株式分割の手続きと変更登記(決議・基準日・3万円)
株式会社が株式分割をするときに決めること(割合・基準日・効力発生日)、決議をする機関、基準日の公告、発行可能株式総数の増やし方、端数が出たときの扱い、2週間以内の変更登記と登録免許税を、会社法の条文で整理します。
法人の運営株式分割は、1株を2株にするように、すでに発行している株式の数を増やす手続きです。株主から新しく払い込みを受ける増資とは違い、会社に入るお金はありません。
この記事は、非公開の株式会社が株式分割をするときの決議、基準日、効力発生日、発行可能株式総数、端数の処理、登記を整理します。新しい出資者から払い込みを受けて資本金を増やす手続きは法人の増資で扱っています。対象は株式会社で、合同会社には株式がないため扱いません。
決議で決める3つのこと
会社法は、株式会社が株式の分割をしようとするときは、その都度、株主総会で決議をして次の事項を定めるよう求めています(183条2項)。取締役会を置く会社では、株主総会ではなく取締役会の決議です。
| 決める事項 | 内容 |
|---|---|
| 割合と基準日 | 増える株式の総数が、分割前の発行済株式の総数の何倍か。分割の対象になる株主を決める基準日 |
| 効力発生日 | 分割の効力が生じる日 |
| 分割する株式の種類 | 種類株式を発行している会社だけ。どの種類を分割するか |
条文の「割合」は、増える株式の数を分割前の発行済株式の総数で割った数です。1株を2株にする場合は、増える数が分割前と同じなので、割合は1(100%)と読みます。ここは条文の文言から導いた整理です。
株主が社長ひとりの会社でも、決議の記録は残します。書面で同意して決議があったものとみなす方法や議事録は、株主総会の書面決議で扱っています。
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基準日の公告と、株主になる時点
基準日は、どの株主に分割後の株式を渡すかを決める日です。会社法は、基準日を定めたときは、基準日の2週間前までに基準日と権利の内容を公告するよう求めています(124条3項)。定款にその定めがあるときは、公告は不要です。
基準日に株主名簿に載っている株主は、効力発生日に、基準日に持っていた株式の数に割合を掛けた数の株式を取得します(184条1項)。たとえば基準日に100株を持つ株主は、割合が1なら、効力発生日に新しく100株を取得して合計200株になります。
基準日の時点の株主名簿が基準になるため、分割の前に株主名簿の記載が実態と合っているかを確かめます。基準日の前後で株式の譲渡や相続があるときは、名簿の書き換えの時期に注意が要ります。
発行可能株式総数の増やし方
株式が増えると、定款に定めた発行可能株式総数(会社が発行できる株式の上限)を超えることがあります。会社法は、現に2つ以上の種類の株式を発行している会社を除き、株主総会の決議をしなくても、定款を変更して発行可能株式総数を増やせるとしています(184条2項)。
増やせる数の上限は、効力発生日の前日の発行可能株式総数に割合を掛けた数です。増やしたあとの合計は、前日の数にこの上限を足した数までになります。
| 架空の条件 | 数 |
|---|---|
| 分割前の発行済株式の総数 | 100株 |
| 分割前の発行可能株式総数 | 400株 |
| 分割の割合(1株を2株) | 1 |
| 増やせる数の上限 | 400×1=400株(増やしたあとの合計は最大800株) |
| 分割後の発行済株式の総数 | 200株 |
表は条文の計算を当てはめた例で、実際の会社の数字ではありません。発行可能株式総数の定款変更も登記事項の変更になるため、次の登記の節で扱います。発行可能株式総数の意味は発行可能株式総数で扱っています。
端数が出るとき
1株を2株にするような整数の割合では、端数は出ません。1株を1.5株にするような割合では、株主の持株数に1株に満たない端数が出ることがあります。
会社法は、株式の分割で1株に満たない端数が出るときは、端数の合計数に相当する数の株式を競売し、端数に応じて代金を株主に交付するよう求めています(235条1項)。たとえば割合が0.5のとき、3株を持つ株主は4.5株になり、0.5株が端数です。
