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法人口座の開設で確認される実質的支配者|申告で足りる場合と書類を求められる場合

銀行で法人口座を開くとき、代表者のほかに「実質的支配者」を聞かれます。誰が該当するのか、申告だけで済むのか、株主名簿などの書類が要るのかを、犯罪収益移転防止法の条文と警察庁の資料で整理します。

口座開設の準備
編集:個人事業主のお金ラボ編集部 / 運営方針・出典

銀行が法人口座の開設で実質的支配者を確認するのは、犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯罪収益移転防止法)が、法人との取引では実質的支配者の本人特定事項まで確認するよう定めているためです。通常の口座開設では、法令上の確認方法は代表者などからの申告です。ただし、銀行が独自に株主名簿などの資料を求めることがあります。

株式会社が実質的支配者リストを法務局に申し出る制度は実質的支配者とは?誰が該当するか・リスト制度の申出方法と添付書面で扱っています。この記事は、銀行の口座開設の場面で何を聞かれ、何を用意するかに絞ります。

銀行が実質的支配者を確認する理由

犯罪収益移転防止法4条1項は、銀行などの特定事業者が取引を行うときに確認する事項を定めています。法人の場合の事項は次の4つです。

  • 名称と本店または主たる事務所の所在地(本人特定事項)
  • 取引を行う目的
  • 事業の内容
  • その事業経営を実質的に支配することが可能となる関係にある者(実質的支配者)の本人特定事項

警察庁の「犯罪収益移転防止法の概要」は、預貯金口座の開設を、取引時確認が必要になる特定取引の例に挙げています。法人口座の開設では、代表者の本人確認に加えて、実質的支配者の確認が行われます。

口座開設で実質的支配者に当たる人

実質的支配者は、法人の事業経営を実質的に支配することが可能となる関係にある自然人(個人)です。警察庁の資料は、議決権などの手段で法人を支配する自然人まで遡って確認するとしています。株式会社のように議決権の多数で決まる法人(資本多数決法人)の考え方は次のとおりです。

  • 議決権の50%を超える議決権を保有する自然人がいれば、その人が実質的支配者です。たとえば新しく設立した株式会社の口座を、議決権の50%超を持つ代表者本人が開設するなら、実質的支配者はその代表者だけです。
  • 50%超を持つ人がいないときは、議決権の25%を超える議決権を保有する自然人が実質的支配者です。該当する人が複数いれば、全員が実質的支配者になります。
  • 25%超を持つ人がいても、ほかに50%超を持つ自然人がいるときは、25%超の人は実質的支配者に当たりません。

判断する時点は、原則として取引の時点です。警察庁の資料は、合理的な範囲で近い時点、たとえば直近の株主総会のときの状況で判断することも認められるとしています。種類株式や自己株式がある場合の議決権の数え方は実質的支配者の判定で議決権をどう数えるかで整理しています。

株式会社以外の法人

警察庁の資料は、資本多数決法人として株式会社、投資法人、特定目的会社を挙げています。一般社団法人・一般財団法人、学校法人、宗教法人、医療法人、社会福祉法人、特定非営利活動法人、持分会社(合名会社・合資会社・合同会社)は、資本多数決法人ではない法人の例です。これらの法人では、議決権のほかに、収益総額の25%超の配当を受ける自然人などを基準にする場合があります。

合同会社の考え方は合同会社の実質的支配者は誰かで扱っています。

確認の方法:申告で足りる場合と書類が要る場合

警察庁の資料は、実質的支配者の確認方法を、取引の種類で分けています。

取引の種類確認の方法
通常の特定取引(一般的な法人口座の開設)代表者などから、実質的支配者の本人特定事項について申告を受ける
ハイリスク取引・資本多数決法人株主名簿、または株主名簿の写しを添付した実質的支配者リストを確認し、あわせて申告を受ける
ハイリスク取引・資本多数決法人以外の法人登記事項証明書を確認し、あわせて申告を受ける

ハイリスク取引は、なりすましや取引時確認での偽りの疑いがある取引、特定国等(警察庁の資料では現時点でイラン及び北朝鮮)に居住・所在する顧客等との取引、外国の重要な公的地位にある者との取引です。国内の会社が普通に口座を開く場合は、通常の特定取引に当たるのが一般的です。その場合の法令上の確認方法は、申告です。

