ストックオプションの税金|税制適格と非適格の違い
ストックオプションは、権利を行使した時にいくら課税されるかが、税制適格か非適格かで変わります。この記事では、課税の時期と所得の種類、適格になる条件を説明します。
令和8年4月1日現在の法令等ストックオプションとは、会社が自社または子会社の従業員や役員などに対して、自社株式をあらかじめ決めた権利行使価格で買える権利(新株予約権)を与える仕組みです。税制適格の要件を満たすと、権利行使時の課税が繰り延べられ、株式を売った時にまとめて課税されます(租税特別措置法29条の2)。
要件を満たさない税制非適格では、権利を行使した時点で、株価と権利行使価格の差額に課税されます。この差額は、株式を売って現金を得る前に税金が発生するため、資金繰りに注意が必要です。
課税の時期の比較
ストックオプションの課税は、権利を取得した時、権利を行使した時、株式を譲渡した時の3つの段階に分けて考えます。
| 段階 | 税制非適格 | 税制適格 |
|---|---|---|
| 権利を取得した時 | 課税されない | 課税されない |
| 権利を行使した時 | 経済的利益に課税 | 課税を繰り延べ |
| 株式を譲渡した時 | 譲渡所得として課税 | 経済的利益と値上がり益を合わせて譲渡所得等として課税 |
国税庁は、非適格の場合に課税されるのは行使時と譲渡時の2段階だと案内しています。適格の場合に繰り延べられるのは、行使時の経済的利益への課税です。
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税制非適格の計算と所得の種類
税制非適格の場合、国税庁は次の計算式で所得金額を求めると案内しています。
| 時点 | 計算式 |
|---|---|
| 権利行使時 | (権利行使時株価 − 権利行使価格)× 株式数 |
| 株式譲渡時 | (売却価格 − 権利行使時株価)× 株式数 |
権利行使時の所得の種類は、権利を与えられた人と会社の関係で決まります。
- 雇用契約またはこれに類する関係で与えられた場合:給与所得として課税されます。
- 本人の営む業務に関連して与えられたと認められる場合:事業所得または雑所得として課税されます。
- 職務の遂行と関連がない利益と認められる場合:雑所得になります。退職後に行使した人のうち、付与後短期間で退職が予定され、利益の大部分が長期間の値上がり益に当たる場合などが例として示されています。
株式を譲渡した時の所得は、いずれも譲渡所得として課税されます。
税制適格の課税関係
租税特別措置法29条の2の適用を受けて取得した株式を、国税庁は特定株式と呼んでいます。特定株式を譲渡すると、一般株式等または上場株式等に係る譲渡所得等として申告分離課税の対象です。
この場合の特定株式の取得価額は、権利を行使した時の時価ではなく、払込価額(権利行使価額)です。つまり、行使時の経済的利益には課税せず、譲渡時にその経済的利益と値上がり益を合わせて課税します。
特定株式には、次の制度は利用できません。
- 特定口座制度
- エンジェル税制
- 各NISA制度
確定申告書には、「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書(特定権利行使株式分及び特定投資株式分がある場合)」を添付します。
適格になる主な条件
租税特別措置法29条の2第1項は、新株予約権について次のような要件を定めています。期間の特例や読み替えなど、細かい定めは省きます。
| 項目 | 条文の内容 |
|---|---|
| 行使できる期間 | 付与決議の日後2年を経過した日から10年を経過する日まで(設立から5年未満の会社などは15年を経過する日まで) |
| 年間の行使価額 | 権利行使価額の年間合計額が1,200万円を超えないこと(付与決議の日に設立5年未満の会社は行使価額を2で割った額、設立5年以上20年未満で財務省令の要件を満たす会社は3で割った額で計算) |
| 1株当たりの行使価額 | 契約を結んだ時の1株当たりの価額に相当する金額以上であること |
| 権利の譲渡 | 新株予約権を譲渡してはならないとされていること |
| 株式の交付 | 付与決議で定めた募集事項に反しないで行われること |
| 取得した株式の管理 | 金融商品取引業者等への預託などの取決め、または会社との間の管理に関する取決め(譲渡制限株式の場合)があること |
| 国外転出 | 国外転出する場合は、その時までに会社へ届け出る定めがあること |
行使の際には、権利者が書面を会社に提出する要件もあります(同条2項)。たとえば、付与決議の日に大口株主などに該当しなかったことの誓約書や、その年の他の特定新株予約権の行使状況を記した書面です。会社はこれらの書面を保存しなければなりません(同条3項)。
非公開の小さな会社では、取得した株式の管理について会社との取決めを結ぶ形が現実的な選択肢になります。
会社側の決議と調書
新株予約権を発行するには、募集事項を決める決議が必要です(会社法238条2項)。公開会社でない株式会社では、この決議は株主総会の特別決議です(会社法309条2項6号)。特別決議は、原則として議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。
税制適格のストックオプションを与えた会社は、付与の内容を記載した「特定新株予約権の付与に関する調書」を、付与した日の属する年の翌年1月31日までに税務署に提出します(租税特別措置法29条の2第6項)。
議決権の考え方は共同創業の出資比率と議決権、株式の内容を種類ごとに変える方法は種類株式とはで解説しています。
よくある質問
- ストックオプションをもらった時に税金はかかりますか?
- 国税庁の案内では、非適格の場合に課税されるのは、権利を行使した時と株式を譲渡した時の2段階です。権利を取得した時点では課税されません。
- 税制適格にすると何が変わりますか?
- 権利を行使した時の経済的利益への課税が繰り延べられ、取得した株式を譲渡した時に、値上がり益とあわせて申告分離課税の譲渡所得等として課税されます。
- 税制適格のストックオプションで取得した株式は、NISAで買えますか?
- 特定株式は、特定口座制度、エンジェル税制、各NISA制度を利用できないと国税庁が案内しています。
- 年間に行使できる金額に上限はありますか?
- 税制適格の要件として、権利行使価額の年間合計額が1,200万円を超えないことが条文に定められています(租税特別措置法29条の2第1項2号)。設立5年未満などの会社は、行使価額を2または3で割って計算する特例があります。
まとめ
- 非適格は、権利行使時に(株価 − 権利行使価格)× 株式数が課税される。雇用関係なら給与所得。
- 適格は、行使時の課税が繰り延べられ、株式の譲渡時に申告分離課税で課税される。
- 適格には、行使期間、年間の行使価額の上限(原則1,200万円)、譲渡禁止、株式の管理の取決めなど多くの要件がある。
- 会社は適格の付与の翌年1月31日までに付与の調書を提出する。
- 導入の可否や設計は、税理士・司法書士に確認する。
次に知りたいこと
種類株式とは:配当・議決権を株式ごとに変える仕組み
共同創業の出資比率と議決権:株主総会の決議の要件
株式譲渡承認の手続き:譲渡制限株式を譲渡するときの流れ
法人版事業承継税制(特例措置):後継者への株式の贈与・相続の納税猶予
個人版事業承継税制:個人事業の土地・建物などを後継者へ引き継ぐときの納税猶予
公式一次情報
- 国税庁 タックスアンサー No.1543 税制非適格ストック・オプションに係る課税関係について(令和8年4月1日現在法令等。2026-10-19確認)
- 国税庁 タックスアンサー No.1540 ストック・オプション税制の適用を受けて取得した株式を譲渡した場合(令和8年4月1日現在法令等。2026-10-19確認)
- e-Gov法令検索「租税特別措置法」(29条の2。2026-10-19確認)
- e-Gov法令検索「会社法」(238条・309条。2026-10-19確認)