端数を出さないために、分割の割合を整数にそろえる設計が考えられます。どの割合にするかは、株主の構成を見て決めます。
変更登記と登録免許税
登記事項には発行済株式の総数が含まれます(会社法911条3項9号)。株式分割で発行済株式の総数が変わると、変更が生じたときから2週間以内に、本店の所在地で変更の登記をします(915条1項)。発行可能株式総数を増やした場合も、登記事項(同項6号)の変更になります。
登録免許税は、登録免許税法の別表第一第24号(1)のうち、登記事項の変更の登記に当たる区分で、申請1件につき3万円です。増資のように増えた資本金の額に税率を掛ける計算ではありません。
株式分割は払込みを受けないため、資本金の額を増やす手続きではありません。ただし、この税額は法令の区分を読んだ整理で、法務局の案内に株式分割だけを取り上げた記載は見つかりませんでした。申請の前に、法務局か司法書士で税額と添付書類を確かめてください。
個人株主の1株あたりの取得価額
個人の株主が持つ株式が分割されたとき、分割後の1株あたりの取得価額は、旧株1株の従前の取得価額に旧株の数を掛け、分割後の株式の数で割って計算します(所得税法施行令110条1項)。株数は増えても、取得価額の総額は変わりません。
| 架空の条件 | 金額 |
|---|---|
| 旧株1株の従前の取得価額(100株) | 5万円 |
| 分割後の1株あたりの取得価額(1株を2株、200株) | 5万円×100株÷200株=2万5,000円 |
株式の分割で課税が生じるかどうかや、法人が株主のときの扱いは、この記事では確認できた条文が上の1点だけのため、書いていません。株式を譲渡したときの法人税や、税務の判断は税理士に確認してください。
まとめ
- 株式分割は、その都度、株主総会(取締役会設置会社は取締役会)の決議で、割合・基準日・効力発生日(種類株式発行会社は分割する種類も)を定める。
- 基準日の2週間前までに公告する。定款に定めがあれば不要。基準日の株主が効力発生日に株式を取得する。
- 発行可能株式総数は、株主総会の決議なしで、前日の数×割合までの範囲で増やせる(種類株式を2つ以上発行している会社を除く)。
- 端数が出るときは、端数の合計数に相当する株式を競売して代金を株主に交付する。
- 発行済株式の総数の変更は、2週間以内に変更登記をする。登録免許税は申請1件3万円(法令の区分の読み)。
よくある質問
- 株式分割は、株主総会で決めますか。
- 株主総会の決議で決めます。取締役会を置く会社は取締役会の決議です。そのつど、割合・基準日・効力発生日を定めます(出典:会社法183条2項)。
- 株式分割の基準日は、公告が必要ですか。
- 基準日の2週間前までに、基準日と権利の内容を公告します。定款にその定めがあるときは不要です(出典:会社法124条3項)。
- 株式分割で、発行可能株式総数も増やせますか。
- 種類株式を2つ以上発行している会社を除き、株主総会の決議なしで、定款を変更して増やせます。範囲は、効力発生日の前日の発行可能株式総数に割合を掛けた数までです(出典:会社法184条2項)。
- 株式分割で端数が出たらどうなりますか。
- 端数の合計数に相当する株式を競売し、端数に応じて代金を株主に交付します(出典:会社法235条1項)。
- 株式分割の変更登記はいつまでにしますか。
- 発行済株式の総数に変更が生じたときから2週間以内に、本店の所在地で変更の登記をします(出典:会社法915条1項)。
- 個人株主の取得価額は、分割でどうなりますか。
- 旧株1株の従前の取得価額に旧株の数を掛け、分割後の株式の数で割った金額が、分割後の1株あたりの取得価額です(出典:所得税法施行令110条1項)。
公式一次情報
- e-Gov法令検索「会社法」(124条・183条・184条・235条・911条・915条。2026-11-03確認)
- e-Gov法令検索「登録免許税法」(別表第一第24号(1)。2026-11-03確認)
- e-Gov法令検索「所得税法施行令」(110条1項。2026-11-03確認)
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