新株予約権とは|発行の決議・登記(登録免許税9万円)と発行可能株式総数との関係
小さな株式会社が新株予約権を発行するときの、決めるべき内容、株主総会の決議、登記の期限と登録免許税、発行可能株式総数との関係を会社法の条文に沿って整理します。
会社法・登録免許税法の制度新株予約権とは、あらかじめ決めた価額を払えば会社から株式を受け取れる権利のことです。創業メンバーや協力者に将来の株式取得の機会を渡す手段として、小さな会社でも使われることがあります。
新株予約権を発行すると、登記が必要で、登録免許税は1件9万円と、増資や役員変更より高くなります。このガイドは、発行までの決議と登記、発行可能株式総数との関係を整理します。税務上の扱いは個別の事情で変わるため、ここでは会社法上の手続きに絞ります。
新株予約権の内容として決める事項
会社が新株予約権を発行するときは、会社法236条1項により、次の事項を新株予約権の内容として定めなければなりません。
- 目的である株式の数(またはその算定方法)
- 行使するときに出資される財産の価額(またはその算定方法)
- 金銭以外の財産を出資の目的とするときは、その旨と財産の内容・価額
- 行使できる期間
- 行使で株式を発行するときに増える資本金と資本準備金に関する事項
- 譲渡に会社の承認を要することとするときは、その旨
このほか、一定の事由が生じたら会社が取得できる旨などを定める場合は、その内容も含めます(同項7号以下)。
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募集事項の決議(株主総会)
新株予約権の引受人を募集するときは、募集のたびに、募集新株予約権の内容と数、払込金額(金銭の払込みを要しない場合はその旨)、割り当てる日、払込みの期日などの募集事項を定めます(会社法238条1項)。
募集事項の決定は、株主総会の決議によらなければなりません(同条2項)。この決議は特別決議(出席株主の議決権の3分の2以上の賛成)です(会社法309条2項6号)。
ここでは、全部の株式に譲渡制限を付けた非公開会社を前提にしています。公開会社は、原則として取締役会の決議で募集事項を決めます(会社法240条1項)。
金銭の払込みを要しない、または払込金額が引受人に特に有利な金額であるときは、取締役が株主総会で、その条件で募集する必要がある理由を説明しなければなりません(会社法238条3項)。
株主総会の決議で、募集事項の決定を取締役(取締役会設置会社では取締役会)に委任することもできます。その場合、決議では、委任に基づいて決められる新株予約権の内容と数の上限、払込金額の下限などを定めます(会社法239条1項)。
発行後の登記と登録免許税
新株予約権を発行したときは、新株予約権の数や内容、行使の条件などが登記事項になります(会社法911条3項12号)。登記は変更が生じた日から2週間以内に、本店の所在地で行います(会社法915条1項)。
登録免許税は、登録免許税法別表第一の二十四号(一)ヌ(新株予約権の発行による変更の登記)により、申請1件につき9万円です。役員変更の登記が資本金1億円以下の会社で1万円、発行可能株式総数のような一般の変更登記が3万円であるのと比べると、金額が大きい登記です。
ほかの変更手続きの期限と費用は会社の変更手続き早見表で比べられます。
発行可能株式総数との関係
新株予約権が行使されると株式が発行されるため、枠の確認が欠かせません。会社法113条4項は、新株予約権者が行使で取得することになる株式の数を、発行可能株式総数から発行済株式(自己株式を除く)の総数を引いた数以内に収めることと定めています(行使できる期間の初日がまだ来ていない新株予約権は、この計算から除かれます)。
枠が足りないときは、新株予約権を発行する前に、定款を変更して発行可能株式総数を広げます。変更の決議・登記は発行可能株式総数のガイドで説明しています。
行使されたときの増資の登記
新株予約権が行使されて株式が発行され、資本金が増えたときは、増加した資本金の額に応じた登録免許税がかかります。株式会社の資本金の増加の登記は、増加した資本金の額の0.7%(これで計算した税額が3万円に満たないときは3万円)です(登録免許税法別表第一・二十四号(一)ニ)。
増資の通常の手続きと費用は法人の増資の手続きと費用を参照してください。株式の種類や譲渡制限の設計は種類株式の解説で扱っています。
まとめ
- 新株予約権は、決めた価額を払えば株式を受け取れる権利で、内容は会社法236条1項で定める事項を決める。
- 募集事項の決定は株主総会の特別決議(取締役・取締役会への委任も可)。
- 発行後は2週間以内に登記し、登録免許税は1件9万円。
- 行使で取得される株式の数は、発行可能株式総数から発行済株式の総数を引いた数以内に収める。
- 行使で資本金が増えたときは、増加額の0.7%(最低3万円)の登録免許税がかかる。
公式一次情報
- e-Gov法令検索「会社法」第236条(新株予約権の内容)
- e-Gov法令検索「会社法」第238条・第239条(募集事項の決定は株主総会の決議・取締役等への委任)
- e-Gov法令検索「会社法」第309条第2項第6号(募集事項の決定の株主総会は特別決議)
- e-Gov法令検索「会社法」第911条第3項・第915条第1項・第113条第4項(新株予約権の登記事項・2週間以内の登記・発行可能株式総数との関係)
- e-Gov法令検索「登録免許税法」別表第一・二十四号(一)ニ・ヌ(資本金の増加は0.7%・最低3万円、新株予約権の発行による変更登記は1件9万円)
よくある質問
- 新株予約権の発行は誰が決めますか?
- 募集事項の決定は株主総会の決議によります(特別決議)。株主総会の決議で、取締役や取締役会に委任することもできます(出典:会社法238条・239条・309条2項6号)。
- 新株予約権の登録免許税はいくらですか?
- 発行による変更登記は申請1件につき9万円です。行使で資本金が増えた場合は、別に増加額の0.7%(最低3万円)がかかります(出典:登録免許税法別表第一・二十四号(一))。
- 登記はいつまでにしますか?
- 変更が生じた日から2週間以内に、本店の所在地で行います(出典:会社法915条1項)。
- 発行可能株式総数が足りないとどうなりますか?
- 行使で取得される株式の数は、発行可能株式総数から発行済株式の総数を引いた数を超えられません。足りないときは先に定款変更で枠を広げます(出典:会社法113条4項)。

