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法人の増資(資本金を増やす)の手続きと費用|登録免許税0.7%・変更登記2週間・消費税と均等割への影響

株式会社が募集株式の発行で資本金を増やす流れ(株主総会の決議、払込み、2週間以内の変更登記)、登録免許税の計算(増加した資本金の額×0.7%、最低3万円)、役員借入金を資本に組み入れる場合の注意、増資で消費税と均等割がどう変わるかを、会社法と国税庁・総務省の公式情報で整理します。

法人化(法人成り)
編集:個人事業主のお金ラボ編集部(合同会社フューチャープロンプト) / 運営方針・出典

法人成りのあと、設備投資や運転資金、融資の見栄えのために資本金を増やしたくなることがあります。株式会社が新しく株式を発行して資本金を増やす手続きを、この記事では増資と呼びます(法律上は「募集株式の発行」です)。

この記事は、増資の流れ、登記にかかる登録免許税、役員借入金を資本に組み入れるときの注意、消費税と地方税(均等割)への影響を整理します。設立時の資本金の決め方は資本金の決め方で扱っています。対象は株式会社で、合同会社の出資額の増加は扱いません。

増資の流れ(決議・払込み・変更登記)

会社法は、新しく株式を引き受ける人を募集するときに、次の事項を定めるよう求めています(199条1項)。

  • 募集する株式の数
  • 1株と引き換えに払い込む金額(払込金額)
  • 払込みの期日(または期間)
  • 増加する資本金と資本準備金に関する事項

この募集事項は、原則として株主総会の決議で決めます(199条2項)。決議は特別決議(309条2項5号)です。特別決議は、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要な決議です(会社法309条2項。定款で定足数を3分の1まで下げられる)。一人社長の会社では、株主が本人だけなので、議事録を作って決議を残すことが中心になります。

株主総会は、募集株式の数の上限と払込金額の下限を定めて、募集事項の決定を取締役に委任することもできます(200条1項)。この委任が効力を持つのは、払込期日が決議の日から1年以内の募集に限られます(200条3項)。

引き受ける人は、払込期日までに払込金額の全額を払い込みます(208条1項)。払込期日を定めた場合、引受人は、その期日に株主になります(209条1項1号)。

資本金に組み入れる額は、払い込まれた額が原則です。ただし、払込額の2分の1を超えない額は資本金に入れず、資本準備金にできます(445条1項・2項・3項)。たとえば1,000万円の払込みを受けても、資本金を500万円、資本準備金を500万円とする設計が可能です。

資本金の額が変わると、本店の所在地で2週間以内に変更の登記をしなければなりません(915条1項)。払込みの期間を定めた募集では、期間の末日現在で、末日から2週間以内の登記で足ります(915条2項)。

登録免許税の計算

資本金の増加の登記には登録免許税がかかります。国税庁の税額表では、株式会社または合同会社の資本金の増加の登記(一定の登記を除く)の税額は、増加した資本金の額の1,000分の7です。計算した額が3万円に満たないときは、申請1件につき3万円です。

増加した資本金の額×0.7%の額登録免許税
300万円2万1,000円3万円(最低額)
500万円3万5,000円3万5,000円
1,000万円7万円7万円

課税の基準は、払込みの総額ではなく、増加した資本金の額です。払込額の一部を資本準備金にすれば、登録免許税の基準になる資本金の増加額は小さくなります。登記の申請書や添付書類は、本店の所在地を管轄する法務局が定めるため、申請前に法務局の案内で確認してください。この記事は申請書の書き方までは扱いません。

役員借入金を資本に組み入れる場合

社長が会社に貸している役員借入金を、増資の払込みに充てて資本金にしたい、という相談があります。会社法は、募集株式の引受人が、出資の履行(払込みや給付)をする債務と、会社に対する自分の債権とを、相殺することはできないと定めています(208条3項)。借入金と払込みを帳簿の上で打ち消し合うだけでは、増資になりません。

債権を出資する方法は、金銭以外の財産を出資する「現物出資」の形になります。現物出資では、原則として裁判所に検査役の選任を申し立てて財産の価額を調べてもらいます(207条1項)。ただし、出資する財産が会社に対する金銭債権で、弁済期が到来していて、出資する価額がその債権に係る負債の帳簿価額を超えない場合は、検査役の調査が不要です(207条9項5号)。

実際に債権の出資を選ぶかどうかは、帳簿上の債権額、登記の添付書類、税務の扱いによって変わります。役員借入金そのものの性質は役員借入金の扱いで扱っています。個別の判断と登記の手続きは、税理士や司法書士へ確認してください。

