個人版事業承継税制の期限と手続き
個人事業の土地・建物・機械などを後継者へ贈与・相続するときの納税猶予制度です。個人事業承継計画の提出期限(令和10年9月30日)、対象になる資産、青色申告の条件、手続きの期限を説明します。
令和8年7月時点の資料個人版事業承継税制は、個人事業者の事業用資産(特定事業用資産)を後継者が贈与や相続で受け取るときに、その贈与税・相続税の全額の納税が猶予される制度です。適用には、令和10年9月30日までに個人事業承継計画を都道府県知事へ提出し、令和10年12月31日までに贈与・相続を行う必要があります(国税庁「個人版事業承継税制のあらまし」令和8年7月)。
法人の株式を引き継ぐ場合の制度とは別のものです。適用できるかどうかは、事業の内容や資産の状況で変わります。
期限は2つ:計画の提出と贈与・相続
| 項目 | 期限 | 手続きの先 |
|---|---|---|
| 個人事業承継計画の提出 | 令和10年9月30日まで | 都道府県知事(確認を受ける) |
| 贈与・相続・遺贈の適用期間 | 平成31年1月1日から令和10年12月31日まで | 期間内に贈与・相続を行う |
計画の提出期限は令和10年9月30日までです(国税庁のタックスアンサーNo.4442・No.4153。令和8年4月1日現在の法令で記載)。適用期限は令和10年12月31日です。
計画には、認定経営革新等支援機関(税理士、商工会、商工会議所など)の所見を記載します。贈与や相続のあとでも、円滑化法の認定を申請する時までなら計画を提出できます。
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猶予の対象になる資産
対象は、先代事業者の事業に使われていた資産で、贈与・相続の前年分の青色申告書の貸借対照表に載っていたものです。
| 資産 | 対象の範囲 |
|---|---|
| 宅地等 | 400㎡まで |
| 建物 | 床面積800㎡まで |
| それ以外の減価償却資産 | 固定資産税の課税対象のもの、営業用税率の自動車、一定の貨物運送用・乗用自動車、乳牛・果樹等の生物、特許権等の無形固定資産 |
後継者が複数いる場合、面積は各後継者の合計で判定します。相続で小規模宅地等の特例を使う人がいると、宅地の限度面積に制限がかかります(タックスアンサーNo.4153)。先代事業者と生計を一にする親族の資産は、先代事業者からの贈与・相続の日から1年以内に受けたものに限ります。
後継者と先代事業者の主な要件
贈与の場合の主な要件です(全要件ではありません)。
- 後継者(贈与の場合):贈与の日に18歳以上であること。円滑化法の認定を受けていること。贈与の直前に、特定事業用資産に係る事業(同種・類似の事業等を含む)に従事していたこと。贈与税の申告期限までに開業届出書を出し、青色申告の承認を受けていること。
- 先代事業者(贈与者):廃業届出書を出していること、または贈与税の申告期限までに出す見込みであること。贈与の年、前年、前々年の確定申告書を青色申告書で出していること。
- 事業の種類:資産管理事業や性風俗関連特殊営業に当たらないこと。不動産貸付業等は青色申告の対象外のため使えません。
資産管理事業とは、有価証券、自分で使っていない不動産、現金・預金等の保有割合が総資産の70%以上になる事業、またはそれらの運用収入が総収入の75%以上になる事業です。
青色申告は、正規の簿記の原則による55万円控除(電子申告等は65万円控除)のものに限られます。贈与の場合、開業届は事業開始(贈与)の日から1か月以内、青色申告の承認申請は2か月以内に出します。相続の場合の期限は、相続開始を知った日などに応じて別に決まっているため、資料原文で確認してください。
贈与前から別の業務をしている後継者は、青色申告にしたい年分の3月15日までに申請します。届出の書き方は開業届の書き方、先代側の手続きは廃業届の書き方、承認申請の期限は青色申告承認申請の期限で確認できます。
贈与・相続の手続きと期限
流れは、個人事業承継計画の確認、都道府県知事の認定(円滑化法の認定)、税務署への申告と担保提供の順です。
| 手続き | 贈与の場合 | 相続の場合 |
