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法人成りで個人の事業用口座(屋号付き口座)はどうなる|法人口座の新規開設と個人から会社への資金移動

個人事業主として使ってきた事業用の口座は、屋号付き口座を含めて、法人成りしても会社の口座にはなりません。銀行の公式案内で名義変更の可否を確認し、法人口座に必要な書類、出資と貸付の違い、個人口座に残るお金の切り分けを整理します。

銀行の公式案内・会社法
編集:個人事業主のお金ラボ編集部(合同会社フューチャープロンプト) / 運営方針・出典

個人事業主として使ってきた事業用の口座(屋号付き口座を含む)は、法人成りをしても会社の口座にはなりません。会社は個人とは別の法人で、銀行の公開している案内でも、個人事業主の口座を法人名義へ変更する手続きは「できない変更」として挙げられています。

この記事では、法人口座を新しく開くときの書類、個人から会社へお金を移すときの出資と貸付の違い、法人成りの前後で個人口座に残るお金の切り分けを整理します。屋号付き口座そのもののデメリットは屋号付き口座の注意点を参照してください。

個人と会社は別の法人格

会社法3条は「会社は、法人とする。」と定めています。株式会社は、本店の所在地で設立の登記をすることによって成立します(会社法49条)。

法人成りで設立した会社は、個人事業主本人とは別の名義人になります。個人事業のときの口座を会社の口座として使い続けるのではなく、会社の口座は別に用意するのが基本の考え方です。

屋号付き口座の名義を法人へ変えられるか

個人事業主の口座の名義について、銀行の公式案内には次のような記載があります(2026年9月22日に確認)。

銀行公式案内の内容
PayPay銀行(個人事業主口座)名義変更のページで、「以下の変更はできません」として、他人名義(別人への事業主変更を含む)への変更、法人名義・個人名義への変更、名義を屋号のみにする変更を挙げている
みずほ銀行(屋号付き口座)屋号付き口座(個人事業主口座)の名義を個人名のみに変更することはできない。現在の口座を解約し、個人の口座を新たに開設する
ゆうちょ銀行(振替口座)法人格のない個人事業主は、屋号で活動していることが確認できる資料を出せば屋号を別名として登録できる(審査あり)。別名は口座名義と並べて表記し、別名のみの表記はできない

個人事業主の口座を法人名義へ書き換える手続きは、PayPay銀行が「できない変更」に挙げており、みずほ銀行でも屋号付き口座の名義変更は解約と新規開設になります。名義変更の可否、追加書類、審査の期間は金融機関ごとに違います。

この記事は、個人事業のときの口座を使っている銀行が個人口座の法人への切替に対応しているかどうかを断定しません。口座のある銀行の窓口または公式サイトで確認してください。

屋号は法人格ではなく、口座では個人名と並べて表記される別名です。屋号付き口座を作っていても、法人成りで会社の名前に置き換わるわけではありません。

法人口座の開設時期(設立登記のあとに新規開設)

みずほ銀行は、法人口座を店舗で開設するときに、登記事項証明書(履歴事項全部証明書など、発行日から6か月以内の原本)が必要だと案内しています。株式会社は設立の登記で成立するため(会社法49条)、法人口座は設立登記のあとに開くことになります。

みずほ銀行の店舗での法人口座開設で用意する主なものは、次のとおりです(更新2025年12月3日の案内)。

株式会社の代表取締役の自宅住所が登記事項証明書に出る点については、令和6年10月から、一定の要件で市区町村までの表示にする申出ができる制度があります。要件と注意点は代表取締役等住所非表示措置で整理しています。

  • 法人の印鑑
  • 登記事項証明書(履歴事項全部証明書など、発行日から6か月以内の原本)
  • 来店する人の本人確認書類
  • 当該法人のための取引であることが分かる書類
  • 実質的支配者の確認ができる書類
  • 事業内容や事業実態のわかる書類

必要書類と申込方法は銀行ごとに違い、追加の書類を求められることもあります。開く銀行の最新の案内で確認してください。

会社ができてから法人口座が開くまでの間、個人口座で会社の取引をすることについて、PayPay銀行は「法的な問題はありません」としています。ただし、会社の資産と個人の資産が区別されず、税務署や取引先から疑いをかけられる可能性があるため、会社設立後はすみやかに法人口座を開設するよう案内しています。

個人から会社へお金を移す(出資か貸付か)

会社の口座ができたあと、個人のお金を会社へ入れるときは、出資(資本金)にするか、会社への貸付にするかで、法律上の位置づけが変わります。

比べる点出資(資本金)会社への貸付
法律上の位置づけ会社法445条1項は、株式会社の資本金の額を、設立または株式の発行に際して株主となる者が払込みまたは給付をした財産の額としている民法587条は、消費貸借を、返還することを約して金銭その他の物を受け取ることで効力が生じるものとしている
登記との関係株式会社の設立の登記では「資本金の額」を登記する(会社法911条3項)株主となる者の払込みではないため、会社法445条1項の資本金の額には入らない
資本金への計上払込み額の2分の1を超えない額は資本金として計上しないことができ、その額は資本準備金として計上する(会社法445条2項・3項)該当しない

