親から子へ個人事業の資産を渡すと贈与税はかかる?
個人事業を子に引き継ぐとき、建物・車両・機械などの事業用資産を無償や安い値段で渡した場合の贈与税の考え方を、国税庁のタックスアンサーと相続税法7条で整理します。
事業の引継ぎ結論:事業用資産だからといって、贈与税が非課税になる一般的な扱いは、国税庁の非課税の一覧にありません。個人から無償でもらえば贈与税の対象で、1年間の合計が基礎控除110万円以下なら税はかかりません。安く売った場合は、時価との差額が贈与とみなされます。
「事業を継ぐ子に、店の設備や車を渡したい」という場面で、所得税や届出の話は注目されても、贈与税は見落とされがちです。税務署の案内に沿って、考え方の筋道を整理します。
評価額の計算や税額は、資産の種類や時価で大きく変わります。この記事は金額の試算ではなく、どの場面で贈与税が問題になるかの整理です。
贈与税の基本:個人からもらうと対象になる
国税庁のタックスアンサーNo.4402によると、贈与税は個人から贈与により財産を取得したときにかかる税金です。親が子に、建物・車両・機械・在庫などを無償で渡す場合は、この贈与に当たります。
暦年課税では、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額から、基礎控除額110万円を差し引いた残りの額に税がかかります。1年間の合計が110万円以下なら贈与税はかからず、申告も不要です。
110万円を超える場合は、贈与を受けた人が、財産を取得した年の翌年2月1日から3月15日までの間に申告と納税をします。申告するのは、渡した親ではなく、受け取った子です。
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事業用資産だから非課税、とはならない
タックスアンサーNo.4405は、贈与税がかからない場合を挙げています。法人からの贈与は所得税の対象になることや、扶養義務者から通常必要な生活費・教育費に充てるものなどが載っていますが、事業用資産を一般に非課税とする項目は載っていません。
事業用資産の贈与で税の負担を軽くする制度としては、個人版事業承継税制があります。国税庁の案内によると、青色申告(正規の簿記の原則によるもの)の事業を行っていた事業者の後継者が、円滑化法の認定を受けて個人の事業用資産を贈与などで取得した場合に、その贈与税・相続税の納税を猶予し、後継者の死亡等により免除する制度です。非課税ではなく、納税の猶予・免除という仕組みで、認定などの要件があります。
制度の要件と期限は個人版事業承継税制のガイドで整理しています。
安く売った場合は差額が贈与になる
「贈与にすると税がかかるから、親子で売買にする」という考えもあります。ただし、タックスアンサーNo.4423によると、個人から著しく低い価額の対価で財産を譲り受けた場合には、財産の時価と支払った対価との差額に相当する金額が、財産を譲渡した人から贈与により取得したものとみなされます。
相続税法7条にも同じ内容の規定があります。著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合に、対価と時価との差額を、譲渡した人から贈与により取得したものとみなす、という定めです。
何をもって「著しく低い」とするかは、同じタックスアンサーが、個々の具体的事案に基づき判定するとしています。数値の基準は、確認した範囲では示されていません。
親の土地を無償で使うときの贈与税
資産を渡すのではなく、親の土地を無償で借りて子が事業用の建物を建てる場面もあります。タックスアンサーNo.4552は、親の土地を使用貸借して子供が家を建てた場合を扱っています。
それによると、使用貸借により土地を使用する権利の価額はゼロとして取り扱われているため、子供が借地権相当額の贈与を受けたとして贈与税が課税されることはありません。国税庁の昭和48年11月1日付通達にも、建物や構築物の所有を目的とした土地の使用貸借に係る使用権の価額は零として取り扱うとあります。
確認できたのは、この土地の使用貸借で借地権相当額に贈与税がかからないという点までです。建物を無償で使う場合や、地代の免除による利益の扱いは、この記事で確認した国税庁の資料では扱いを確認できていません。
子が親に家賃を払う場合は、所得税側の扱いが別に問題になります。生計を一にする親族への家賃・地代は所得税法56条のガイドで整理しています。
場面ごとの早見表
| 場面 | 贈与税の扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 建物・車両・機械などを無償で渡す | 贈与の対象。1年間の合計が110万円以下なら税・申告とも不要 | タックスアンサーNo.4402 |
| 著しく低い価額で売る | 時価との差額が贈与とみなされる | タックスアンサーNo.4423、相続税法7条 |
| 事業用資産を一般に非課税にする | 非課税の一覧には載っていない | タックスアンサーNo.4405 |
| 個人版事業承継税制を使う | 非課税ではなく納税猶予・免除(認定などの要件あり) | 国税庁「個人版事業承継税制」 |
| 親の土地を使用貸借して建物を建てる | 借地権相当額への贈与税は課税されない | タックスアンサーNo.4552 |
所得税側の取得費の引継ぎは個人事業を親から子へ引き継ぐときの届出で、法人へ移す場合は個人事業から法人への資産引継ぎで扱っています。
次に知りたいこと
公式一次情報
- 国税庁 タックスアンサーNo.4402「贈与税がかかる場合」(個人からの贈与、基礎控除110万円、申告期限。2026-10-24確認)
- 国税庁 タックスアンサーNo.4405「贈与税がかからない場合」(非課税の一覧。2026-10-24確認)
- 国税庁 タックスアンサーNo.4423「個人から著しく低い価額で財産を譲り受けたとき」(差額は贈与とみなされること、判定は個々の事案。2026-10-24確認)
- 相続税法(e-Gov法令検索)(7条の著しく低い価額の対価での譲渡。2026-10-24確認)
- 国税庁 タックスアンサーNo.4552「親の土地に子供が家を建てたとき」(使用貸借の使用権の価額はゼロ。2026-10-24確認)
- 国税庁 昭和48年11月1日付通達「使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについて」(建物等の所有を目的とする土地の使用貸借。2026-10-24確認)
- 国税庁「個人版事業承継税制」(贈与税・相続税の納税猶予・免除。2026-10-24確認)
よくある質問
- 親から子へ事業用の設備を無償で渡すと、贈与税はかかりますか?
- 国税庁のタックスアンサーによると、贈与税は個人から贈与により財産を取得したときにかかります。1年間にもらった財産の合計が基礎控除110万円以下なら、税も申告も不要です。
- 事業用資産の贈与は非課税ですか?
- 一般的な非課税の扱いは、国税庁の贈与税がかからない場合の一覧には載っていません。個人版事業承継税制は、非課税ではなく納税の猶予・免除の制度で、認定などの要件があります。
- 親子で売買の形にすれば贈与税はかかりませんか?
- 代金が時価より著しく低いと、時価との差額が贈与とみなされます(相続税法7条、タックスアンサーNo.4423)。「著しく低い」かどうかは個々の事案で判定されます。
- 親の土地に子が事業用の建物を建てると、贈与税はかかりますか?
- 使用貸借で土地を無償で借りる場合、使用する権利の価額はゼロとして扱われ、借地権相当額の贈与として課税されることはない、とタックスアンサーNo.4552にあります。
- 贈与税の申告は誰がしますか?
- 財産を受け取った人です。110万円を超える場合は、財産を取得した年の翌年2月1日から3月15日までに申告と納税をします。

