し(口座名義人が判明する部分を含む)、代表社員が作成した出資金領収書などを合わせて綴じ、振込みの部分にマーカーや下線を付けるとされています。
資本金の払込みにあてる資金は、日本政策金融公庫の創業融資の対象外です。設立後の融資は法人設立後の創業融資を参照してください。
やってはいけない払込み
会社法965条は、発起人や取締役などの一定の立場の人(会社法960条1項1号から7号)が、株式の発行に係る払込みを仮装するために預合いを行ったときの罰則として、5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金、またはその併科を定めています。預合いに応じた者も同じ扱いです。
実際には資本金を用意していないのに、通帳の記録だけを整える払込みは、払込みの証明にならないおそれがあります。出資額は、事業を始めるために実際に使える資金として用意してください。
金額の決め方は、設立後の登録免許税や消費税の納税義務にも影響します。資本金の決め方で基準を確認してから、振り込む額を決めてください。
まとめ
- 会社は設立の登記で成立するため、払込み時点では会社名義の口座はない。発起人(または設立時取締役)の口座に出資額を全額振り込む。
- 株式会社は、設立時代表取締役が作る証明書に、口座名義人がわかる通帳の写しなどを綴じて、払込みを証する書面にする。
- 写しは、払込日と金額がわかるようにマーカーや下線を付ける。口座名義人が設立時代表取締役の場合は委任状を付ける。
- 合同会社は、代表社員が作る出資金領収書または払込証明書と、通帳の写しなどを綴じる。
- 払込みを仮装する預合いには、会社法965条の罰則がある。
公式一次情報
- 法務局「株式会社設立登記申請書(発起設立・取締役会非設置)の記載例」(払込みを証する書面の証明書の例、通帳の写しなどの添付、マーカーや下線、委任状の注意書きを掲載。2026-10-08確認)
- 法務局「合同会社設立登記申請書の記載例」(出資金領収書と払込証明書の例、注意書きを掲載。2026-10-08確認)
- 法務省「株式会社の設立(発起設立)の手続」(出資の履行、払込みの取扱いの場所、設立時取締役の選任の順番を掲載。2026-10-08確認)
- e-Gov法令検索「会社法」(34条、38条、49条、578条、579条、965条。2026-10-08確認)
- e-Gov法令検索「商業登記法」(47条2項5号の払込みがあったことを証する書面。2026-10-08確認)
よくある質問
- 資本金は会社の口座に振り込めますか?
- 設立の登記前は会社が成立していないため(会社法49条)、会社名義の口座は作れません。発起人の口座などに振り込み、その記録を払込みの証明にします。
- 払込証明書は誰が作りますか?
- 株式会社の記載例では、設立時代表取締役が作成します。合同会社では、代表社員が作る出資金領収書か払込証明書の例が示されています。
- 通帳の全ページを写す必要がありますか?
- 記載例が求めるのは、口座名義人が判明する部分を含む写しです。表紙などの名義がわかる部分と、払込みの行を含めて写し、払込日と金額にマーカーや下線を付けます。
- ネットバンキングの画面でもよいですか?
- 記載例では、取引状況の画面を印刷したものも使えるとされています。払込先の金融機関名、口座名義人名、振込日、振込金額が載っていることが条件です。
- 家族の口座に振り込んでもよいですか?
- 通達が口座名義人として挙げているのは、原則として発起人と設立時取締役です。名義がそれ以外の人の口座は、認められるか、窓口の法務局に確認してください。