合同会社の実質的支配者は誰か(配当を受ける権利25%超で判定)
銀行の口座開設などで申告する合同会社の実質的支配者を、犯罪収益移転防止法施行規則11条の条文に沿って整理します。議決権ではなく、収益の配当や財産の分配を受ける権利の割合で数える点が、株式会社との違いです。
金融機関の取引時確認合同会社の実質的支配者は、収益の配当または財産の分配を受ける権利が4分の1を超える自然人(人間である個人)です。該当者がいなければ、事業活動に支配的な影響力を持つ自然人、それもいなければ代表者、の順に決まります。
実質的支配者リスト制度は株式会社だけが使えますが、金融機関の口座開設で行う取引時確認は、合同会社も対象です。この記事は、後者の判定の順番を扱います。
リスト制度そのものは実質的支配者とは?誰が該当するか・リスト制度の申出方法と添付書面に、株式会社の議決権の数え方は議決権の数え方にあります。
合同会社は議決権でなく配当を受ける権利で数える
犯罪収益移転防止法施行規則11条2項は、法人の種類ごとに実質的支配者を定めています。株式会社など「議決権が株式の保有数や割合に応じて与えられる法人」(資本多数決法人)は、議決権の4分の1超などで判定します。
資本多数決法人以外の法人は、同項3号が別に定めています。合同会社の社員(出資者)は、業務の決定を社員の過半数で行うのが原則で(会社法590条2項)、株式会社のように持株数に応じた議決権で動くわけではありません。そのため、合同会社は3号で判定します。
なお、同項1号のかっこ書きは、「定款の定めにより資本多数決法人に該当することとなる法人」を資本多数決法人から除いています。定款で議決権を出資額に応じた形にしても、1号には移らず、3号を使うと読めます。
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判定の順番(イ・ロ・代表者)
3号のイ・ロと4号を、次の順番で当てはめます。
- 3号イ:法人の事業から生ずる収益、または事業に係る財産の総額の4分の1を超える収益の配当・財産の分配を受ける権利を持つ自然人。
- 3号ロ:イの該当者がいないとき、出資、融資、取引その他の関係を通じて、法人の事業活動に支配的な影響力を持つと認められる自然人。
- 4号:どちらにも当たる人がいないとき、その法人を代表し、業務を執行する自然人。
イには、次の2つの除外があります。
- 事業経営を実質的に支配する意思や能力がないことが明らかな人は、実質的支配者になりません。
- 収益や財産の2分の1を超える配当・分配を受ける権利を持つ別の自然人がいるときは、その別の人が実質的支配者です。
配当を受ける割合は、定款で損益分配の割合を決めていればそれによります。定款に定めがなければ、各社員の出資の価額に応じて定めると会社法622条1項が定めています。出資比率と配当の割合が違う合同会社では、出資比率ではなく、定款の分配の割合で見ます。
出資比率ごとの判定例
定款に損益分配の定めがなく、出資額の割合がそのまま配当の割合になる合同会社の例です(法人の社員が出資する場合を除く)。
| 出資(配当)の割合 | 実質的支配者 | 根拠 |
|---|---|---|
| A 100% | A | 3号イ(2分の1超でもあります) |
| A 60%・B 40% | Aだけ | 3号イ。Aが2分の1超のため、4分の1超のBは除かれる |
| A 50%・B 50% | AとB | 3号イ。どちらも4分の1超で、2分の1は超えない |
| A 40%・B 30%・C 30% | A・B・C | 3号イ。3人とも4分の1超 |
| A〜E 各20% | イの該当者なし。支配的な影響力を持つ人がいればその人、いなければ代表者 | 3号ロ、4号 |
ちょうど25%の人は、「4分の1を超える」に当たらないため、イには入りません。社員が法人の場合など判定に迷うときは、口座を開く金融機関の窓口で確認します。
口座開設では代表者が申告する
犯罪収益移転防止法4条1項4号は、顧客が法人のとき、事業経営を実質的に支配できる関係にある者を確認する対象にしています。確認の方法は、同法施行規則11条1項が「当該顧客等の代表者等から申告を受ける方法」と定めています。
つまり、口座開設の窓口では、代表者が自分で実質的支配者を申告します。申告で偽りを述べてはならないことも、同法4条6項に定められています。出資比率や定款の分配の定めを、申告の前に整理しておくと確実です。
登記された社員(業務執行社員)と、実質的支配者は別の概念です。登記上の代表社員が出資ゼロでも、配当の割合が4分の1を超える出資者は、実質的支配者になり得ます。
まとめ
- 合同会社は資本多数決法人ではないので、施行規則11条2項3号で判定する。
- 収益や財産の4分の1を超える配当・分配を受ける権利を持つ自然人が、まず実質的支配者になる。
- 2分の1を超える人がいれば、その人だけになる。ちょうど25%は含まれない。
- イの該当者がいなければ、支配的な影響力を持つ人、いなければ代表者。
- 口座開設では、代表者が申告する。
次に知りたいこと:合同会社を選ぶか株式会社を選ぶかは合同会社と株式会社の違いで比べられます。
よくある質問
- 合同会社の実質的支配者は、議決権で決まりますか?
- 議決権ではなく、収益の配当や財産の分配を受ける権利の割合で決まります。4分の1を超える自然人が該当します(出典:犯罪収益移転防止法施行規則11条2項3号イ)。
- 出資者が3人とも均等の33%のときは、誰が実質的支配者ですか?
- 3人とも4分の1を超えるので、3人とも実質的支配者です。2分の1を超える人はいないため、除外は働きません(同号イ)。
- 実質的支配者に当たる人が1人もいない場合はどうなりますか?
- 事業活動に支配的な影響力を持つ自然人がいればその人、それもいなければ、法人を代表し業務を執行する自然人が実質的支配者になります(同項3号ロ・4号)。
- 実質的支配者リスト制度は合同会社でも使えますか?
- 使えません。対象は株式会社(特例有限会社を含む)だけです(出典:法務省「実質的支配者リスト制度」の案内)。
- 口座開設のとき、実質的支配者は誰が申告しますか?
- 顧客である法人の代表者等が申告します(出典:犯罪収益移転防止法施行規則11条1項)。
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