役員借入金のDES|検査役不要の条件と債務消滅益
社長が会社に貸しているお金(役員借入金)を、増資の出資として資本金に変える方法を「債務の株式化(DES)」と呼びます。会社法で検査役の調査が要らない条件、税務で資本金等の額になる金額と債務消滅益、変更登記の登録免許税、増資後の消費税の判定を、公式資料で整理します。
債権の現物出資・債務消滅益・登録免許税役員借入金が膨らんだ会社では、借入金を資本金に振り替える債務の株式化(DES)が選択肢になります。返済の負担は減りますが、帳簿の数字を書き換えるだけではできず、会社法・税務・登記の3つの確認が要ります。
役員借入金そのものの性質は役員借入金とは、増資の一般的な流れは法人の増資の手続きと費用にまとめています。この記事は、債権を出資に使う場面に絞ります。
債権を出資するという仕組み
社長から見ると、役員借入金は「会社に対して持っている金銭債権」です。この債権を会社に出資し、その代わりに新しい株式を受け取るのがDESです。会社から見ると、借入金(負債)が減り、資本金(純資産)が増えます。
会社法208条3項は、募集株式の引受人が出資の債務と会社に対する債権を相殺することを認めていません。帳簿で借入金と払込みを打ち消すのではなく、債権を現物出資する形で手続きします。
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検査役の調査が要らない条件
現物出資では、原則として裁判所が選ぶ検査役が財産の価額を調べます(会社法207条1項・2項)。ただし同条9項5号は、次の2つを満たす場合は調査を求めないと定めています。
- 出資する財産が、会社に対する金銭債権で、弁済期が到来しているもの
- 出資として定めた債権の価額が、その債権に係る負債の帳簿価額を超えない
同項には、このほかにも調査が要らない場合があります。現物出資財産の価額の総額が500万円を超えないとき(2号)と、弁護士・公認会計士・税理士などの証明を受けたとき(4号)です。借入金が500万円を超え、弁済期も来ていない場合は、4号の証明を受ける方法を専門家に相談します。
弁済期が先にある借入金は、5号の対象になりません。また、帳簿の負債額より高い価額で出資することはできません。借入金の残高を示す帳簿と、返済期限を定めた契約書の内容を、先に確認しておきます。
税務:資本金等の額と債務消滅益
法人税法施行令8条1項1号は、株式を発行したときの資本金等の額に、払い込まれた金銭の額と給付を受けた金銭以外の資産の価額を含めると定めています。債権の出資では金銭の払込みがないため、会社が受け取った債権の価額が資本金等の増加額になります。
国税庁の文書回答事例(平成22年2月、経済産業省の照会)には、この点の整理が載っています。照会では次のように説明されています。
- 増加する資本金等の額は、出資された債権の時価になる
- 債権の額面のうち資本金等の増加額にならなかった部分、つまり額面と時価の差額が債務消滅益になる
- この債務消滅益は、債務免除益と同じように期限切れ欠損金を青色欠損金等より先に使える(法人税法59条)
この事例は、私的整理のような企業再生の場面(法人税法施行令24条の2第1項)での評価方法を扱っています。一般の役員借入金のDESにそのまま当てはまるとは限りません。債権の時価をいくらと見るかは会社の財務状況で変わるため、金額の決め方は税理士に確認してください。
| 項目 | 扱い |
|---|---|
| 資本金等の増加額 | 出資された債権の時価 |
| 債務消滅益 | 債権の額面と時価の差額 |
| 差額がないとき | 債務消滅益は生じない |
役員が債務を免除する場合の益金の扱いは役員借入金の債務免除で整理しています。
変更登記の登録免許税
資本金が増えると、本店所在地の法務局で変更登記が必要です。国税庁のタックスアンサー(No.7191)では、株式会社または合同会社の資本金の増加の登記の登録免許税は、増加した資本金の額の1,000分の7(3万円に満たないときは1件につき3万円)とされています。
たとえば資本金に組み入れる額が1,000万円なら、7万円です。400万円以下なら、計算上3万円に届かないため3万円になります。
債権を出資に使う場合は、登記の添付書類にも注意が要ります。必要書類は管轄の法務局の案内か、司法書士に確認してください。
増資後の消費税の判定
国税庁のタックスアンサー(No.6503)によると、設立1期目または2期目の期首の資本金が1,000万円以上の法人は、その期の消費税の納税義務が免除されません。資本金を1,000万円未満で設立し、設立1期目の途中で増資して1,000万円以上になった場合は、設立2期目から課税事業者になります。
借入金の組入れでも資本金の額は同じように増えるため、設立後間もない会社は、組み入れる額を決める前にこの判定を確認してください(新設法人の消費税)。
よくある質問
- 役員借入金と増資の払込みを相殺できますか?
- できません。会社法208条3項が相殺を認めていないため、債権を現物出資する形になります。
- 債権の出資で、必ず検査役の調査が要りますか?
- 弁済期が到来した金銭債権で、出資の価額が負債の帳簿価額を超えない場合は、調査が要りません(会社法207条9項5号)。
- 債務消滅益とは何ですか?
- 国税庁の文書回答事例の照会では、債権の額面のうち資本金等の増加額にならなかった部分、つまり額面と時価の差額と説明されています。
- 変更登記の登録免許税はいくらですか?
- 増加した資本金の額の1,000分の7で、3万円に満たないときは3万円です(国税庁タックスアンサーNo.7191)。