|---|---|---|
| 都道府県知事への認定申請 | 贈与を受けた年の翌年1月15日まで | 相続開始後8か月以内 |
| 税務署への申告 | 翌年2月1日から3月15日まで(贈与税) | 相続税の申告期限 |
納税猶予を受けるには、猶予される税額と利子税に見合う担保を税務署に提供します。
猶予が打ち切られる主な場合
次の場合には、猶予されていた税額と利子税を納付することになります。納付は、確定の事由に当たった日から2か月以内です。
- 事業を廃止した場合(やむを得ない理由や破産手続開始の決定があった一定の場合を除く)。
- 資産管理事業または性風俗関連特殊営業に当たることになった場合。
- その事業の総収入金額がその年にゼロになった場合。
- 青色申告の承認が取り消された場合。
受け継いだ資産が事業に使われなくなったときは、使われなくなった部分に対応する額と利子税を納付します。廃棄の届出をしたときや、譲渡して1年以内に買い換える見込みで税務署長の承認を受けたときは、猶予が続きます。
猶予が続く間は、3年ごとに継続届出書を所轄税務署へ提出します。出さないと、猶予されている税額の全額と利子税を納付します。先代や後継者の死亡などがあったときは、免除届出書と免除申請書で免除を受ける手続きがあります。
法人版との違い
| 項目 | 個人版 | 法人版(特例措置) |
|---|---|---|
| 引き継ぐもの | 事業用の宅地・建物・償却資産 | 非上場会社の株式 |
| 計画の提出期限 | 令和10年9月30日まで | 令和9年9月30日まで |
| 贈与・相続の適用期限 | 令和10年12月31日まで | 令和9年12月31日まで |
| 猶予割合 | 100% | 100% |
関連記事:法人版事業承継税制(特例措置)、個人から法人への資産の引き継ぎ、種類株式とは。
よくある質問
- 個人事業承継計画の提出期限はいつですか?
- 令和10年9月30日までに都道府県知事へ提出して確認を受けます。
- 猶予される割合はどれくらいですか?
- 特定事業用資産に係る贈与税・相続税の全額です(国税庁のパンフレット)。
- 土地はどこまで対象ですか?
- 宅地等は400㎡まで、建物は床面積800㎡までです。後継者が複数いる場合は合計で判定します。
- 青色申告をしていないと使えませんか?
- 先代事業者は贈与の年とその前2年分を青色申告書で申告している必要があり、後継者も贈与税の申告期限までに青色申告の承認を受けている必要があります。
- 贈与の認定申請はいつまでですか?
- 贈与を受けた年の翌年1月15日までです。贈与税の申告は翌年2月1日から3月15日までです。
- 猶予を受けたあとの届出はありますか?
- 3年ごとに継続届出書を所轄税務署へ提出します。出さないと、猶予されている税額の全額と利子税を納付します。
まとめ
- 個人版は、事業用の宅地・建物・償却資産の贈与税・相続税の全額が猶予される。
- 個人事業承継計画の提出は令和10年9月30日まで、贈与・相続は令和10年12月31日まで。
- 先代・後継者とも青色申告が前提で、開業届・廃業届の手続きが要る。
- 贈与の認定申請は翌年1月15日まで、相続は8か月以内。
- 猶予後は3年ごとに継続届出書を出す。適用の可否は専門家に確認する。
公式一次情報
- 国税庁「個人版事業承継税制のあらまし」(令和8年7月)(対象資産・要件・手続き・打ち切り事由。2026-10-19確認)
- 国税庁タックスアンサーNo.4442「個人の事業用資産についての贈与税の納税猶予及び免除」(2026-10-19確認)
- 国税庁タックスアンサーNo.4153「個人の事業用資産についての相続税の納税猶予及び免除」(2026-10-19確認)
- 国税庁「個人版事業承継税制」(2026-10-19確認)
- 国税庁タックスアンサーNo.4439「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例」(法人版の比較。2026-10-19確認)
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