種類株式とは|議決権・配当・譲渡制限を株式ごとに変える
株式会社は、配当や議決権などの内容が違う株式を発行できます。会社法108条が定める9つの項目、定款への書き方、登記、公開会社でない会社だけの特例を条文で整理します。
2026年時点の制度株式会社は、次の9つの事項について内容の違う2種類以上の株式を発行できます(会社法108条1項)。種類株式を発行するには、各種類の内容と発行可能種類株式総数を定款で定める必要があります(同条2項)。
共同創業で「議決権は多く持ちたいが配当は同じでよい」「出資は受けたいが経営には口を出されたくない」といった場面で検討されます。以下は株式会社の場合の整理で、合同会社には株式がありません。
108条が定める9つの事項
種類株式として内容を変えられるのは、108条1項に挙げられた次の9つの事項です。この表にない事項(たとえば株式の額面)を種類ごとに変えることはできません。
| 号 | 変えられる事項 | 内容 |
|---|---|---|
| 1号 | 剰余金の配当 | 配当を多く受ける、または少ない株式にする |
| 2号 | 残余財産の分配 | 会社を清算するときの分配額に差をつける |
| 3号 | 議決権 | 株主総会で議決権を行使できる事項を制限する |
| 4号 | 譲渡制限 | その種類の株式の譲渡に会社の承認を要する |
| 5号 | 取得請求権 | 株主が会社に株式の取得を請求できる |
| 6号 | 取得条項 | 一定の事由が生じたとき会社が株式を取得できる |
| 7号 | 全部取得条項 | 株主総会の決議で、その種類の株式の全部を会社が取得する |
| 8号 | 種類株主総会の決議 | 株主総会などの決議のほか、その種類の株主の総会の決議も要する |
| 9号 | 役員の選任 | その種類の株主の総会で取締役または監査役を選任する |
8号は、一般に「拒否権付株式」と呼ばれる仕組みの根拠になる定めです。条文に決まった名前はなく、呼び方は実務上のものです。
9号の定めがある株式は、指名委員会等設置会社と公開会社では発行できません(108条1項ただし書)。
この記事の内容を申告書に落とすときの本PR
記事で確かめた内容を、申告書の記入や帳簿の付け方まで一冊で追いたいとき向けです。
定款に定める内容と登記
種類株式を発行する会社は、事項ごとに定款で定める内容が決まっています(108条2項)。たとえば配当なら、配当財産の価額の決定の方法や配当をする条件などです。議決権なら、議決権を行使できる事項と、行使の条件を定めるときはその条件です。
あわせて、発行可能種類株式総数を定款に定めます。種類株式を初めて発行する時までに、配当額など一部の事項に限り、株主総会(取締役会設置会社は株主総会または取締役会)の決議で定める旨を定款で決めておくこともできます(同条3項)。この場合は、内容の要綱を定款に残す必要があります。
設立後に種類株式を新しく作るときは、定款の変更です。定款の変更は株主総会の特別決議で行います(466条、309条2項11号)。特別決議は、議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成で成立します。
種類株式発行会社は、発行可能種類株式総数と各種類の株式の内容を登記します(911条3項7号)。定款だけでなく登記簿にも載るため、取引先や金融機関が確認できる情報になります。
議決権を制限する株式の注意点
議決権に制限をつけた株式を使うと、出資は受け入れつつ、経営の決定権は創業者が持ち続ける設計ができます。ただし、次の点に注意が必要です。
- 公開会社の上限:公開会社では、議決権制限株式の数が発行済株式の総数の2分の1を超えたとき、直ちに2分の1以下にするための措置を取る必要があります(115条)。
- 公開会社でない会社:発行する全部の株式に譲渡制限がある会社(会社法2条5号の公開会社でない会社)には、115条の上限は適用されません。一部の種類にだけ譲渡制限を付けた会社は公開会社にあたります。
- 種類株主への影響:ある種類の株主に損害を及ぼすおそれがある行為(一定の定款変更など)は、その種類の株主の総会の決議も必要になります(322条1項)。定款に排除する定めがある場合は例外です。
種類株主総会の決議は、定款に別段の定めがなければ、その種類の株式の総株主の議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数で行います(324条1項)。一部の決議は、3分の2以上の賛成が必要な特別決議です(同条2項)。