増資と消費税の課税事業者判定

資本金が1,000万円以上になると消費税の課税事業者になる、と聞いたことがある方は多いはずです。国税庁は、この判定が使われる場面を限定しています。

消費税の納税義務は、原則として、その事業年度の2期前の事業年度(基準期間)の課税売上高が1,000万円以下なら免除されます(国税庁タックスアンサーNo.6501)。ただし、設立1期目と2期目には基準期間がありません。国税庁は、基準期間がない事業年度のうち、その事業年度の開始の日における資本金の額が1,000万円以上である法人は、その課税期間の納税義務が免除されないとしています(No.6503の新設法人の特例)。

同じページに増資の例が出ています。資本金を1,000万円未満で設立し、設立1期目の途中で増資して1,000万円以上になった場合は、設立2期目が課税事業者になります。判定に使うのは、各事業年度の期首(開始の日)の資本金の額です。

増資をする時期消費税の資本金による判定
設立1期目の途中で1,000万円以上になった設立2期目の期首の資本金が1,000万円以上のため、2期目は課税事業者
設立2期目の途中で1,000万円以上になった2期目の判定は期首の資本金で行うため、この特例の対象外。3期目は基準期間(1期目)の課税売上高で判定

表の2段目は、国税庁の「事業年度開始の日における資本金の額」という判定時点の定めにもとづく整理です。国税庁のページに、この組合せの例そのものは載っていません。設立3期目以降は基準期間があるため、基準期間の課税売上高が1,000万円以下なら、増資しても資本金の額だけを理由に課税事業者にはなりません。ほかに、適格請求書発行事業者の登録、特定期間の課税売上高(または給与等支払額)が1,000万円を超える場合などは、資本金とは別に免税が使えなくなります(No.6501)。免税の仕組みは法人成りと消費税の免税で扱っています。

増資と均等割

法人住民税の均等割は、赤字でも払う税金で、都道府県民税は資本金等の額、市町村民税は資本金等の額と従業者数で区分が決まります(総務省)。総務省の表では、都道府県民税の均等割は次のとおりです。

資本金等の額都道府県民税の均等割(年額)
1千万円以下2万円
1千万円超1億円以下5万円
1億円超10億円以下13万円

市町村民税の均等割は、従業者数50人以下の法人で、1千万円以下が5万円、1千万円超1億円以下が13万円です。つまり、従業者50人以下の会社が資本金等の額を1千万円以下から1千万円超にすると、都道府県民税と市町村民税の均等割の合計が、年間で7万円から18万円に変わる計算です(表の額の足し算)。

区分の基準は「資本金」ではなく「資本金等の額」です。増資の設計の前に、会社の所在する自治体の案内で、どの額で区分が決まるかを確認してください。均等割の届出や納付は法人設立後の地方税の届出で扱っています。

まとめ

  • 増資は募集株式の発行で、募集事項は原則として株主総会の特別決議で決める。払込期日に引受人が株主になる。
  • 資本金の額が変わったら、2週間以内に本店の所在地で変更登記をする。
  • 登録免許税は、増加した資本金の額の0.7%で、3万円に満たないときは3万円。払込額の2分の1までは資本準備金にできる。
  • 役員借入金は、払込債務との相殺ができない。債権を出資する形になるため、税理士・司法書士へ確認する。
  • 設立1期目の途中で資本金が1,000万円以上になると、設立2期目は消費税の課税事業者になる。
  • 資本金等の額が1千万円を超えると、均等割の区分が上がる。

よくある質問

増資の登録免許税はいくらですか?
増加した資本金の額の1,000分の7で、3万円に満たないときは3万円です。たとえば資本金を500万円増やすと3万5,000円、300万円なら最低額の3万円です(出典:国税庁タックスアンサーNo.7191)。
増資の変更登記はいつまでにしますか?
資本金の額が変わった日から2週間以内に、本店の所在地で変更の登記をします。払込みの期間を定めた場合は、期間の末日現在で、末日から2週間以内です(出典:会社法915条)。
増資すると消費税の課税事業者になりますか?
設立1期目の途中で資本金が1,000万円以上になった場合は、設立2期目が課税事業者になります。基準期間がある事業年度は、基準期間の課税売上高などで判定します(出典:国税庁タックスアンサーNo.6503・No.6501)。
役員借入金を、そのまま資本金に振り替えられますか?
払込みの債務と会社に対する債権の相殺はできません。債権を現物出資する形になり、弁済期が到来している金銭債権で一定の条件を満たすときは検査役の調査が不要です(出典:会社法208条3項・207条9項5号)。
資本金の半分を資本準備金にできますか?
払込額の2分の1を超えない額は、資本金に入れず資本準備金にできます(出典:会社法445条2項・3項)。

公式一次情報

本記事について。税理士監修前の概説です。制度・期限は改正される場合があります。個別の判断は税理士・司法書士へご確認ください。