設立時の出資は、発起人が引き受けた株式について金銭の全額を払い込みます。払込みは、発起人が定めた銀行等の払込みの取扱いの場所でする決まりです(会社法34条)。

出資にするか貸付にするかは、資本金の額(登記事項)と返還の約束の有無で分かれます。資本金をいくらにするかは法人成りの資本金の決め方を参照してください。貸付にした場合の登録免許税・均等割の違いや無利息のリスクは役員借入金とは(資本金との違い)で解説しています。

個人口座に残るお金の切り分け

個人事業の口座をそのまま残すか解約するかは、個人事業を続けるかどうか、生活費と分けて使いたいかで決めます。みずほ銀行は、屋号付き個人名義の口座を開設するときは、事業用の口座と生活費等消費用の口座を分けて作成する必要があるとしています。

法人成りの前後では、お金の種類ごとに、どの口座で扱うかを整理しておくと混乱しません。下の表は、この記事の整理です。

お金の種類整理の考え方あわせて読む記事
法人成り後の売上の入金会社の法人口座で受ける。請求書の振込先を会社の口座へ変える法人成りとは
個人事業のときの売掛金の回収個人と会社のどちらの取引かを、契約の相手方と日付で分けて記録する。扱いは資産の引継ぎ方で変わる個人から法人へ資産を引き継ぐ
個人の生活費・個人の税金の支払い個人の口座で扱い、会社の口座と混ぜない法人成りのデメリット
個人事業の廃業の手続き口座の整理と、税務署への届出は別の手続き個人事業主の廃業

設立から登記、開業後の届出までの全体像は法人化の手続きを参照してください。

まとめ

  • 会社は個人とは別の法人で、設立の登記で成立する(会社法3条・49条)。個人事業のときの口座は、会社の口座に切り替わらない。
  • PayPay銀行は個人事業主口座の法人名義への変更を「できない変更」に挙げ、みずほ銀行も屋号付き口座の名義変更は解約と新規開設としている。取扱いは銀行ごとに違うため、口座のある銀行で確認する。
  • 法人口座の開設には、みずほ銀行の場合、発行から6か月以内の登記事項証明書などが要る。会社設立後はすみやかに開設する。
  • 個人から会社へ入れるお金は、出資(資本金)か貸付かで位置づけが分かれる。個人口座に残るお金は、種類ごとに口座を分けて整理する。

口座と同じく、個人事業のときに所得税で決めていた在庫の評価方法や減価償却の方法も、会社では会社として届け出ます。期限はどちらも第1期の申告期限までです。棚卸資産の評価方法の届出書と減価償却資産の償却方法の届出書で確認できます。

口座の名義と同様、取引先との業務委託契約も個人事業主から法人へ自動的には引き継がれません。契約上の地位の移転と取引先の承諾は法人成りで業務委託契約はどうなるで解説しています。

決算で赤字(欠損金)になった場合、前期の法人税を取り戻せる制度もあります。欠損金の繰戻しによる還付で解説しています。

公式一次情報

よくある質問

法人成りすると、個人事業主の口座は会社の口座になりますか?
ならず、会社は個人とは別の法人で(会社法3条)、PayPay銀行は個人事業主口座について法人名義への変更を「できない変更」に挙げています。会社の口座は法人口座として新しく開設します。取扱いは銀行ごとに違うため、口座のある銀行に確認してください。
屋号付き口座の名義を、法人の名前に変えられますか?
PayPay銀行は、法人名義への変更と、名義を屋号のみにする変更を「できない変更」としています。みずほ銀行は、屋号付き口座の名義を個人名のみにすることもできず、解約して個人の口座を新たに開設する案内です。ゆうちょ銀行の振替口座でも、屋号は別名として並べて表記され、別名のみの表記はできません。
法人口座を開くには、何が必要ですか?
みずほ銀行の店舗での開設では、法人の印鑑、登記事項証明書(履歴事項全部証明書など、発行日から6か月以内の原本)、来店する人の本人確認書類、当該法人のための取引であることが分かる書類、実質的支配者の確認ができる書類、事業内容や事業実態のわかる書類が挙げられています。銀行ごとに異なるため、開く銀行の案内で確認してください。
個人のお金を会社に入れるときは、資本金にするのですか?
資本金にするか貸付にするかを選びます。資本金の額は株主となる者が払込みまたは給付をした財産の額(会社法445条1項)、貸付は返還を約して金銭を受け取る契約です(民法587条)。どちらにするかは、資本金の決め方の記事と税理士の助言で判断してください。
本記事について。専門家の監修前の概説です。銀行の名義変更の可否、必要書類、審査の期間は金融機関と時期によって変わります。個人から会社へ入れるお金の会計・税務の扱いは事情によって異なるため、口座のある銀行と、顧問税理士または税務署にご確認ください。