通常の株主総会の決議の要件は、共同創業の出資比率と議決権の出資比率ごとの判定表で確かめられます。種類株式を使うと、この判定表の前提(1株1議決権)が変わる点に注意してください。
全株式に定める譲渡制限との違い
株式の譲渡に会社の承認を要する定めは、2通りの方法があります。
| 方法 | 条文 | 対象 |
|---|---|---|
| 全部の株式の内容として定める | 107条1項1号 | 発行する全部の株式が譲渡制限株式になる |
| 一部の種類の株式に定める | 108条1項4号 | その種類の株式だけが譲渡制限株式になる |
家族や共同創業者だけで持つ小さな会社では、全部の株式に譲渡制限を付けるのが一般的です。承認の手続きは株式譲渡承認の手続きで解説しています。
株主ごとに取扱いを変える特例
株式会社は、株主を、持っている株式の内容と数に応じて平等に扱う必要があります(109条1項)。ただし、公開会社でない株式会社は、次の3つの権利について、株主ごとに異なる取扱いをする旨を定款で定められます(109条2項、105条1項各号)。
- 剰余金の配当を受ける権利
- 残余財産の分配を受ける権利
- 株主総会での議決権
この定款の定めがあると、その株主の株式は、内容の異なる種類の株式とみなして扱われます(109条3項)。株式の種類を分けなくても、株主ごとに差をつけられる点が違いです。
この定めを新しく設ける定款変更は、通常の特別決議より厳しい要件です。総株主の半数以上で、かつ総株主の議決権の4分の3以上の賛成が必要になります(309条4項。定款でこれを上回る割合に変えることもできます)。
半数以上かつ4分の3以上の賛成を得られない場合は設けられないため、設立時の定款に入れておくか、全員の合意で進めるのが現実的です。
後継者に株式を集めて承継する場合の税の制度は、法人版事業承継税制(特例措置)を参照してください。個人事業を引き継ぐ場合は個人版事業承継税制があります。
よくある質問
- 一人社長の会社でも種類株式を発行できますか?
- 発行はできますが、株主が1人なら内容を分ける実益は小さいのが通常です。将来、出資者や共同創業者を迎える見込みがあるときに検討する制度です。
- 種類株式は定款にどう書きますか?
- 事項ごとに定める内容と発行可能種類株式総数を定款に記載します(会社法108条2項)。条文が定める内容を欠くと定款の定めとして足りないため、設計は専門家に確認してください。
- 議決権のない株式は発行できますか?
- 議決権を行使できる事項を制限した株式を発行できます(108条1項3号)。公開会社でない会社には、公開会社にある発行数の上限(発行済株式の総数の2分の1、115条)は適用されません。
- 種類株式を作ったら登記は必要ですか?
- 発行可能種類株式総数と各種類の株式の内容は登記事項です(会社法911条3項7号)。
まとめ
- 種類株式は、配当・議決権・譲渡制限など9つの事項について内容を変えた株式(108条1項)。
- 発行には、各種類の内容と発行可能種類株式総数の定款の定めと、登記が必要。
- 設立後に作るときは、株主総会の特別決議による定款変更になる。
- 公開会社でない会社は、株主ごとに配当・議決権などを変える定款の定めも置ける。
- 設計は出資者との関係や将来の資金調達に影響するため、専門家に確認する。
次に知りたいこと
共同創業の出資比率と議決権:1株1議決権のときの普通決議・特別決議の判定表
合同会社と株式会社の違い:株式を使う会社と使わない会社の比較
株式譲渡承認の手続き:譲渡制限株式を譲渡するときの流れ
ストックオプションの税金:税制適格と非適格の違い
公式一次情報
- e-Gov法令検索「会社法」(107条・108条・109条・115条・309条・322条・324条・466条・911条。2026-10-19確認)
あわせて読む
譲渡制限株式だけの非公開会社と公開会社の違い:公開会社と非公開会社の違い|株式譲渡制限の有無で変わる5つの決まり
株式の上限(発行可能株式総数)の決め方と変更の登記:発行可能株式総数とは|定款の決め方・変更の決議と登記(期限2週間・登録免許税3万円)
株式を受け取る権利(新株予約権)の発行の決議と登記:新株予約権とは|発行の決議・登記(登録免許税9万円)と発行可能株式総数との関係