銀行が求める資料の例

法令上の方法が申告でも、銀行は自行の基準で資料の提出を求めることがあります。三菱UFJ銀行の法人口座開設の案内は、代表者以外に株主や役員などで事業活動に支配的な影響力がある人がいる場合の提出書類として、実質的支配者を確認できる資料(実質的支配者リストの写し、株主名簿、有価証券報告書、本人確認書類等)を挙げています。会社案内や見積書などの追加資料を求めることもあるとしています。

求められる資料は銀行ごとに異なります。口座を開く銀行の案内ページで、必要書類の欄を先に確認してください。実質的支配者リストの写しは、法務局に申出をしてもらう書類で、すべての銀行で必須というわけではありません。

口座開設の前に用意しておくもの

  1. 株主名簿:株主ごとの持株数が分かる状態にします。作り方は株主名簿の作成と備置きにまとめています。
  2. 議決権の割合の計算:持株数を議決権の総数で割って、各株主の議決権の割合を出します。50%超の人がいるか、いなければ25%超の人は誰かを確認します。
  3. 実質的支配者に当たる人の本人確認書類と住所・生年月日:申告では、実質的支配者の氏名、住居、生年月日が必要になります。
  4. 銀行の必要書類の確認:登記事項証明書など、そのほかの書類は法人口座の開設の手順で整理しています。

代表者が議決権の50%超を持つ一人会社なら、実質的支配者は代表者になるため、準備は代表者の本人確認書類が中心です。株主が複数いて持株が分かれているときは、議決権の割合を先に計算しておくと、窓口で答えやすくなります。

申告の内容は正しく答える

犯罪収益移転防止法4条6項は、顧客等と代表者等が、取引時確認に係る事項を偽ってはならないと定めています。実質的支配者の申告も、取引時確認に係る事項です。分からない点があるときは、推測で答えずに、株主名簿と議決権の計算を確かめたうえで、窓口で相談してください。

まとめ

  • 銀行は犯罪収益移転防止法4条1項にもとづき、法人口座の開設で実質的支配者の本人特定事項を確認する。
  • 株式会社では、議決権の50%超を持つ自然人、いなければ25%超を持つ自然人が実質的支配者になる。
  • 通常の口座開設の法令上の確認方法は申告。ハイリスク取引では、株主名簿などの書類の確認が加わる。
  • 実際に求める資料は銀行ごとに異なる。株主名簿と議決権の割合を先に用意しておく。

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次に知りたいこと

よくある質問

法人口座の開設で、なぜ実質的支配者を聞かれるのですか?
犯罪収益移転防止法4条1項が、特定事業者に法人との取引で実質的支配者の本人特定事項を確認するよう定めているためです。預貯金口座の開設は、その確認が必要な取引の例とされています。
実質的支配者の確認に、株主名簿は必ず必要ですか?
警察庁の資料では、通常の特定取引の確認方法は代表者などからの申告です。株主名簿などの確認が法令上加わるのは、ハイリスク取引の場合です。ただし銀行が独自に資料の提出を求めることがあるため、口座を開く銀行の案内を確認してください。
一人で出資している会社の実質的支配者は誰ですか?
代表者が議決権の50%を超えて持っているなら、その代表者だけが実質的支配者です。警察庁の資料も、新しく設立する株式会社の口座を50%超を持つ代表者が開設する場合を例に挙げています。
議決権の30%を持つ株主がいて、別に60%を持つ株主がいる場合、30%の人も実質的支配者ですか?
当たりません。警察庁の資料は、議決権の25%超を持つ自然人であっても、ほかに議決権の50%超を持つ自然人がいるときは実質的支配者に該当しないとしています。この例では60%を持つ人だけが実質的支配者です。
合同会社も実質的支配者を聞かれますか?
法人との取引ですので、株式会社と同じく確認の対象です。合同会社は資本多数決法人ではない法人の例とされ、考え方が異なります。詳しくは合同会社の実質的支配者のガイドをご覧ください。
本記事について。専門家監修前の概説です。2026年11月5日時点の法令と警察庁の公開資料にもとづく一般的な案内で、個別の銀行の審査基準や口座開設の可否を保証するものではありません。個別の判断は、口座を開く金融機関や司法書士などの専門家へご確認ください。